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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第二章 凍てつく大剣
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第四十三話 話が急すぎてついていけない

こんばんは。佐山雄一です。

現在、町の入り口に来ています。

面倒くさい町の皆さんから逃れようと逃走を図り、逃走経路にあった橋が落ちてしまっていたためとんぼ返りをした形です。

何たる不運でしょう。

すでに日も暮れ、僕の腹の音が夕食の訪れを知らせています。

お腹がすきました。

タイクさんに奢ってもらうはずだった食事はまだ有効でしょうか…………いや、さすがに今会うのは気まずいですね……

そう言えばアエルさんを置いてきてしまいました。

と言っても一緒に旅をしていたわけでもありませんし問題はないと思いますが……素っ気ない別れだったと反省しています。

ああ……それにしてもお腹がすきました。

『空間術』で収納した食べ物を食べれば良いと僕は思っているのですが、フランさんが「計画的に食べないとすぐに無くなります。町まで我慢してください」と食べさせてくれません。

意外なことに、フランさんは中々計画的かつ家庭的だったようです。

彼女は良いお嫁さんになるでしょう……



『何一人でブツブツ言ってんだよ。気色悪いぞ』

「ユーイチ様。もう少しの辛抱ですから我慢してください」

「ああ、何でしょう。二人の声が遠くから聞こえるようです。なぜ二人ともそんなに遠くにいるのですか?」

『……俺はお前の腰にいるし、フランの嬢ちゃんは隣にいるんだが……腹減りすぎて耳が遠くなったか?』

「いや、つーか冗談抜きでもう限界……空間術を出す体力もねぇ……」


なんて燃費の悪い能力なんだ……燃料(食料)を能力で出し入れするってのは考えものだな。

おっと、腹が減りすぎて目がかすんできやがった。


「おや? お二人とも、町の外に出かけていたんですか?」


薪を背負った牧師ヒュージが空気を読まずに現れた。


『おいこら牧師。どこが二人だ。どう見ても俺様一人とお付きが二人だろうが』

「はい? 誰かしゃべりましたか?」


ヒュージがあたりを見渡す。

そう言えばこの人の前でテネブラエってしゃべったこと無かったなぁ。


『こっちだこっち。もっと目線下げろ』

「…………! け、剣がしゃべってる!?」


まあ、これが普通の人の反応なんだろうな。

剣がしゃべれば驚きもするだろうさ。


「これは珍しい……魔剣ですか」


まじまじとテネブラエを眺める。

ちなみに、テネブラエは俺の腰のあたりにあるため、少し気色が悪い。


『はっはっは。ここまで神々しい俺様だ。信仰の対象になってやっても良いぜ?』


また馬鹿言ってるなぁこいつ……


「なかなか良い提案ですが、私が信ずるのは女神アストラムただお一人なので…………ふむ、ところで皆さんはなぜ町の外に?」

「えっと…………悪いフラン。代わりに説明してくれ。体力的に無理……寝る」

「わ、分かりましたから道で横たわるのはやめてください……」




説明中…………




「そう……ですか。町の皆さんが…………私を頼ってくださってもよろしいのに」


口元に手を当てて視線を落とすヒュージ。

やはり信頼されないというのはショックな物なのか?


「ん~、やっぱりあれか? みんなのために神様に祈ったりすんの?」

「いえ。神に縋ってばかりでは人間はダメになります。人の役に立つには本人が行動しなければならないと教典に書いてあります……というより、ご存じでなかったのですか?」

『ああ、こいつはちょっと訳ありでな。察してやってくれ……』


その言い方だと俺がかわいそうな奴みたいじゃないか。


「そうなのですか? ではよろしければ簡単にご説明を……」


ぐうぅーーー!!!

なんの音かって? うん。俺の腹の音。

自重しろ俺の腹!!


「なんかごめんなさい」

「はは……私の仕事も終わりましたし、少し早いですが夕食にしましょうか。説明は食事の際にでも……」

「やった! メシ!!」


思わず立ち上がってガッツポーズ。


『復活早いなオイ!』

「ユーイチ様は本当に単純ですね」

「もっと俺に優しくしろよお前ら……」







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







……はるか彼方、この世界にまだ名前が無かった創世の時代。

今となっては名もわからぬ神により、三つの種族が創造されました。


竜人族ドラゴロイド

魔族。

人間。


彼らは数が多く、それらを治めるため、それぞれに国王が選ばれました。

彼らには不老に近しい寿命と、各々に特殊な能力が神によって与えられました。


竜人族ドラゴロイドたちの王。『堅牢』のタンニーンには、この世のありとあらゆる物質の中で最高の硬度を誇る鱗を。

魔族たちの王。『永遠』のレディトゥスには、死してなお蘇る永久の命を。

人間たちの王。『英雄』のシンフォニアには人間ならざる運動を行える肉体を。

そして『英雄』の妻である『始祖』のアストラムには人血創造を叶える一欠けらの魔法を与えられました。


世界が創造されてから数千年。

世界は平和に包まれていました。

その間、三つの種族に加え、獣人族ビストロイドとエルフがアストラムの力によって生まれ落ちます。

獣人族ビストロイドは魔族と、エルフは人間と共存し、お互いを支えながら繁栄していました。


平和を謳歌していた世界でしたが、ある時、神の引き継ぎの儀が行われることになりました。

数千年、あるいは数万年。果てしない年付きの中、神がその任を解き、地上にいる者に引き継ぎを行うその儀式は、五つの種族の勢力を大きく変えることとなった。

神より信任を受けたのは、『始祖』のアストラム。

アストラムはその信任を受け入れ、神へと昇格するため、その命を捧げた。

ですが、神の選択に不満を持った『永遠』のレディトゥスが神への反逆を起こしました。

自らこそが神にふさわしいと訴え、魔族と獣人族ビストロイドを引き連れ人間を戦火の渦へと巻き込んだのです。

巨大な山ほどもある魔物やありとあらゆるものを飲み込んでしまう化け物。武力に劣る人間たちは、なすすべもなく滅ぼされていきました。

ですが、『英雄』のシンフォニアとエルフ。そして応援に駆け付けた『堅牢』のタンニーンと竜人族ドラゴロイドの助けにより、なんとかレディトゥスを撃退することに成功します。

しかし、『人魔戦争』と呼ばれたこの戦争の被害は甚大なものでした。

竜人族ドラゴロイドはその数を劇的に減らし、人間はその勢力圏が大きく後退した。

さらに、この戦いによりシンフォニアが命を落とし、タンニーンは竜人族ドラゴロイドをこれ以降戦争に巻き込まないよう、絶対中立化を宣言した。

『英雄』の死を悲しむ人間たちでしたが、この後も果てしなく人間と魔族との戦いは続き、現在もまだ続く『永戦』となります。


神へと昇格した『始祖』のアストラムは嘆きました。

自らが神になったことで起こった戦争と、それにより生まれた膨大な犠牲者。

彼女は神になったことを後悔しました。

ですが、一度起こってしまったことは覆らない。

そこで彼女は、神に頼らない、神の力を望まないようにと地上の人間に教えを与えました。

人間たちの苦痛は人間同士で分かち合い、互いに力を合わせて困難を乗り越えていけるように…………




「…………と、これが世界の成り立ち。我々が信仰している「アストラム教」の教典に書かれている教えです」

「……………………」

「……………………」

「ちなみに、あまり知られていませんが獣人族ビストロイドが差別を受けているのは、この創世の時代に魔族の味方をしたからだと考えられています」

「……………………」

「……………………」

「おや? ユーイチさんもフランさんもお休みのようですね。誰か人をよこして移動させましょうか」

『…………おい』

「はい。何でしょうかテネブラエさん?」

『何でしょうか? じゃねーよ。てめぇ、ユーイチとフランの嬢ちゃんに何しやがった。飯一口食っただけでぶっ倒れちまったじゃねーか。ユーイチなんか飯の中に顔突っ込んじまってるよ』


蝋燭が、テーブルに並べらた料理を薄く照らしている。

そして、その中にはパスタのような麺料理の中に盛大に顔を突っ込んだ雄一と、突っ伏してしまっているフランの姿があった。

二人とも、寝息を立て眠ってしまっている。


「安心してください。食事に混ぜたのは普通の睡眠薬です。命に別条はありませんよ」

『睡眠薬に普通もクソも無いと思うが……目的は何だ。金か?』

「滅相もない! お金が目的ならこんなことはせずにキチンと殺してからいただきます!」

『…………あー、そうするとますます目的が読めねぇな』

「そうですね……隠しても仕方が無いので正直に言いましょう。私の目的はあなたですよ、テネブラエさん」

『俺? なんだよ、俺様がまぶしすぎて盗みたくなったのか? しょうがねぇ奴だなぁ。まあ気持ちは分からんでもないが』

「ええ。まさにそうですよ。言葉を話す魔武器なんてものはそうそうありませんからね。恐らく、テネブラエさんは伝説級の魔武器と見立てさせてもらいました」

『いかにも! 俺様はかの有名な『聖剣』エクスカリバーと並ぶ(自称)ほどの名剣だ。お前さん、中々目の付けどころが良いな』

「それはそれは。だとすれば、その鞘から出せるのはユーイチさんだけ、ということになりますね?」

『…………なるほどそう言うことか……』

「そう言うことです。いかに強力な魔武器だとしても、鞘におさめたままでは宝の持ち腐れですので」

『後で脅して俺を抜かせるってわけか。まどろっこしいが、確実な手かもな』

「ご理解いただけたようで何よりです。ではそろそろこの会話も終了にしましょうか…………バルバルさん。ユーイチさんたちを運んでください」


ヒュージが扉の向こう側に向かい声をかけると、外で待機していたであろう数人の男たちが中に入ってきた。

いずれも顔に青あざを蓄えた、雄一に返り討ちにされた者たちである。


「…………痛そうですね」

「ほっといてくだせぇッス、頭」

『頭?』

「ああ、そう言えばちゃんとした自己紹介はまだでしたね…………私は『凍てつく大剣』の頭目をしています。ヒュージ=トレイエルと申します」


そういえば、いつの間にやらPVアクセスが150万を超えていました。もうすぐ160万になりそうです。

えっ、何? この小説ってそんなに読んでもらってるの!?

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