表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緋色の波涛  作者: ELYSION
第1章 開戦
3/10

第2話 出撃!

1941年12月24日 空母『天城』艦上・現地時間5:40AM


夜は明けきっていた。

大日本帝国海軍の6隻の空母『天城』『赤城』『蒼龍』『飛龍』『翔鶴』『瑞鶴』の艦上では

先ほどからエンジン音も高らかに、艦載機が次々と発艦していく。

小型の順に、零式艦上戦闘機、次いで99式艦上爆撃機の発艦が終り、今は97式艦上攻撃機の番だ。

これも6時には全機発艦が完了し、第一次攻撃隊は揃ってハワイへ向う予定となっている。

広瀬亜子少佐は、甲板の片隅からその様子を見守っていた。

その横では艦魂の天城が、彼女と同じく見守っている。

朝日が清々しく天城の露わな身体を照らし、いつも以上に神々しく映る。

「あの子たちのどれだけが、無事に戻って来られるでしょうか・・・」

そんな彼女が、ぽつりと呟く様に言う。

「やはり艦魂の貴方も心配になる?」

「ええ、飛行機に宿る魂-飛魂は、下級魂とはいえ、我が子の様なもの。

それを黙って見守るしか出来ないのが、何ともやるせなくて仕方ないのです。

我が妹、赤城もあの通り口は悪いですが、飛魂を想う気持に変わりはありません。

だから先ほどあの様な発言をしたのです。それは妹に限らず、空母の艦魂であれば誰でも・・・」

天城はそう言って、左舷を航行する『赤城』の艦容を見やった。


その『赤城』艦上では、艦魂の赤城が飛魂たちを集め、破天荒な号令を掛けていた。

「いいかおめぇら! 今回の獲物は、ちったぁ骨の折れる奴らばかりだ。

しかし、我らが大親分、大日本帝国の為に人肌脱がない訳には、どうにもこうにも収まらねぇ!

そこでだ! おめぇらは一丸となって、自慢のイチモツを、奴らの此処にぶち込んでやれ!」

赤城はそう言って、己の露わな身体を反らし、その部分-つまり股間部を強調する。

伏見宮のみならず広瀬であっても、その場に居会わせれば、赤面する事間違い無しの光景だ。

国定忠治で有名な赤城山を己の名とするからだろう、史実の野中一家を彷彿させる任侠劇じみた言動が、

彼女独特の飛魂統率法なのであった。

「よし、おめぇら、出撃だ!」

下級魂である飛魂にどれだけ理解しているのか定かではないが、「合点承知!」とばかり四散して

己が宿る機体へと向う。

赤城はそれを敬礼をして見送る。その眼にはうっすらと涙が浮かんでいる。

「無事に帰って来るんだぜ、おめぇら!」


「よっ! 広瀬ちゃん、わざわざ見送りに来てくれたんか!」

再び『天城』艦上に視点を戻すと、飛行服に身を包んだ一人が広瀬に声を掛けてくる。

「はい、淵田隊長!」

彼女が笑顔で応える相手は、『天城』の攻撃隊総隊長を務める淵田美津雄(ふちだ みつお)中佐だ。

「ところで、()るんか? この(ふね)の女神はんは」

「ええ、艦魂の天城なら、私の右隣に」

「そっか。けど、残念やなぁ。えらいべっぴんはんの上に、すっぽんぽんというやないか。

それが見えへんというのはなぁ。一度でも拝んでみたいで」

「ちょっと隊長! そんな事言うと、天城から変な目で見られますよ!」

広瀬が軽蔑の眼差(まなざ)しを送ると、

「ははは。こりゃ失敬失敬。ほな、行ってくるで。手柄を期待しとってや!」

淵田は広瀬とその隣に居るであろう天城の二人に敬礼する。

「はい。隊長も御無事で!」

二人も彼に向って答礼する。

淵田が搭乗した赤い垂直尾翼の97式艦攻は、その人柄を表すかの様に軽快に発艦していった。

「面白い人ですね。淵田隊長は」

天城は上昇していくその機体を眼で追いながら呟く。

「そうね。でも、あれでも頼りになるのよ。何てたってこの攻撃隊の総隊長だもの」

「ええ、それは私も解ってます」

「ねえ、天城」

「何でしょうか?」

天城は突然の広瀬の問い掛けに、首を傾け訊く。

「貴方も加賀なんかと同じ様に、大砲を撃ち合う戦艦の艦魂になりたかった?」

「そうですね。戦艦となりし艦に宿ったのですから。

けれども今は違います。飛魂やみんなに囲まれて。空母となれて真に良かったと思ってます」

「そう・・・良かった」

二人は互いを見詰め微笑み合った。



同時刻、波を蹴立てて進む別の艦隊があった。やはり日本艦隊だ。

広瀬たちの艦隊が空母中心の機動部隊であるのに対し、こちらは「(くろがね)の城」と謳われる戦艦が中心だ。

天守閣を思わせる艦橋が五つ連なっている。戦艦は5隻いるのだ。

その最も大きい天守閣である戦艦『大和(やまと)』艦橋。

「そろそろ攻撃隊は発進した頃だね?」

連合艦隊司令長官・山本五十六(やまもと いそろく)大将は独り言の様に訊く。

「予定ではそうなります」

参謀長・宇垣纏(うがき まとめ)少将は、いつも通りの仏頂面で答える。

「鈴木少佐、艦魂たちの様子はどうだね?」

山本は次に一人の女性士官に訊く。

「はい、全員が身構えて待機しています」

この艦隊付けの艦魂担当士官、鈴木維夢(すずき いむ)少佐は答える。

しかし、この二人のやり取りを、知る者が見れば、どこかギクシャクしたものに感じるだろう。

実は、鈴木維夢は山本の娘なのである。けれども正式な娘ではない。

自他とも遊び人と目されている山本が、贔屓にしている芸者との間に設けた娘であった。

いわば私生児である。

けれども実情がそうであれ、二人はこの場でそれを曝け出すほど愚かでは無い。

あくまでもこの場においての二人の関係は、連合艦隊を率いる長官と一介の部下にすぎない。

「そうか・・・さて、どっちに転ぶかね? いずれにせよ我々はあの島を奪取しなければならない」

山本は艦橋の窓から前方を見やった。

その先には南海の孤島・ミッドウェイがあった。

淵田隊長の喋り方、どうでしょうか?

私は関東生まれなので似非関西弁なんですが、地元の方からはどう思われる事やら・・・


「時空の波涛」で登場させた飛魂を、こちらでも登場させました。設定等はほぼ同じです。

艦魂を全裸にしちゃったり、私自身「こりゃイロモノ作品になるぞ」と踏んでたのですが、

今回分終りで五十六さんの私生児を登場させちゃったりして、結構複雑な話になりそうです。

その鈴木維夢嬢の名前は「疾風怒涛! 太平洋戦争」から持って来ました。

クロスオーバーな作品となりつつありますw



御意見・御感想をお待ちしています。


12月5日、若干語句修正をしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ