第四十一話 胸ネタをを引きずる男
ずいぶんと更新が遅れました、すみません。
できるだけ間を開けないように書いていきたいと思います、ごめんなさい。
「まったく……えらい目にあった」
「す、すみませんユーイチ様……ご主人様のベットに入るのは奴隷時代からの癖でして……」
いまだ血のにおいが残る鼻を押さえながら俺たちは町の市場にやってきていた。
あの後、なんとか意識を取り戻した俺は………………あ?
ああ!! 現状説明なんてしてる場合じゃねぇ!!
「奴隷時代からの癖」? つーことはエリックのくそ野郎も同じようにおいしい目に……もとい大変な目に会ってたってことか!?
ふっざけんなあのロリコン野郎!! 俺のフランに手ぇ出してんじゃねぇ!!
「というわけで、ちょっと王都に戻ってエリックの奴ぶん殴ってくるから」
「えっ!? 何が「というわけ」なんですか!? 戻ってきてくださいユーイチ様!!」
『今から戻ったらさすがにとっ捕まると思うぞ』
フランが必死な顔をして俺を引き留めるため、しぶしぶだが王都に引き返すのはやめることにした。エリックの奴め、命拾いしたな……
「ともかく、フランの方はもういいんだよ……正直慣れました」
「うっ、それはそれで複雑です……」
「俺が言いたいのはアエルのほうだよ! なんで俺のベットにもぐりこんでんだ!」
俺がアエルの方向を向くと……この女、屋台で飯を食ってやがった。
「ふぁっえはむはっはんはもん」
「………………誰かこいつの言葉訳してくれ」
『えーっと「だって寒かったんだもん」だな』
「そりゃ下着一枚で寝てたら寒いだろうよ……」
「え~、ふぁっえへふほきはぁ……」
「ええい! 飯を食べながらしゃべるな! お行儀が悪い!!」
「……んく。だって寝るときは下着で寝ないと気持ち悪いのよぉ?」
えっ、何? この世界では寝るのはそういうスタイルが主流なの?
『いや? さすがにこの時期に裸で寝るのはアエル位だと思うぜ? つーかこいつは少し露出の気があるからな。気が付いたら裸になってることもしばしばだ』
「どんな状況だそれは……てか、アエルの性癖なんてどうでもいい。問題はなんで俺のベットにもぐりこんでたってことだ!」
「だって寒かったから……」
「それはもういい。聞いた」
「えっとねぇ……初めはフラちゃんのベットに入ってたんだけど……」
「私のベットに入ってたんですか!?」
「うん。それで、しばらく寝てたんだけど、急にフラちゃんが光りだしたの!」
「……………………」
「……………………?」
いや、こっちが『?』だよ。
えっと、つまりこの人は何を言っているのでしょうか。
「だからぁ、光りだしたの」
「なるほど。寝ぼけてたってことだな」
「む~……それで、光りだしたフラちゃんがベットを抜け出してユーくんのベットに入ったから、私も温まろうと思ってぇ」
「…………つまり……お前のせいかフラン!!」
「ええ!? えっと……よくわからないけどすみません……」
「あっごめん。冗談だからそんなにしゅんとしないでください」
『なにやってんだよお前ら』
……まあ、なにはともあれ……これですべての謎は解けた。
「アエルの胸は少なくともEカップはあった!!」
「どこを見てるんですかユーイチ様……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さて、最初に説明したとおり、俺たちは町の市場にやってきている。
まだこの町にやってきてから一日しか経っていないが、手配書とかの関係上あまり長居はできない。そんなわけで食糧やらなんやらの調達のために市場にやってきているのである。
ちなみに、イスカからもらった食糧は馬車に揺られ始めた一日目にして底をついた。そのあとは食える木の実や魔物とかを倒しながら飢えをしのいできたわけだが……これがまずいのなんの!!
だからこそ、できる限り食えるものを蓄えておこうというわけである。幸い、『空間術』のおかげでかさばる心配もないからな。
「おっちゃん、この干し肉全部くれ」
「全部!? おいおい兄ちゃん。あんた軍隊引き連れて遠征にでも行くつもりか?」
「ん? 全部俺が食う分だけど?」
「あっはっは! おもしれぇ兄ちゃんだな。おまけだ。いくつか果物も持って行きな」
「おお! あんがとおっちゃん」
と、こんな感じで大量の食糧を買い込み、作って置いた空間にどんどん入れていく。
周りからは手品にしか見えないこの能力だが、慣れたとは言え、さすがに腹が減る。買い込んだ食糧も出し入れのためだけにすでに一割を消費してしまっていた。
自分の力ながら、なんと効率の悪い能力だろうと思う。
「ユーイチ様! あっちの店の日持ちしそうなパンも買っておきました!」
少し遠くからフランの声が聞こえる。
「わかった。……あれ? アエルの奴はどうしたんだ?」
「あっ……えっと、それが……」
言葉を濁らせるフラン。
そんなフランに首をかしげていたが、すぐにその意味が判明した。
「やはりここで再開したのも何かの運命! よければお食事でもいかがですか?」
「あらぁ、困ったわねぇ」
タイク出現。おまけにまたアエルを口説いてやがる。
昨日のシリアスな展開はどうなったんだよ……
「タイク。お前ひょっとして二重人格か何かか?」
鼻の下を伸ばしているタイクに話しかける。
「げっ、ユーイチさん……こ、こんにちは」
「別に捕まえたりしねぇよ。さすがに面倒くさくなってきたからな」
いつでも逃げれる態勢にあるタイクにそう声をかける。
捕まえても何の得にもならないうえ、子供のエリスと違って二十歳半ばの野郎をいじっても面白くないしそんな趣味もない。
「そ、そうですか……なら。私はこのあたりで……」
「まあまあ、待てって。ここで会ったのも何かの運命だろ。なんか飯でもおごってくれ」
「僕がおごるほうなんですか!?」
「ご食事でもって言ってたじゃないか」
「それはこの女性に対してであって、ユーイチさんにではないのですが……」
「アエルに声をかけたってことは俺に声をかけたも同じだ。あきらめろ」
『お前はアエルのなんなんだよ……』
「あの、ユーイチ様……」
涙を浮かべながらも、観念したのか食堂へと俺たちを案内しているタイク。
そんなさびしげな背中を見つめながらフランが俺に声をかけた。
「ん? 何?」
「タイクさんはその……女性が好きな方なんですよね?」
「まあ、そうだろうな。女たらしって言うんだよ、ああいうのは」
「あの……えっとですね……」
なぜかもじもじと恥ずかしそうにする。
そのしぐさもかわいいが、さすがにはっきり言ってくれないと気持ちが悪いので訊ねてみる。
「なんだよ」
「あの…………タイクさんは女たらしなのに、なんで私には声をかけてくれなかったんですか!?」
…………あー、なるほど。
フランもやっぱり女の子なんだなぁと思う。
女の子としてアエルに嫉妬してるわけだ。
「俺に言えることは唯一つ……」
俺の視線はフランの控えめの胸に、次いでアエルの豊満な胸へと向けられた。
…………確かに大きいことは良いことだが……
「俺はフランくらいがちょうど良いと思うぞ!!」
「…………なぜでしょう、ものすごく馬鹿にされている気がします」




