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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第二章 凍てつく大剣
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第三十八話 食堂に縁があります



テイルが言った『飛竜配達』とやらの法外な値段に対し、しぶしぶながら財布から白金貨を3枚取り出して渡しておいた。

白金貨3枚と言えば日本円にして約三百万円だ。ぼったくりすぎるだろう……と思ったが、テイル曰く『飛竜』を育てるのは非常に金がかかるらしく、それだけの値段でも赤字ぎりぎりらしい。

だが、テイル側からしてもこれだけ高いサービスを受ける人そうそういるとは思っておらず、俺に即金で白金貨を渡されるとかなり戸惑った表情を浮かべてた。






「それで、どこを案内すればいいんだ?」


『飛竜配達』がどうのと言うやり取りの後、教会から出てきたエリスと合流したこともありテイルとは別れることとなった。

今はエリスとフランと三人で町を歩いているわけだが……


「いい加減機嫌直せよ。こっちも怒ってねぇからさぁ」


ブスっとした表情で俺を睨みつけているエリスの頭をなでる。施設にいたころに小さな子供の面倒を見ていたからこう言った時の対処は実は慣れていたりする。


「何度も拘束されて怒らない方がどうかしてるだろう!……っていうか子供扱いするな!! アタイはこう見えても十三歳だ!!」

「いや、そこで勘違いはしてねぇけど……」


なにせ見た目通り、そのぐらいの歳だろうな~って思ってたから。


「ぐぐ…………っ! 馬鹿にしやがって……!」


ますます俺を睨みつけてきた。

どうやら大人扱いしてほしい位の反抗期らしい。対応を間違えたか……施設にいたのは小学校低学年くらいだったからな。


「まあとりあえず、このあたりをざっと案内してもらおうかな。……ああ、兵隊さんがいるとこっつーか……手配書みたいなものが貼ってある場所ってあるか?」

「ああ? このあたりに兵士なんていないよ。治安が良いからって定期的に他の街から見回りに来るぐらいだ」


兵隊がいない? このぐらいの規模の町なら当たり前なのか?……にしても不用心だな。


「そんじゃ、手配書とかは? 俺のが出回って無いか心配なんだよ」

「あんたなんてどうなろうと知ったこっちゃないけど……すぐそこの食堂に貼ってあるよ…………なあ、この町に見るものなんて何もないよ? もう帰っちゃダメか?」

「ん? ああ……まあこの町位なら俺とフランだけで見回っても一日かからないだろうし……別に帰っていいぜ」


俺がそう言うとフンっと鼻を鳴らしエリスはどこかに行った。教会はそっちじゃないぞ~?






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


エリスに言われた食堂は教会から少し離れた場所にあった。と言うよりここは俺が飯を食っていた場所だ。チンピラに襲われた所とはまた別の食堂。


「さっき来た場所ですね」

『人だかりで見落としてたようだな』


なにせ先ほどは俺を取り囲む形で接待を受けていたのだ。手配書があったとしても見落としていても何ら不思議ではなかった。

だが、先ほどの好接待とは打って変わって俺が食堂に入るとたちまち店内は気まずい雰囲気に覆われた。……なんで?


「なあ、なんかさっきと雰囲気が違くないか?」

「本当ですね……あっ、ひょっとして手配書が出回ったとか……?」


ひそひそ声で呟くフラン。いかんな、そんなことになれば着いたばっかだけど町を出る準備をしないと……


『いや~、それとは別の理由じゃねぇか? ほら、そこの掲示板』

「掲示板?…………ああこれか」


見ると俺のすぐ目の前に掲示板があった。気づけよ俺。

ともかく、その掲示板には何枚か手配書や連絡などが載っていたが、俺の手配書は見る限りは無かった。


「ふぅ、着いて早々また脱出なんてことにはならずに済みそうだな。……でも、じゃあ何なんだこの変な視線は」


店にいたのは十数人だったが、そのほとんどが俺を見ていた。かといってそれらを見返すと目線をあからさまにそらすため何やら寂しい気持ちになってくる。


「ハブられるってこういう気持ちなのかな……」

『はぶ……なんだ?』

「いやこっちの話……ともかくこれからどうするかだな。手配書がまだ来てないっつってもいずれは来るだろうし……アズラさんの話だと国を出た方が良いんだっけ?」


フランと今後の話をしようと席に着くと、隣のテーブルから人の声が聞こえてきた。静まり返った食堂でひときわ目立つ声だ。


「あらぁ~。そんなにきれいに見える?」

「ええもちろん! あなたのような澄んだ瞳に緑の髪の毛! まさに女神アストラムが遣わせた天使そのものです!!」


あからさまに女をナンパしている男の声。その方向に顔を向けてみると案の定だった。

俺をこの町まで送ってくれた御者。エリスの兄。いつの間にか消えたその男はタイク。そいつが女をナンパしていた。


「ハロ~。タイクさ~ん」


俺がタイクの背中に話しかけると、振り返って俺の顔を見るなりみるみるタイクの顔が引きつっていった。


「こ、こんにちはユーイチさん……お久しぶりですね……」

「つってもさっき別れたばっかだけどな。どこ行ってたの?」

「そ、その~……お代は王都の方で払ってもらってましたので、もう良いかな~って」


タイクはそう言っているが、実際は逃亡だろう。しっかり縛っていたはずのエリスが逃げ出したのだからタイクが手助けしたのは間違いない。

その場にいれば俺が疑うこと必死なので逃げ出したんだろうな。



「あのぉ、あなたひょっとしてぇ……」


慌てて言い訳を考えているタイクの背中で、ナンパされていた女が俺に声をかけてきた。

緑色の髪にマントを翻す。

男なら誰しもが目を向けてしまうほどの爆乳保持者。そいつは……



「あんたは確か……」

『アエルか!?』



…………おいテネブラエ、俺の台詞を取るな。






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