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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第二章 凍てつく大剣
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第四十二話 ワレ味方少ナシ



「勇者様……」

「もー、またそれ?」


食堂に入ると、俺に食事をふるまってくれた町長やお偉いさんが多数集まっていた。

重要な会議をしていたのか、俺たちが食堂に入ると一瞬変な空気になった。

スポットライトが当たっているかのごとく、俺はその場にいた全員から注目を浴びている状況だ。


「やはり我々は勇者様に助けていただく他ないのです」

「だからさ、俺は勇者じゃないし、人助けなんてしてる状況じゃないんだよ」


注目を浴びて早々、町長から「助けろ」とのお達し。

やれやれ……はっきり言って勘弁してもらいたい。

絶賛逃走中なうえ、元々俺は人助けをしょっちゅうする人間じゃない。フランに関しても、あくまでエリックの野郎が俺の嫌いな人間と同じことを言ってたからに過ぎない。

その他では基本的に金になることか、知り合いが困ったときにしか働いてないし……基本俺は面倒くさがりだからなぁ……


「…………実は、この町は……」

「おい! 町長さん!! 助けてもくれねぇ勇者さんにそんなこと言ったら……!」

「いや、もういい。遅かれ早かれこの秘密は外に漏れるだろう。それほどに我々は派手に動きすぎた」

「……やっぱり、俺たちも年貢の収め時なのかもな……」


うーん。目の前で盛り上がられてもさっぱりついていけない。

そもそも俺たちは飯を奢ってもらうために食堂まで来たはずなんだが、気づけば町の奴らに主導権を握られてやがる……


「……我々は、というよりもこの町の住人達は…………『凍てつく大剣』の構成員なんです」


うん。ちょっと待とうか。……誰も聞くとは言ってないんだけど? そんな重い事を言われても困る。


「……え、えっと、つまりこの町そのものが『凍てつく大剣』の隠れ家。ということですか?」


フランが目を丸くして言った。

よほど衝撃的事実であったらしい。


「どおりで騎士さん達がいくら探しても隠れ家が見つからないわけねぇ。町の人間が全員グルってわけ?」

「はい。町に構成員が入るのを目撃されても全員で口裏を合わせるので、結果的に場所を特定されるようなことがないのです」

「……それは私たちに言ってもいいことなんですか?」

「先ほども話していた通り、遅かれ早かれ公になるでしょう。ならば勇者様に助けを求めるべきと考えました」

「いや、俺は別に聞きたいなんて言ってないんだけど……」

「あの、それで私たちに助けてほしいというのは?」


こらこらフランさん! 何を聞いてるんですか!? そんな状況じゃ無いって言ってるじゃないですか!!


「それは……」

「いいよ、町長さん。俺から話すからさ」


町長が俺におねだり(ちょっとニュアンスが違うか?)をしようとすると、先ほどまでうなだれていたタイクが町長のセリフをさえぎるように前に出た。


「タイクくん……良いのかい?」

「あたりまえだよ。身内の失態なんだからこれくらいさせてくれ」


タイクの悲しげな表情を見た町長は、一歩下がって黙る。

途端に、下がらなくてもいい食堂内のテンションがさらに下がってしまった。


「いや、俺は……」

「ユーイチさん。俺たちは……!!」

「……ああもう! だから俺はまだ頼みを聞くなんて言ってないって! そもそもやる気なんてないし……っていうか飯奢ってくれないんだったらもう俺は帰るぞ!! ってかもう町も出てく!! お疲れさんバイバイ! つーことで行くぞフラン!!」

「えっ!? ちょ、ちょっと……ユーイチ様!?」


誰も俺の言うことを聞いてくれないからちょっと怒った。

面倒事は御免なのにフランすら興味深々っていうのが鬱陶しい。フランの手を少しばかり強引につかんで早々と食堂から立ち去った。

そういやアエルの奴ほったらかしだったけど…………ま、いいか。


「……えーっと、あれ?」

「あらあら。ユーくんって面白いわねぇ」







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





まったく誤算だった。

こんなことになるなら後悔の無い人生を送るべきだった。

もう…………俺たちは前に進めそうにない。




「橋……落ちちゃってるよ……」

「落ちてますね」

『落ちてるなぁ』

「二人とも反復しなくていい。悲しくなってくるから」


町を出てから二十分もたっていない中、森を抜けた直後の谷の前。違う町に通じているはずの橋が、災害直後のようにがっつり落ちちゃってました。

しばらく呆然と眺めていると、どこからか爺さんがやってきて「ついさっき雷が落ちて橋が燃えてしまったんじゃ。大自然の力はすさまじいのう……恐ろしや恐ろしや……」と、なぜか独り言を呟いてから去って行った。

なんだったのだろうか……

まあそれはともかく、フランが言うにはこの橋がダメとなると、町を通って反対側にしか道はないそうだ。


「さすがにこの谷は飛び越えられないよなぁ」

「……あ、あの……ユーイチ様」

「ん? 何?」

「その……なんでさっき皆さんの話を聞いてあげなかったんですか?」

「あー……だって聞いたら絶対協力させられてただろ? そんな面倒くさいことは御免です」

「協力してあげないんですか?」

「だって面倒だもん」

「……ユーイチ様だったら困ってる人見過ごさないと思ってました」


微妙に蔑視の目で俺を見てくるフラン。とがらした唇がこれまたかわいい。

ただ、別に悪いことをした覚えはないのだが……


「そんな……正義の味方でもあるまいし」

「違うんですか? 私の時は助けてくれましたけど……」

「フランの時はエリックがむかつく奴だったし、俺の個人的な顰蹙を買っただけだ」

「…………けど、ユーイチ様なら」

「うーん……フランがどんな目で俺を見てるかは知らないけどさ、俺は正義の味方なんかじゃないぜ? 正義の味方なんてのは護みたいな名前の奴がすることだっつの」

『名前は関係ないと思うが……』

「……ともかく。俺には他人のために働くなんてキャパ持ち合わせてねぇよ。せいぜい友達とか家族とかしか助ける余裕はありません。っていうか、あいつら俺に飯奢ってた時は被害者面してたんだぜ? いまさら何言っても信用はできないだろ」


食堂にたむろってた奴らをぶちのめしたら「勇者様!」とか言って喜んでたし。

そりゃ、切羽詰まってる状況なら変わってくるだろうけど、そもそも他人のために命張ったりするのは嫌だよなぁ……一般人の意見として。

…………けど、なんだろう。フランがすっげぇ不満そうな顔でこっちを睨んでんだけど……気のせいか? 柔らかそうなほっぺたをめいいっぱい膨らませてるし、超かわいい。


「ともかく、だ。俺たちは追われてる身だし、他人の事情になんかに首を突っ込んでる余裕なんてないだろう?」

「…………むー、私を助けてくれた時のユーイチ様はもっとカッコよかった気がします」

「心外だな。俺はいつだって男前のつもりだぜ?」

『おいおい、お前鏡見たこととかあるのか? 男前っつうのは俺みたいなのを言うんだよ』

「やかましい! お前はただの剣だろうが!!」

『んだと!? この洗練された刀身から漂う色気を感じねぇってのか!?』

「二人して自意識過剰です」


ため息をつくフランをよそに「俺のほうが!」『いや、俺のほうが!!』と押し問答をしている俺とテネブラエ。

しばらくこの問答は続いたのだが、(あれっ? なんで俺、剣とカッコよさ対決なんかしてんだ? 傍から見たらかわいそうな人じゃね?)と、冷静になってしまい、何やらせつない気持ちになって終結した。

冷静になったことでフランの方を向いてみると、案の定。その目はかわいそうなものを見るものになってしまっていた。ちょっと傷つく。


「ご、ごほんっ! とりあえず、橋が無くなってる以上は一度町に戻る必要があるよな。うん、そうだな。そうしよう」


この時、俺はあるエロい……もとい、偉い人の言葉を思い出した。すなわち、


「橋が無ければ…………渡らなければいいじゃない」

『…………そのまんまじゃねぇか』

「正確には渡れない・・んですけどね」


なんだか外野がキャンキャンとうるさいが……気にしないでおこう!




新年明けましておめでとうございます。

作者の廉志です。

調子に乗って小説を書き始めて早半年……初めて書いた作品であるが故、まったくもってへたくそな文章や内容で申し訳ないです。

ともあれ、心が折れない限りは書き続けますので、今後ともよろしくお願いします。

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