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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 王都
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第六話 初任務受付



「ふぅー、疲れたー」


食堂のアズラさんに宿の案内を頼み、広くは無いが一人暮らしには丁度いいサイズの部屋を割り振ってもらった。

思えば、施設にいたころにも1人部屋など与えられなかったことを考えれば割と良い待遇かもしれん。

高校を卒業すれば1人暮らしになることは間違いなかったから、そんなに1人暮らしに抵抗感も無い。

経営的に余裕の無い施設では学校に通わない人間は住まわせてもらえない。

中学校を卒業して高校に入学しなければ、即1人暮らしである。

まあ、なんだかんだ言っても普通の施設では面倒を見てくれるものだが、うちのジジイのことだ。仕事と家が見つかっていなくても放り出していたに違いない。

そんなことを考えて無い頭をフル回転させて高校に入学したのだ。護と同じ高校に通えたのは奇跡に近い。

………結局、こんな状況に陥ったために、なんの意味も無かったけどな。


神様に手違いでこっちの世界に召喚されて? 召喚された国では理不尽にも城から放り出されて? その上、こっちじゃ魔物や盗賊が珍しくないと来たもんだ。

環境の変化の不利幅が半端ないな。

その後はなんだかんだで生活ができそうなくらいの職と宿を見つけたは良いものの、結局危なそうな『冒険者』になってるし。

まあでも……あれっ?

俺、愚痴言ってる割にはやけに冷静だな……普通なら異世界に放り出された時点でもっと取り乱してもいいんじゃなかろうか? 

元の世界に帰りたい!! とか。

帰るための方法を見つけに旅に出ます!! とか。

なんかちゃっかりとこの世界に順応できちゃいそうだなぁ。






















目が覚めるとそこは住み慣れた施設の布団……ではもちろんなく、食堂の二階にある何の反発力も無くバカみたいに硬いベットの上だった。

図らずも背筋の矯正ができてしまいそうだ。

外を見るとまだ薄明るい程度の明け方だったが、人々はもうすでに働き始めている様子だ。


「やけに早いなぁ」


そんな風に呟き、もう一度寝なおそうと思ったのだが、外が人で賑わってくるとおちおち二度寝することもできなかった。

毎朝、遅刻ギリギリまで眠っている俺にとっては、まだ肌寒いこの世界の朝は非常につらい。

寝癖も整えないまま、ボケた頭でベットから降りた。




「おはようございます……」

「ああ、おはよう。眠そうだね」


二階から降りてくるとアズラさんを始め、食堂は多くの人で賑わっていた。

背丈ほどの大剣を背負ったやつ。

パンをかじりながら手に持った紙を睨んでるやつ。

黒いフードをかぶり、何やら1人でブツブツとしゃべってるやつ。

とりあえず、俺のようなカタギの人間は少数派であった。


「みんなこんな朝早くから活動し始めるもんなんですか?」


開いていたカウンターに座りながらアズラさんに尋ねる。


「ん? 早いっていってもここにいるやつらは少し寝過ごしたくらいのやつらばかりだよ?」


今の時間帯でも遅いくらいらしい。

世界が違えば生活習慣も変わるのだろうか?

まあ、昨日の夜もかなり早い時間に街の機能がストップしていたから、みんな早寝早起きなのかもしれない。

……ああ、照明器具が発達していないから夜遅くまで活動できないのか。


「そうなんですか……あ、なにか軽い朝食をもらえます?」

「はいよ!」


大勢のお客さんの注文に駆け回りながらも威勢よく返事をしたアズラさんだった。

一応、この店には従業員らしき人間がアズラさん以外にも何人かいる。だが、ウエイトレス? のような人間はアズラさんただひとりである。

他の人間は厨房に引きこもって料理を作っているらしく、俺も面識はない。




「さて、そろそろギルドに行ってみるか」


朝食を平らげると、いまだ忙しそうに駆け回っているアズラさんにお金を置いておくと言ってから食堂を後にした。




ギルドに到着。

昨日来た時よりも大勢の人間であふれ返っていた。


「うわ、すげぇな」


思わずそう口にした。

受付までたどり着けるだろうか……と言う心配もあったが、予想よりも早く受付に到着できた。


「あの「はいはい! あっ、ユーイチ様ですね。冒険者ライセンスの発行できてますよ。このライセンスですが、無くしてしまうと銀貨1枚で再発行となってしまいますから気をつけてくださいね。あと冒険者ギルドはこの建物の反対側にありますのでそちらで任務の受付を行ってください」…」


だから俺は一言も話していないんだって!

この人は俺にしゃべらせたくないのか?


本当に簡単な説明をした後、すぐに列からどかされた。受付の女性はもうすでに次の人に説明を行っている。

どうにも、ベルトコンベアー式に流れ作業を行っているようだ。


まあいいや、これで俺も晴れて冒険者の仲間入りだ……ま、Fランクだけど。




指示された場所、建物の反対がわに行ってみると、表側と違いやけに人が少なかった。

場所間違えたかな?

周りを見渡してみると受付には『冒険者ギルド受付』と書かれていた。うん。ここで合ってそうだ。


「あの、冒険者ギルドの受付ってここでいいんだよな?」


受付にいる女性に話しかけてみた。


表の受付の女性は中身はともかく外見はOLと言った感じの色気……ゲフンゲフンッ…大人な女性といった感じがしたが、今目の前にいるのはおそらく俺よりも年上だろうがなんというか……初めてバイトをした大学生?のようなあどけなさの残る女性であった。


「あっ、はい。こちらで任務の受付を承っています。任務の登録ですか?」

「ああ、初めてだからよく分からないんだけど…」

「初めての方ですか? では簡単に説明をさせてもらいますね……あっ、紹介が遅れましたが、私は冒険者ギルドで受付をしておりますアルテナ、と申します」


受付の女性が名乗った。ああ、そういえば表の受付の女性の名前は分からなかったなぁ。終始話し聞いてただけだったし。


「うん、俺はユーイチ=サヤマだ。よろしく」

「ハイ。よろしくお願いします。それではまずライセンスの確認をさせてもらえますか?」


ライセンスを手渡す。アルテナはライセンスをみながら脇にある書類に目を通している。

ちなみにこのライセンス、ただの紙にハンコと署名がしているだけのものである。この様な物を手にしたことはなかったが、いくらなんでもお粗末すぎる気がする。


「ところでさ、このあたりってやけに人が少ないけどどうしたの? 表側はあんなに人がいたのに」

「今の時間帯は冒険者の皆さんはまだ寝ている時間なんです。基本的にお昼前くらいに来る方が多いですね」


ああ、だからアズラさんが昼は混む時間帯だって言ってたのか。


「はい。ユーイチ様ですね? 確認いたしました」


ライセンスを返される。

しかし、表の受付でも気になっていたのだが、このユーイチ様というのはどうにかならないのだろうか、よそよそしいし、なにより気持ちが悪い。

お客様は神様です! なんて日本の業界の指標みたいなものがあるのだろうか……俺が知っている神様は咥えタバコにボサボサ頭のおっさんだったから、神様に例えられても嬉しくもなんともないのだけれども。


「あのさ、そのユーイチ様?っていうのやめにしない? なんか背中がムズムズするし……普通にユーイチって呼んでくれればいいから」


アルテナは意外…というより珍しいものをみるような目で俺を見返した。


「は、はい。それではユーイチさんとお呼びしますね」

「うん。それでお願いな」

「普通、冒険者の方々は様づけで呼ばれる方が喜ばれるんですけど……ああ、話がそれましたね。それではユーイチさん。任務についてご説明しますね。ユーイチさんは冒険者ランクがFなので、こちらが受けることができる任務になります」


採取任務 

ポーテル草採取 報酬 採取量に比例。ただし最低5枚は採取すること。


鉄鉱石採取 報酬 採取量に比例。ただし最低50グルクは採取すること。



討伐任務

フィルウルフ討伐 場所 アガルの森 五頭討伐 報酬 銅貨5枚。ただし五頭以上討伐の場合一頭につき銅貨1枚を上乗せ


ブルラビット討伐 場所 アガルの森 三頭討伐 報酬 銅貨2枚。ただし三頭以上討伐の場合一頭につき銅板5枚を上乗せ



ふむ、採取任務と討伐任務っていうのがあるのか……この『グルク』っていうのはこの世界の重さの単位かなんかか。


「Fランクの任務ですと普通の商人でも参加できる程度なので、割と簡単にこなせるものばかりになります。ちなみに討伐任務の場合、指定された部位を持ち帰ることにより討伐数を確認します。さらに持ち帰っていただいた部位はギルドのほうで買取をさせていただきますのでご安心ください」

「なるほど。効率よく金を稼ぐには討伐任務のほうがいいのか……この部位っていうのが壊れたり回収できなかった場合はどうすればいいんだ?」


例えば部位ごと吹っ飛ばしたり、手の届かない場所に落としてしまった時だ。

ゲームで言えば、せっかく討伐したモンスターの部位を誤って捨ててしまい、クリアできなくなった状況だ。セーブポイントからやり直しとかできないものか……


「はい。その場合ですと一度ギルドまで戻っていただいて、確認任務というのを依頼していただく必要があります。ただ、こちらは依頼になりますのでお金をはらっていただく必要がありますが」

「つまり、他の冒険者を雇って確認に行かせるわけか……ん~、金を稼ぎたいからできれば討伐任務にしたいけど…武器が無いからなぁー。とりあえずは採取任務にしとくか」

「え? ユーイチさん、武器持っていないんですか?」

「あれ? なんか問題あった?」

「え、えーっとですね……たとえ採取任務であっても街の外に出る場合は武器の携帯が義務付けられているんです。馬車とかに乗るのならともかく任務で外に出る場合は武器は必須ですよ?」


おっとっと、困ったことになったぜ。

武器が必要っつっても買う金が無い。

というより金を稼ぐために任務がしたいのに任務をするためには武器が必要って。

武器ってどのくらいするんだろうな~、今いくら持ってたっけ?


所持金 銀板8枚銅貨9枚銅板5枚


こ、これはちょっと厳しいかもしれない。

昨日前払いで家賃払ってしまったために懐具合が非常にさびしい。


「ちなみに武器って一番安いのでいくらくらいするの?」

「新品だと安くても銀貨8枚くらいはしますね。中古だと大体銀貨3~4枚といったところでしょうか」

「さ、最低でも銀貨3枚…………俺、今銀板8枚しかないけど」


アルテナが気まずそうな顔でこっちを見ている。そりゃそうだろう。ギルドに登録しながらも仕事ができないかもしれない人間が目の前にいるのだから。

ああ無能! 俺の話が漏れていたのか、アルテナの後ろで仕事をしていた他の職員の目が、俺にそう言っていた。


「えーっと……あっ、でも雑貨店とかだともう少し安くなるかもしれませんよ!……多分」


ああ、この反応だと雑貨店でも俺の所持金じゃ足りないかもなぁ。

結局、どの世界でも世の中金なんだな。ファンタジーなのに変なところでシビアな世界だな畜生!





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