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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 王都
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第五話 最低ランカー


ギルド。と言うらしい。

そう、俺は今ギルドに来ている。まさにRPGな雰囲気に包まれた建物だった。

日本にはまず無い。海外にもあるかどうかわからない。ゲームやアニメの中でしか見れないような様相である。

さて、中に入ってみると、アズラさんが言ったとおり中は人数が少なかった。

それでも数人、「いかにも」な格好をした厳つい野郎どもが俺を睨みつけている。

城の兵士といいこいつら冒険者といい、人を睨みつけるというのが友好的な証なのだろうか……

勿論、どんなに安売りをされても喧嘩は買いたくないので、目を合わせずに受け付けに向かう。


「はいはいこんにちは! 本日はどのようなご用件で?」


受付のお姉さんが話しかけてきた。すさまじいテンションだ。

声は建物に響き渡り、俺の耳に「キーン」と言う音が残った。


「あ、あの……ギルドへの加入をお願いしたいん「はいはい! ギルドへの登録ですね?」……です」


せっかちな人だ。

人の台詞を遮ると、そのテンションを維持したまま説明を始めた。


「はいはい! それではどのギルドへの登録をご希望ですか? 商業ギルド? 冒険者ギルド? それとも魔術ギルド?」


にこやかに説明してくれるところ悪いが早口すぎてあまり頭に入ってこない。


「一応、冒険者ギ「はいはい! 冒険者のご登録ですね? それではこちらの書類にサインをお願いします。」……ハイ」


差し出された書類書類にサインをする。

……この女性はなにか急いでいるのだろうか、と思うほど早口で捲し立てられる。

こんな荒っぽい場所で仕事をこなすにはこれくらいがちょうどいいのだろうか……

書類には冒険者の心得のようなものが書いてあるが、たいしたことは書いていないので割愛する。

…………本当に割愛する程度のことしか書いていなかったのだ。あえて言うならば、「御趣味は?」みたいなことしか書いていない。

まったくもって冒険とはかかわりが無い質問ばかりだったのである。


「できま「はいはい! ありがとうございます」……」

「…………あのあの! 申し訳ありません。これはなんと読むのですか?」


受付のお姉さんが書類を確認すると書類を指差したずねてきた。


佐山雄一。


俺にはそう見える。と言うかそう書いてある。もちろん日本語で、だ。

そういえばこの世界では言葉の意味は理解できるが、言語自体はこの世界のものだったな。

文字を読むことはできるが書くことはできないようだ。ご都合主義で世界設定するなら読みだけじゃなくて書きもオートで理解できるようにしてもらいたいものだ。


「それはサヤマユーイチって読むんだよ。こっちの読み方だとユーイチ=サヤマ「はいはいユーイチ様ですね。かしこまりました」…」

「はいはい! それではひとつ質問があります。ユーイチ様はギルドでのお仕事をなさったことはございますか?」

「「ないのですね? 分かりました。それでは簡単に冒険者ギルドの説明をいたします」……!?」


す、すげぇ! ついに俺が一言も話していないのにかぶせてきやがった。

超能力者かよ……もしくは神様か。前例を知っている俺もすごいのかもしれん。


「冒険者ギルドではその人間の能力に合わせていくつかのランクを設定しています。この冒険者ランクはFランクから順にE、D、C、B、A、S、SSとなっていまして、ユーイチ様はギルドでのお仕事をされたことが無いようですので最低のFランクからはじめていただきます」


お、おお。この説明は普通のテンションなんだな……

しかし、Fランクか……どの程度のものかは知らないが、初めてなんだしこんなものだろうと思う。

ゲームでも最初から最大レベルの任務に着ける訳じゃないしな。なんか、こう言うところでゲームの知識も役に立つものであることに気がついた。


「ランクを上げるためには基本的に自分と同じランクの任務を二十こなすこと、もしくは自分より上のランクをこなしたり、上のランクの魔物を討伐することでランクをあげることができます。ただ、注意していただきたいのは、一度に上がれるランクは三つまでと言うことです。それ以上のランクをこなしても三つ以上は同時に上がることはできないので気をつけてくださいね」

「とにかく、任務をこなせばランクアップってことだな。じゃあもう一つ質問「はいはい! 報酬についてですね?」…………」


なんだかさっきから心を読まれている気が「いえいえ! 心なんて読んでいませんよ?」……なにぃ!?

考えてることにもかぶせられた!? 読んでるだろ、明らかに!!


「ではでは! 報酬につきましてはランクにみあったものをご用意しております。Fランクなら最低給を、SSランクなら貴族になれちゃうほどの報酬です。もちろんランクが上がるごとに任務の危険性は上がっていきますが、その分いい暮らしができると思って頑張ってください」


さて、俺はほとんど話していないが、説明が終わったようだ。結局、終始超能力者なお姉さんの独り言を聞いているようなものだった。


「あとあと! 任務についてのご説明は任務を受けるときに担当のものがいたしますのでそのつもりで」

「あ~、ギルドのことは分かったけど、ちょっといいかな?」

「はいはい! なんでしょうか?」

「この近くに長期間泊まれる宿屋とかってある? できるだけ安いところがいいんだけど」


そうだ。現在の俺は根無し草、宿無し、住所不定無職17歳の少年なのである。

ニュースになれば顔を映してもらえないだろう。


「はいはい! あ、ユーイチ様はこの街に来られたばかりなのですね。冒険者の方はギルドのほうから格安で宿を借りることができます。今空いているのだと……この近くの食堂の上の部屋ですね」

「食堂? もしかしてそれってアズラって言う人がいるところか?」

「そうですけど……お知り合いなんですか?」

「まあな。そこに行けばいいのか? 家賃とかは?」

「え~っと、確か一月あたり銀貨1枚だったと思います。お金はアズラさんに渡してくれれば結構です」

「ああ、分かった。ありがとう」

「いえいえ、どういたしまして。それでは本日はこれで終わりです。本登録に時間がかかりますので、任務は明日から受けることができますよ」


と、これが俺のギルド加入までの経緯である。

俺はバイトなんかもいくつかしたことはあるが、さすがにこんなに適当な申し込みは無かった。

面接なりなんなりあるものだが、少し適当すぎるような気がしてならない。

一応、この世界の正式な職業ならもう少し何とかした方が良いんじゃないか? と正論を考えながらギルドを後にするのだった。

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