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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第二章 凍てつく大剣
68/91

第四十九話 そして誰も居なくなった

訂正、呪文の意味が間違っていたので修正しました。

「開け」=aperireです。



「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」


神父が叫び声をあげた。

グラシエムを剣で刺して、叫ぶのが神父?

いやいや、普通ここで叫ぶならグラシエムだろ。なんで神父が頭抱えて断末魔を吠えてんだよ。


「グラシエム! お前今度は何やった!!」


転がっていたグラシエムを拾い上げる。

その中心には大きな穴が開いていた。

しかし、意にも介さずと言うか……あっさりとした調子でグラシエムは話し始めた。


『さあ? アタクシが何かをしたわけではございませんよ?』

「嘘つけ!! だったらなんで神父あんなことになってんだよ!!」

『そんなことを申されましても……アタクシも武器として死ぬのは初めてですし……所有者にどのような影響があるのかはわかりかねますねぇ』


死?

そう、死だ。

グラシエムは飄々と言い放った。

その言葉に合わせ、グラシエムの体が風化するかのように崩れ始めた。


「お、おい……」

『まあ、武器としての人生は中々充実していましたので悔いはないと言えば無いのでしょうねぇ』

「待てよ! 死ぬなら神父がどうなってんのか先に……」

『言ったでしょう? アタクシにも分かりません。これから彼が生きるのか死ぬのか……何しろ初めての経験ですので』

「…………クソッ」


収穫なし。それなら、とグラシエムを放り出して神父へと駆け寄った。

俺に医学の知識なんて無いし、何か手当ができるわけではなかったのだが、人間、こういった状況ではとりあえず怪我人に駆け寄るものらしい。

元の世界ならそれからすぐに救急車を呼ぶのだろうが、残念ながらここは異世界である。

まずもって車そのものが存在しない。そのうえで電話がないので助けが呼べない。

何もできない俺だったが、なぜかその脚は神父の元へと向かったのである。







『…………ったく、ユーイチの奴。俺も置いて行きやがった』

『ああ、そうそう。テネブラエさん?』

『何だよ。遺言なら聞いてやらねぇぞ?』

『それに近いものですが、ひとつだけ…………結局、人間の人生・・・・・も、魔武器の人生・・・・・・も……大差ありませんでしたねぇ』

『………………』

『魔武器として生まれて、長い時間が経って、広い世界を見て回りましたが…………人間も、魔武器も、やること成すこと、大差ありませんでした』

『……何が言いたいんだよお前は』

『ふふっ、大した差が無いのであれば…………なぜ神は我々に二・・・・・・・・度目の人生を与えら・・・・・・・・・れたのでしょうねぇ・・・・・・・・・?』

『……………』

『まあ……その疑問が故……の…………計画…に……興味が……湧い…た………………』

『…………お前が何を成したかったのかは知らねぇが………………空しいな』








教会にこだましていた叫び声は止み、神父が床に倒れ込んだ。

振り返れば、グラシエムの姿は無くなっていた。

何もできないまま、神父との戦いがあっさりと、ここで終わったのである。




















「あれぇ? ユーくん、その怪我どうしたの?」


終わっ…………あれ?


「アエル?」


目の前にはボイン……じゃなかった。

すっかり存在を忘れていたアエルが立っていた。

でかい杖を片手に持っているその姿は、映画や漫画でよく見るエルフそのものだ。

だけど、ここで俺が驚いたのはアエルがそこにいたからではなく……


「…………タイク」


すでに死んだと思っていた男がそこに立っていたのだ。









◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



病める者に(A iuvare)救い(manu ad)の手を(infirmos)!」


アエルが杖を手に呪文を唱えると、俺の体が光ったと思えば、たちどころに俺の大怪我たちが治っていった。

それはもうすごいの一言に尽きる。

裂けていた傷口は傷跡も残らず消え去り、おかしな方向に折れ曲がっていた腕もきっちりと元通りに治った。


「うおー!! スゲェ……ファンタジーだなぁ」

「ただの怪我なら死んでない限り大丈夫よぉ? まあ……あの人みたいなのは難しいけど……」


そう言ってアエルが見たのは、うつろな目をして椅子に座る神父だった。

死んではいない。

俺が与えた怪我もアエルが直してくれた。

だけど何の反応もしなくなった。話しかけようが頬をつねろうが何の反応も無い。

いわゆる『生きた屍』状態である。


「武器から解放されても……コレじゃな」

「ん~、良く分からないけど……村長さんとタイク君を襲わせた時の神父さんは神父さんじゃ無かったってことなのかな?」

「まあそんな感じだな。つか、アエルもよく無事でいたな。敵さん、かなりの人数だったのに」

「んふふ~。私ねぇ、とぉっても強いのよぉ」


爆乳を突きあげてドヤ顔を決めるアエル。

先ほど聞いた話なのだが、神父が差し向けた『凍てつく大剣』のメンバーは、そのことごとくがアエルによって蹴散らされていたと言う。

神父との戦闘中に見た火柱は、どうやらアエルが放ったものだったらしい。

どんだけ威力のある魔法を使ったのかは知らないが、実はここまでその余波は及んでいた。


「だからってこれはやり過ぎじゃないか?」


教会の外を見れば一目瞭然。

街あった建物のほとんどが焼け落ちてしまっていたのだ。

何とか生き残った建物も焦げ付いてしまっている。

戦闘でぼろぼろになった教会が快適に思えるほどだ。


「…………てへ」

「やかましい」


そんなわけであるからして。この教会は今現在、臨時避難場所として機能している。

町の人間が数十人。教会の中に詰め込まれているのだ。

そして、彼らは遠巻きに神父を眺めている。


「………………こういう空気は苦手なんだよなぁ……」

『なんだよ、意図的で無かったにせよユーイチが原因だぜ? 良いにしろ悪いにしろ……』


まあ、そうなんだけどな。


「あ、あの…………勇者様」

「……勇者はやめてって言ってるでしょ」


話しかけて来たのは相も変わらず俺を勇者と呼ぶこの町の町長だ。

後ろめたさを感じる町長の声から、これから話すであろう彼の台詞の内容が何となく解ってしまった。


「明日、兵士がこの町にやってきます」


ほらきた。


「そこで……私たち『凍てつく大剣』は、かしらを連れて自首しようと考えています」

「!?」


驚いた。

いや、神父に対して何らかの制裁を加えるのは何となく分かっていた。

操られていたとはいえ、取り返しのつかないようなことも多々やってきたのだろうし、それはある意味仕方のないことだ。

だけど、この目の前の人物は自分たち・・・・も自首すると言っている。

一人兵士に突き出せば自分たちは助かるかもしれないのにだ。


「なんであんたらまで捕まりに行くんだ?」

「……我々は、頭の命令に従ってきました」

「けどそれは……」

「何かに操られていることに、うすうす気が付いていながら従ったのです」

「!」

「どんな非道な命令でも「これにはきっと意味がある」と自分に言い聞かせて実行してきました。それは、かしらは信用できるということを言い訳にしただけで、我々の罪に言い訳が立つわけではありません」


「ま、待ってくれ!!」


声をあげたのは、俺ではなく、傍にいたタイクであった。


「親父が捕まるのは……仕方のないことだ。だけど、皆まで捕まることなんてないだろ!!」

「いや、タイク君。勇者様に言った通り、我々は義賊と呼べるような集団では無くなってしまったんだ。大丈夫。君とエリスには被害が及ばないようにするさ」

「…………っ! ユーイチさん! 何とか言って下さい」


ええ~、ここで振ってきますか?


「えーっと……俺がどうこう言える問題じゃないし、意見を聞くならまずあっちじゃないか?」


俺が指さした先には、フランの膝を枕に、いまだに眠っているエリスがいた。

地下室に落ち、気絶したエリスはいまだに眠り続けている。

怪我はしていないが、アエル曰く、精神的ショックが強すぎて目を覚まさないそうだ。

今はフランに介抱してもらっている。


「「…………」」


さすがにこれは黙るしかないだろう。

十三歳にしかならない少女に「君のお父さんを兵士に突き出します。けど、僕たちも一緒に行くから心配ないよ」なんて正面切って言える人間は少ない。

…………ある意味、このまま眠ったままでいてもらった方が、タイクや町の人間にとってはありがたいかもしれないな。



はあ……やれやれ。ため息しか出てこねぇや…………















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





まあ、そんなこんなで夜が明けた。

巡回の兵士がやってきて、町長たちが説明をしている。

エリスの目もまだ覚めていない。タイクに背負われたまま、まだ眠っている。


「まさか王都からこれほど近い地域にあの『凍てつく大剣』の本拠地があったとはな……」

「貴様らが自首してくるとは意外だったが……まあいい。人数が人数だ。使いを出したが、応援が来るまで数日ある。ある程度の拘束はさせてもらうが、その間の生活は自分たちでやれ。よもや自首してきた身で逃げだすこともあるまいな?」


兵士の言葉に黙って頷く町長。

そして、兵士の視線は手錠をかけられ、うつろな目で立っている神父へと向けられた。


「……外道め。こともあろうに神父に身を窶しているとはな。女神や国王陛下にあだ名す逆賊風情が」


そう言って兵士はペッと唾を地面に吐いた。

こいつら日本で言うところのお巡りさんのはずなのだが……ちょっと態度が露骨すぎると思う。


「ユーイチ様…………」

「……なんだ?」


フランが俺の服の裾を引っ張ってきた。

その表情は不安げで、今にも泣きそうなものだ。


「このまま神父さんを引き渡して、それで……それで良いんですか?」

「……良いも悪いも、俺が決めることじゃない。あいつらが決めた事なら俺たちがどうこう言える立場にはないだろ」

「けど……それは本当に正しいことなんですか!?」


…………正しいこと?

そんなこと知るか!!

俺だって気持ちとしては神父の肩を持ってやりたい。けど、操られていたとはいえ神父がやってきたことは犯罪だ。取り返しのつかないことだ!

……結局、明確に正しいことなんて頭の悪い俺なんかに判断がつくわけがない。

だったら、最後に決めるのは神父の…………


「父……さん?」

「!」


エリスが目を覚ました……!

このタイミングで? 結構最悪なタイミングじゃねぇか。どう説明すんだこれ。


「みんな……何やって…………っ!!」


寝起きの頭でボーっとしていたのか、いまいち状況が掴めていない様子だった。

しかし、神父の手錠姿が目に入ったのか、血相を変えてタイクの背中から降りると神父へと駆け寄った。


「あっ!? こらガキ!!」


兵士が神父へと駆け寄ったエリスを止めた。

一応、エリスとタイクはたまたまこの場に居合わせただけの人間と言うことになっているが、それ以外で捕まってしまえば普通の犯罪者だ。弁解のしようが無い。


「止めろエリス!! そいつに近づくな!!」

「…………なんだよそいつ・・・って……アタイ達の父さんだろうが!!」

「あっ、馬鹿っ!!」


言ってしまったよこの人は……

タイクに反発して、今言ってはいけないことを口にしてしまった。


「父さん? お前らこいつの子供か?」

「そう言ってるだろ!!」


叫びながら兵士たちを押しのけ、神父へと到着した。

勢い余って神父を地面に押し倒すほどだ。よほど必死だったのだろう。


「絶対に父さんは連れて行かせない! お前らなんかに渡すもんか!!」


涙目になりながら神父を庇うエリス。

その姿は口調こそ強気だが、傍から見ればただの子供。

子供が駄々をこねているようにしか見えなかった。

けど……

それでも……

そんな子供の願いすら叶えられない……いや、叶えようとしないこの場の大人たちは、奥歯を噛みしめていたことだろう。


「エリス、親父は……もう………………?」


タイクの台詞の最後に疑問符が浮かんだ。

いや、疑問符なら俺の頭の上にも浮かんでいることだろう。

もの凄く掻い摘んで説明しようと思う。


…………フランが光りだした・・・・・


すげぇ。意味わかんねぇ。

でも実際にそんな光景が目の前にある。

青白い光がフランの体を包んでいるのだ。

しかも、そのフランがエリスと神父の元へと歩き出した。


この場にいる全員があっけにとられた。

エリスもタイクも町長も。もちろん俺も。

そして、エリスを取り押さえようとしていた兵士たちも、その光景にただ見入って、フランを見逃していた。


「あ、あんた……なんだ、それ…………」

『………………。………、………………………………………………………』


フランの言葉が聞きとれなかった。

どんな小声も聞こえるような距離にもかかわらず、なぜか一言も俺には理解できなかった。

いや、そんなことはこの際どうでも良い。

フランが何かを喋った。その瞬間、神父も青白い光に包まれたのである。

そして、フランと神父から光が消えた時、声が聞こえた。


「エリス……」

「!!」


『エリス』と呼んだ。

先ほどまで生気も無く、一言も発することの無かった神父が『エリス』と呼んだのだ。

まだボーっとしているが、確かに意識が戻っているようだった。


「と、父さん……」

「親父……」


神父はこれまで息をしていなかったように大きく息を吸い込み、口を動かした。


「……嫌な夢を見ていたよ。皆を傷つけて、エリスやタイクにまでひどいことをしていた…………自分を殺してしまいたいほど、ひどいことを……」

「…………」


気がつけば、エリスは涙を流していた。

タイクは涙を流していた。町長たちも……皆が涙を流して、神父を見ていた。


「戻ってきた」


そう言っている人もいた。

そんな人たちを見た俺は……まああれだ。

心が動いた・・・・・のかもしれない。

思わず微笑んじゃったよ。こんな俺の顔、誰にも見せられないってほどにやけちまった。


「貴様、一体何をやっておるか!!」


兵士が我に帰ったのか、神父からフランをひきはがしにかかった。かなり乱暴である。

勿論、こんなのを俺が見過ごすわけはない。兵士の腕を力いっぱいつかんで止めてやった。


「がっ……き、貴様もか……どうなっているのだ貴様らは! こいつらの仲間か!?」

「いや? 仲間では間違いなく無いですよ? あと、フランは俺の連れなんで、手ぇ出さねぇでくれますか?」


そう言って兵士を突き飛ばした。

大げさにすっ飛んだ兵士はあからさまに俺を警戒している。

何人かは剣に手を掛けているほどだ。


「我々に手を出してただで済むと思うなよ!! 我々は栄えある王国兵士だぞ!」

「そんなこと言われてもなぁ。俺、元々犯罪者だし。冤罪だけど……いまさらそんな脅しを言われてもなぁ」

「何………………ああっ!? き、貴様……まさか、冒険者たちを惨殺し、あまつさえその亡骸を貪ったと言う凶悪犯罪者! ユーイチ・サヤマか!?」

「なんか変な尾ひれがついてる!? 貪って無いし! 元をただせば殺してもいない!!」


兵士たちが後ずさった。

あ、何だろこの気持ち。泣きそうなんだけど……


「貴様の隠れ家が『凍てつく大剣』にあったとは……いや、妥当と言うべきかもしれんが」

「ま、まあ……あれだ。犯罪者は犯罪者らしく! 傷をなめ合おうと思うよ!!」


俺の言葉の意味が分からないのか、頭に疑問符を浮かべる兵士たち。

意味ならちゃんと、行動で示しますさ。


「あらよっと」

「え、え……うわっ!? ちょっと何すん……わああ!!」


エリスと神父を鷲掴み……放り投げた。


「「ええええええ!?」」


タイクや町長が二人をしっかりと受け止めてくれた。ナイスキャッチ!

さて、これで準備も整ったことだし。ここらで『凍てつく大剣』には物語から退場してもらおうと思う。


「ユーイチさん!」

「お前……!」

「悪いなエリス、タイク。やっぱ俺、お前らに死んでほしくないわ」


彼らに手をかざし、唱えた。


開け(aperire)


いつもの通り、黒い煙が俺の影から浮かび上がった。

……いや、訂正。規模が違いすぎた・・・・・・・・

災害クラスのグーラを倒した時。

この町の食堂でチンピラをバッティングした時。

その他で使用した時よりもはるかに巨大な煙が浮かび上がったのだ。

その煙は数百人にもなる自首希望の『凍てつく大剣』を飲み込み……消えた。


『うおぉぉぉ…………?』

「な…………っ!?」


テネブラエや兵士たちが驚きの声をあげる。

兵士が顎が外れるくらい驚いているのは分かる。目の前で数百人が一瞬で姿を消せばそりゃぁ驚くだろう。

だが、テネブラエはこの能力を知ってるはずなんだが……


「なんでお前が驚くんだよ」

『い、いや……覚えてから間もないのに良くここまでできるな……つか『空間術』使えないんじゃなかったのか?』

「あれ? そう言えばそうだったな……なんでだろ?」


神父との戦闘中に使えればもっと楽に倒せていただろうに……役に立たん能力だな。


「ま、まて! 今何を…………えええええ?」

『まぁ一般人が見りゃ驚くわな』

「うわっなんだ!? 剣がしゃべってるぞ!!」


テネブラエの存在も驚きの一端を握っているようだ。


「とにかく確保するぞ! 囲め!!」


我に返った一人の兵士が号令を出した。

他の兵士たちもうろたえながら剣を抜く。

まずいな。勢いでやったが、さすがに兵士さんをぶっ飛ばすわけにはいかん。

そこらのチンピラとは違って公務執行妨害的な物になってしまう。

つまり。こういう時は……


「三十六計逃げるにしかず!!」


フランを抱きかかえ、兵士たちの頭上を飛び越えた。我ながら素晴らしい跳躍力である。


「に、逃げたぞ! 追え!!」

「はっはっは! あ~ばよとっつぁ~ん!!」


いや~、犯罪者になりたいわけではなかったが、この台詞は一度言ってみたかった。

全力疾走しなくても余裕で兵士たちを引き離して行った。


『だっはっはっはっ!! やることが大胆だなぁユーイチ!! お荷物を何百人も背負っちまって』

「カッとなってやった、反省はしまくってる……まあ後で適当なところで開放すれば大丈夫だろ」


いくらなんでもエリスやらタイクに恨まれるようなことはあるまい。一応、人助けだし。


「ん…………ん、うひゃぁ!? な、なんで私ユーイチ様に抱っこされてるんですか!?」

「お、起きたか猫耳少女改め発光少女」


俺の腕の中で眠っていたフランが目を覚ますなり叫んだ。


「発光? よ、よく分かりませんが抱っこと関係あるんですか?」

「覚えてないのか? こう……蛍みたいにフワ~っとした光が…………そういや、アエルが「フランちゃんが光ったの!」的なこと言ってたなぁ。てか、アエルどこ行った?」

『アエルか? あいつなら…………』

「見つかった~~~!!!」

「うおっ!?」


突然の叫び声に思わず足を止めてしまった。


「見つかった~! 見つかったのよ~! もぉ、地下室なんかに隠さないでほしいわぁ~!」


声の正体は言うまでもなくアエルだった。

埃まみれで教会から飛び出し、俺とかち会ったのだ。


「なんだなんだ?」

「あ、ユーくん。ほらこれ見て? やっと探し物が見つかったのよぉ」


そう言って、腕に抱えていたボーリングの玉ほどの大きさの宝石?のようなものを見せつけて来た。

ああ、地下室って俺たちが落ちてった場所のことか。あそこに置いてあったものなのだろう。アエルが埃まみれなのもそのせいだな。


「おまえなぁ、いくらなんでも泥棒は良くないと思うぞ?」

「あらぁ、元々エルフのもので取り返しただけよぉ?」


ああ、なら問題ないかもしれん。

しかし…………ゴクリ。

これほどの大きさの宝石か……売ればいくらぐらいするのだろうか。


俺の生唾を飲む音が聞こえたのか、視線から宝石が外された。

いやいや、いくらなんでも盗むなんてことするわけ無いじゃん。

俺ほど物を盗まないことで有名な人間はいないんだぞ?

そんなことを言ったらアエルだけでなくフランまでも疑うような視線を俺に当てて来た。だから冗談だって……


「あっ! 居たぞ! もうあんな所まで……この化け物! お縄につけ!!」


教会前で立ち止まっていると、息を切らした兵士たちが失礼なことを言いつつ追いついてきた。

どうやら長居し過ぎたようだ。


「なにぃ? ユーくん何かしたの?」

「なんだ女ァ! お前もグルかぁ!?」

「え、えぇぇぇ? 私!?」


なぜかアエルまでターゲットにされてしまった。往生せぇよ、アエル。


「ご、誤解ですよ~!」


アエルの訴えも、興奮しきった兵士たちの耳には全く届かなかった。

哀れだな、アエル。まぁ俺が原因なのだが。




「すまん! アエル! とりあえず今は逃げるしかなさそうだ!!」


「なんなの~?」


『なんか追われたり襲われたりばっかだな俺たち』


「ユーイチ様! 一体何が起こってるんですかーー!?」



どうも、作者です。

ひとまず第二章も終了です。

話があまり進んでいないように思えます。

…………さて。次回から第二章外伝です。つまり……護ルート。

あまり評判がよろしくないルートなので、短めにしたいと思いますが……どうなるか……

ともかく、ストーリー上必要な話なので頑張って面白くなるよう努力します。

文章力の神様よ! 我が元に降りてこい!!…………あ、いや、すみません。降りてきてください。

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