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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第二章 凍てつく大剣
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第三十四話  野営中であります




「薪も拾ったし、あとは火をつけるだけ…………あれっ? そういえばどうやってつければいいんだ?」


街を出てから二日目。初日は夜逃げという形でしょうがなく夜中に移動していたが、御者曰く「夜中に移動するのは危険」ということで俺とフランは野営の準備をしていた。


「あっ、ユーイチ様! 私に任せて下さい」


胸を張って、集めた薪の前にちょこんと座るフラン。

目を瞑り、しばらく力んだかと思うとバチッという音をたてて薪に火が灯った。


「おおっ! なんだ? 今どうやったんだ?」

「えっとですね……こうやりました」


再び目を瞑り手をかざすと、掌の上でバチッという音をたてて電気が走ったのが分かった。


「なんだフラン、魔法が使えたのか?…………あれ、でも呪文を唱えていなかったような……」

「これは体質なんです。小さいころから雷を思い浮かべると実際に出せるようでして」

『ふ~ん、魔法っつうよりは空間術に近い感じか……まあ、獣人族(ビストロイド)は基本的に魔法は使えないからなぁ』


あ? そうなの? 割と初耳だったんだけど……


「ま、便利な力があって助かったよ。ありがとなフラン」


俺が頭をなでてやると、えへへ~と照れくさそうに笑うフラン。

はっはっは。愛い奴め。



「…………っ!」



「空間術と言えば……テネブラエ。この特訓とかめちゃくちゃ腹減るんだけど、やらなくちゃダメか?」


俺が言うところの特訓というのは、昨日からやらされている荷物の空間術での出し入れだ。

最初はイスカに渡された袋程度だったのが今では馬車の荷台丸ごとを出し入れさせられている。

…………はっきり言って超つれぇ……


「おかげでイスカがくれた食料もそこをついちまったんだけど……」

『最初にも言った通り、慣れてくれば腹もそこまで減らなくなる。今のうちに慣れといた方が良いんだよ』

「それは分かるけど……」



「…………い!」



「あっ、でも初めのころと比べてだいぶきれいに出るようになりましたよね? 呪文も唱えなくてよくなってますし」


フランの言うとおり、一日特訓しただけでも大分スムーズに空間術の煙を出すことができるようになった。おまけに集中すれば呪文を唱えなくても、小規模なら発動できるようになっている。

素晴らしきわが才能!!




「おいこら!! いい加減にしろ!! 無視するな!!」



…………ええい、さっきからキャンキャンとうるさいやつだなあ……


「なんだ? おさげっ娘……ああ、小便か?」

「なんだおさげっ娘って! アタイはエリスだ!! それと小便じゃなくて縄をほどけって言ってんだ!!」


エリス。

街で俺が捕まえた女盗賊(子供だけど……)

そのあと脱走して森に逃げ込んだあげく、グーラに襲われて仲間を失った気の毒な少女……


……いやまあ、そんな説明はどうでもいいのだが、ともかく今、エリスは木に縄で縛りつけている状態だ。

なにせ一応犯罪者だからね。

ちなみに、俺としては女の子が小便などと言うのはどうかと思う。


「ああ、そうだエリスだっけ? 縛られて当然だろ、盗みに脱走、最後は無賃乗車なんてしてるんだから」

「ふんっ、あんたに迷惑をかけた訳じゃないだろ」

「いやいや! めちゃくちゃかけられてますけど!?」


なにせ、盗みをやらかした時にはエリスの仲間に殴られたし、脱走の時にはフランともどもグーラに喰われかけたし、最後の無賃乗車に関しては現在進行形で迷惑かけてるだろ。


「そうだぞエリス! ちゃんとユーイチさんに謝れ!!」


と、横から口を出してきたのは逃亡の手助けをしてくれた御者さん。

何の縁か……エリスのお兄さんらしい。ちなみに名をタイクと言う。


「本当に申し訳ありません!! 私の愚妹がご迷惑を……ほら、お前も謝れ!!」

「……あ~、いや迷惑つっても最終的に実害を被ったってわけでも…………いや、あるか」


グーラを倒してしまったあとでなぜか国から追われる羽目になったからなぁ……これ以上にない実害だ。


「身勝手なのは承知でお願いします! どうか我が愚妹にお目こぼしをいただけないでしょうか?」


必死で頭を下げるタイク。

まあ、妹がブタ箱行きになるとなれば必死にもなるか……


「ん~、俺としては別に解放しても良いんだけど……」


そう言って俺はエリスに手をかざす。

エリスの縄に空間術をかけ、縄を断ち切った。特訓の成果で呪文を唱えずに出来た。


「おっ! やった!!」


縄が切れた途端駆け出すエリス。しかもこんな言葉を残して……


「はんっ! 覚えてろ!! 絶対に復讐に来てやるからな!!」

「全然反省してないしな……」


はあ~、全くめんどくさい。

もう一度エリスに手をかざす。

俺の特訓の成果はかなり順調だ。テネブラエが言うにはかなり上達が早いらしい。

呪文を唱えずに発動できるようになったうえ、多少ならば影を操ることもできるようになっていた。

……そんなわけで煙がエリスを追いかけるように包み込んだ。


「うわっ! なんだこれ…………っ!」


辺りに響いたのはエリスの断末魔…………とは違うが、ともかく再び捕獲完了!!




帰ってきた雄一君です。

護君の口直しになれば良いのですが……

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