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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第二章 凍てつく大剣
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第三十七話 教会に盗賊に新聞社


店の中に現れた一人の神父。

ニコッと笑うと俺に対して握手を求めてきた。


「どうもはじめまして。ヒュージ・トレイエルと言います」

「ああどうも。ユーイチです」


俺がヒュージの手を握り返すと、再びニコッと笑って次はフランへ手を差し出した。

自分にも挨拶が来るとは思っていなかったフランは恐る恐るだが手を握った。


「は、はい。フラン……です」

「よろしくお願いします…………ところで、なぜみなさんお集まりなんですか? 表でたくさん人が倒れていましたけど……」


ヒュージの言葉に、その場にいた俺とフラン以外の人間が体をビクッとさせた。

この神父さんってそんなにビビられる存在なのか?


「いや、その……あれは……ですね」


町長が言葉を詰まらせる。傍から見ていても分かるほど、何かに怯えている様子だった。


「あの方たちは……あなたが?」


俺に話を振ってきた。


「ん? まあ成り行きと言うかなんというか」

「そうでしたか。あの人たちの素行の悪さには私たちも困っていたので助かりました。きっと罰があたったのでしょう」


少し苦笑い気味に言うヒュージ。神父と言う立場上、暴力を肯定するのは気まずいのかもしれない。


「見たところユーイチさんとフランさんはこの町の方ではありませんね? 宿の方はもうお決まりですか?」

「いや、さっき来たばかりだからまだ寝るところは決まって無いよ」

「なら教会に来ませんか? 表の方たちを懲らしめてくれたお礼として止まって行って下さい」


いや~、飯もタダでもらっちゃってなんか悪いな~。この町に来てからはなんだかんだで良いことばっかりな気がするわ。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



何か言いたそうな顔をしていた町人たちをよそにヒュージについて行くと、到着したのはやはり教会らしき建物だった。

ただ、俺が元いた世界のように十字架が飾られてはなく、少し大きな建物の中に長椅子がたくさん並んでいるだけの建物だ。宗教が元の世界とは違うのだろうから当然っちゃあ当然か……


「どうぞ、ごゆっくりして行って下さい…………エリス、ユーイチさんたちの荷物を運んでもらえますか?」

「あっどうも……って、ん? エリス?」


聞いたことのある名前がヒュージの口から出た。

ヒュージの見ている方向を見てみると、


「…………げっ!」


顔をしかめたエリスの姿があった。


「なんで行くところ行くところお前に出会うんだよ!!」


そして逃走。

だが目の前の獲物を逃がす俺ではない。あっという間に空間術でエリスを捕獲した。


「はっはっは。俺から逃げられると思ったのか?」

「だー!! 離せ!! いつもいつも気食悪い技で捕まえやがって!!」


片腕を俺に掴まれ、ぶら下がっているエリス。罵詈雑言に加え、蹴りが俺の腹に命中しているので心も体も少し痛い。


「大体アタイを捕まえても兵士に突き出せないだろ! 知ってんだぞ! お前がギルドで手配されてるって!!」

「なんでって言われてもな~、なんかエリスが逃げるから反射的に……」


俺の言葉にますます暴れるエリス。

逃げなければ捕まえられなかったと知り、理不尽だと喚き散らす。


「ってか、やっぱりこのあたりでも手配回ってんの?」

「ああ? アタイは王都で見ただけでこのあたりのことまでは……ってなんでアタイが説明しなくちゃならないんだよ!!」


ノリツッコミをありがとう。

つーことはここらではまだ手配は回って無いのか? 町人も俺の顔見て何も言わなかったし。


「あの~、エリスが何かしたのですか?」


置いてきぼりだったヒュージが会話に参加する。

俺はこれまでのあらましを説明した。かくかくしかじか……



「なるほど……エリスがとんだご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありません」

「父さん!! こんな奴に頭を下げることなんてないよ!!」


父さん?

この神父さんってエリスの父親なのか……それにしちゃ似てないが。


「エリス、君も謝りなさい」

「えっ!? だって父さんが……ムガッ……」

「本当に申し訳ありませんでした。娘ともどもこの通り」


暴れるエリスの頭を無理やり下げさせ、ヒュージも同じように謝った。

すると、しばらく暴れたのちしぶしぶだが、自分の意思でボソッと「……ゴメン」と謝るエリス。

父親には少しは素直なようだ。


「いやまあ、もう気にしてねぇよ。エリスの兄さんにも謝らせちゃったし……親父さんにまで謝らせるってのも……なあ?」


目配せにフランに同意を求める。


「えっ? あ……そ、そうです……ね?」

「てな訳でもう頭を下げないでくれよ。なんかこっちが申し訳ない気持ちになってくるし……」


そう言うとヒュージが頭を上げ、申し訳なさそうな顔をする。


「ありがとうございます……ですが、なにかお詫びをさせて下さい。……たしかユーイチさんとフランさんはこの町に来たばかりでしたね。ならエリスに町の案内をさせて下さい。ユーイチさんがお強いとはいえ、この町は少し外れれば途端に治安が悪くなりますから」

「えっと……じゃあお言葉に甘えて」


ヒュージの口ぶりからすると、俺は運悪く治安の悪い場所の食堂に入ってしまっていたらしい。フランのカンは当たっていたみたいだ。


「なんでアタイがこんな奴の道案内を……」


ぶつぶつと呟きながら、ヒュージに指示されて俺の荷物を他の場所に運ぶエリスだった。








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



エリスが俺たちの荷物を部屋に運んでいる間、俺たちは教会の外に出ている。

早く俺が手配されているかどうか調べに行きたいしな。


「あっ、お~い! 勇者様~!!」


勇者様……つーことは多分俺のことだ。

呼んでるのは確か……テイルとか言った奴だ。


「ん? なんか用か?」

「今、教会から出てきたよね? 何かさ~、変なところ無かった?」

「変なところ? 変な奴なら目の前にいるけど……」


無論テイルのことだ。


「またまた~、本当に何もなかったの? やっぱりガセなのかな~?」

「何かの取材ですか?」


俺の影からひょこっと体を出し、首をかしげるフラン。


「まあね。この町に『何か』があるって言う情報があってこの町に来たんだけど、さっぱり。あとはあの教会だけだったんだけど神父さんも良い人っぽいし空振りだね」

「『何か』って何だ?」

「それを調べに来たの。結局分からなかったけどね……はあ、上司に怒られるかもな~、何か成果を上げないと……あっ、勇者様。『飛竜配達』って興味ない?」

「飛竜配達?」

「さっきも言ったろ? 大陸のどこにいても二日で配達! ヴェルム新聞『飛竜配達』ってね。飛竜にお客さんのにおいを覚えさせて配達するんだよ」


護のことが書いてあった新聞か……

配達手段が限られているって思ってたけどそうでもないらしいな。


「それって、護……勇者のことってまた記事にしたりするのか?」

「本当にいたら間違いなく特集記事にするだろうね~」


だったらその『飛竜配達』ってやつを頼んでおいた方がいいかもしれない。護の近況報告を知ることができる出来るんだったら願っても無いことだ。

「探さないでください」って言われたけど。状況を把握するくらいなら別にいいだろ。


「それで、それっていくら?」




「年間で白金貨三枚」



…………高ぇ!!!!



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