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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第二章 凍てつく大剣
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第四十八話 バトル展開 後編



「だぁぁらっああ!!」

「くっ」


神父の横っ面に蹴りを繰り出す。

すんでのところで受け流されたが、その衝撃でよろめかせることに成功した。


「チャーンス!!」


よろめいた隙に相手の服をつかんで寝技に持ち込んだ。

……つもりだったのだが。


「あ痛だだだ!!?」

「その傷で押さえるのは無理でしょう」


ねじ曲がった左腕を掴まれ、せっかく捕まえた神父が俺の腕からすりぬけて行った。

そもそも、腕が折れて足は刺され、頭から血を噴き出している人間が喧嘩なんてするもんじゃないな、うん。できることなら病院のベットでテレビでも眺めていたいものだ。


「まあそんな状況じゃないけどな!!」

「何の話ですか? ふっ!」

「なんの!」

「なっ!?」


神父の右ストレートを払うと、そのまま袖をつかみ、投げ飛ばす。


「これぞ必殺! 寝技がダメなら、投げ技を使えば良いじゃない……だ!!」


あ、これ系のネタ二度目だったかもしれん。

そろそろネタが尽きて来たか……もっとボキャブラリー増やさないとなぁ。

兎も角も、床に神父をたたきつけた。「がはっ!」とか言ってダメージを受けた神父だが、これだけじゃ止めてあげない。

仰向けの神父の顔面に拳を振り落とす。


「あ、クソッ!」


俺の拳は新婦の顔面を捕えることはなく、深く床をぶち抜いただけであった。

紙一重な瞬間に避けられてしまう。

しかし、叩きつけただけでも相当にダメージがあったらしく、立ち上がってもフラフラな状態な神父である。


「つかさ、ちょっと聞きたいんだけどよ」

「……戦闘中によくしゃべる人ですね」

「まあ聞けよ。お前さ……自分が操られてるって自覚ある?」

「……あなたが何を言っているのか一切分かりません……っ!!」


神父からパンチが繰り出された。

まあ、フラフラな状態だったため、難なくかわしてしまう。


「……っ! な、なんでそんな傷で平気なんですか……」

「いや、割と平気じゃねぇぞ? クソ痛いし」

「そろそろ失血死しても良いと思いますが」


まあ、昔から血の気は多いと思ってたけど、さすがにこれは異常だなと自分でも思う。

そう言えば、飯いっぱい食べれば血って多くなるんだっけ?

『ル○ン三世』の某映画でそんなシーンがあった気がするし。最近、俺飯食いまくってるし。


「ご都合主義ってやつだ。気にするな」

「気にしないわけにはいかないと思いますが……」

「それより、さっきの質問。ちゃんと答えろ」

「…………だから何の話を……」

「だから!!」


神父の腹にボディーブローを打ち出す。

フラフラになりながらも向かってくるので、おちおち話も出来やしない。

ちょっと崩れ落ちてもらいたい。


「お前の意志でエリスを殺そうとしたのかって聞いてんだよ……っ!」


胸倉をつかみ上げてそう言った。


フランが感じていた違和感。

何となくだが、俺にも分かった気がする。

多分……この神父はある程度の自分の意志は残ってる。

テネブラエが言ったように、グラシエムの能力で操られているのは確かだろう。

けど思い出した。この神父は泣いてた。

俺と一緒にエリスを殺そうとしていた時……泣いてたんだ・・・・・・


「目ぇ覚ませ!! お前が前はどんな奴だったかなんて知らねぇけど! 少なくともエリスの奴はお前を慕ってたんだ!! タイクだって……っ!」

「…………わ、私は……っ!」


神父が頭を押さえてうずくまった。


「エ……エリス……タイク……み、みんな……?」

「そうだ! 思い出せ!! お前にとって、あいつらがなんな……」

『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』


うおっ!?

なんだ急に?

断末魔みたいな叫び声が教会に響き渡った。

俺でも神父でも無い。これは……


「グラシエム!?」


いつの間にかグラシエムが俺の目の前に漂っていた。

テネブラエの拘束をぶち破ってきたようだ。弾きとんだテネブラエが俺のすぐ横に突き刺さっている。


『あー……すまん』


……仕事しろよ。

せっかく洗脳が解ける一歩手前まで持ってきたのに。


『ユーイチ・サヤマ…………あの方・・・が注目するだけのことはある。まったくお強い方ですねぇ』

「…………誰? あの方って」

『「殺すな」との命令でしたが……あなた……少し鬱陶しいですね?』


この世界に連れてこられて以来、どうやら俺の居場所はどこにも無いらしい。

どこへ行っても、やれ「出てけ!」とか。「鬱陶しい」とか。そう言えば俺自身、広域指名手配中だったな。

そろそろ俺泣いても良いころ合いだと思う。


「俺の質問にも答えてくんないのな」

『まあ、アタクシは乗り気でない『計画』でしたので、ここで一抜けさせてもらうことにしましょう』

「人の話聞けよ!!」


話のかみ合わない奴だな!


「つか、このうずくまって自問自答中の神父はほったらかしかよ。どうすんだこの空気」

『なに、問題ありません。あなたをくびり殺してからゆっくりと再洗脳することにします。彼はアタクシのお気に入りでございますからねぇ』


そう言うと、グラシエムから体が生えた・・・・・

…………ちょっとはしょり過ぎたかもしれない。でも現実として、そんなありえない光景が目の前にある。

なんて言うのかな……氷の体?みたいのがグラシエムの目玉を包み込んでいる。

ワオ!! こんなところで未確認生物のビックフットに出会えるとは思ってもみなかったぜ!!


『誰もかれも、愛すべき我が子ひつじたちですが……やはり羊飼い自身が戦う必要がありますねぇ』

「えーっと……その振り上げた腕のお出かけ先はどこへ?」

『お分かりでしょう?』


グラシエムの腕が俺の頭めがけて振りおろされた。


『ふむ。この姿だと力加減が難しいですねぇ』


いやはや大したものだ。床板を何枚かぶち抜いて床下の倉庫まで丸見えの状態になってしまった。

埃が舞い上がって視界不良な状態だ。

だけども俺は冷静だ。

こんな状況でも現場検証もきちっとできた。

それはなぜか?

グラシエムの攻撃なんて当たっていないからだ。


「今みたいな台詞はな?」

『なっ!?』


グラシエムの真上に飛びあがっているからだ。


「死亡フラグって言うんだよ!!!」


テネブラエの刃が目玉に深く突き刺さった。


『…………っ!?』


よろめくグラシエムから剣を抜くと、その反動で氷の体が脆く崩れ落ちた。

変身直後に倒されるとは……敵ながら不憫な奴だ。

もちろん、行為場面のお約束である断末魔もしっかり俺の耳に入ってきていた。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」


だけど……意外なことに、その悲鳴は神父・・から出されていたものだった。












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