表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緋色の波涛  作者: ELYSION
序章
1/10

プロローグ

アメリカにとって最大の誤算は、欧州(ヨーロッパ)列強四ヶ国が、異を唱え、揃って日本側に付いた事だ。

異を唱えたのは、アメリカ国務長官コーデル・ハルが起草した『日米協定基礎概要案』

一般に「ハル・ノート」と呼ばれるものだ。

それが公表されるやいなや、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアの列強四ヶ国が、日本に同情した。

内容は日本に対し、たしかに狡猾的かつ屈辱的に綴られている。

それは至極当然だ。日本がこの内容に憤慨し、牙を剥く-即ち戦いを起す様に仕向けたものだからだ。

「だからといって、何故日本に味方する!」

時の第32代大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルトは自問する。

原因はいろいろと考えられる。

19世紀後半から帝国主義を掲げる欧州列強は、こぞって中国(当時は清朝)に侵行するが、

それに乗遅れたアメリカは、日露戦争に勝ち、ロシアを満州から追い出した日本に対し、共同運営を

持ち掛けるが、日本はイギリスをパートナーとした。

そして10年後に勃発した第一次世界大戦(当時は欧州大戦)。ここでもアメリカは乗遅れる。

物質的援助のみに終始し、軍事的派兵を行う機会を得られないまま、戦争は終結してしまったのである。

これは日本が、日露戦争の恩返しとばかりに、イギリスを中心とする連合国側に早々から参戦を表明し、

事実、虎の子の巡洋戦艦部隊の内、『金剛』『比叡』他を遥か離れた欧州(ヨーロッパ)へ派遣するという

意気込みを見せたのとは対象的だった。

加えて、戦時特需で多大な利益を得た事も、「手を汚さず私腹を肥やす」という悪しきイメージを

戦火に呑まれ、疲弊した欧州各国に植え付ける事となった。

そして大戦後、アメリカを揶揄する場合の筆頭語として「日本でさえも」が多用される事となる。

これはアメリカにとって酷い屈辱である。

よりによって、極東の小国、しかも有色人種の国と比較対象されるのだから。

それはやがて、日本に対する憎悪となって蓄積される事となる。

悪しきイメージと引換えに得た利益も、1929年から始まった恐慌で手痛いしっぺ返しを食らう。

以後、アメリカ経済は不況が蔓延する。

公共投資による内需拡大では効果を出せず、残された手っ取り早い方法は、戦争による需要拡大となる。

しかし、戦争をするには相手が必要だ。何処の国を相手にすれば良いだろうか?

それには恰好の生贄(スケープゴート)とする国があるではないか。そう、長年の恨みが溜まった日本だ。

けれども、他からはどう思われようと、ともかく正義を自負する彼らは、発端は日本からと考えた。

その為には日本を憤慨させる材料が必要だ。そしてこの材料がハル・ノートという訳だ。

これに欧州各国が異を唱えたのは想定外だったが、だからといって中止に至る根本的要因では無い。

日本との争いを傍観するだけなら、それで結構。

最悪、同調して攻められる事になろうとも、厄介とはなるが、まとめて叩くだけだ。

その場合でも、まずは日本という優先順位は変わらない。

何しろ日本は、優れた白人国家群に割って入ろうとする、図々しく厚顔な唯一の有色人種国だからだ。

この忌々しい国を蹂躙し、勢いのまま、その先の中国をも我らのものとするのだ。

それに我々には頼もしい味方がいる。それは日本の背後に位置するソ連だ。

日本によってアジアへの進出を阻まれ、大戦では革命の勃発で途中脱退を余儀なくされ、

欧州各国から疎外視されているこの国は、我が国と境遇が似ている。日本を敵とみなしている事も。

「我がアメリカは偉大だ。大丈夫。きっと巧くいく」

ルーズベルトは己にそう結論着けた。

そして、完膚無きまでに叩きのめされる日本の姿を想い、ほくそ笑むのだった。

この作品は、現在の私のメインである『時空の波涛』用のプロットを生かしつつ書くものです。

というのも、日露戦争前から展開される同作品では、太平洋戦争に行き着くまでに、

自分でも途方に暮れる程の文章量がこの先必要であり、今後の予想も全くつかない事から、

忘れないうちにメモ代わりとして、一番書きたい太平洋戦争部分を先に書き殴っちゃえ!と、

相成った訳です。 要はアメリカ相手にドンパチやりたいだけなのですがw

とはいえ、そのまま書いたのではネタバレにもなりかねませんので、

わざと変えた部分も出てくるでしょうし、第一、『時空の波涛』自体が紆余屈折した挙句、

大幅に形を変えたものになる可能性も大いに有ります。

この辺りはその時になってみないと、私自身でも解りません。

同時に、同作品・第6.5話bの後書きでも書いた通り、既存の艦魂作品に対して、

自分なりに感じた問題点と、その解釈についても、前面に出して書いていこうと思います。

その結果、冒涜に走るに至る事を、前もってお詫びしておきます。

艦魂が前面に出る分、未来からの技術云々(うんぬん)(くだり)は影を潜めます。

あくまでもこの作品における日本は、自力で史実より充実しているという設定です。

しかしながら、それでも物量チートのアメリカを相手にするには全然足りない。

その為、プロローグにある通り、欧州列強を日本の味方に付けました。

これで後方の憂いが無くなった日本は、アメリカと正面切って戦えます。

御都合主義が多々あるでしょうが、楽しんでいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ