第十二話 王様の寝室
「勇者よ、本当に酒は飲まぬのか? 遠慮をすることは無いのだぞ?」
「はい。先ほども申しましたが私の国では未成年の飲酒が禁止されていますので」
モントゥ王国国王、ワング・ジ・アラム・モントゥの寝室に俺はいた。
なぜこうなったのかというと……
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「はあ……なんか疲れたね……」
『あらあら。確かに命を狙われるなんてそうは無いものね』
ギルドに依頼をしたのち、俺とエクスカリバーは城に戻ってきていた。
アークと暗殺集団との激闘の後であり、聖剣の能力も相まって幾分か体がだるい。
「おお! 勇者よ! 外の視察はどうであった?」
「……へ、陛下!?」
ため息をつく俺に対し、なんと王様が声をかけてきた。しかも、普段はサテレスを初め、大勢の側近を連れている王様にしては珍しく、たった一人での登場だ。
『あらあら、ワング。また仕事を抜け出してきたの? 困った人ね』
「はっはっは! エクスカリバーよ、人間たまには息抜きも必要なのだぞ?」
どうやら王様は仕事を放り出して逃走中のようだ。
耳を澄ますと遠くからサテレス達の声が聞こえてくる。
「陛下ーー!! 国王陛下はいずこーー!!!」
「あんの馬鹿陛下!! 何度抜け出せば気が済むんだ!!」
どう考えても臣下が王様にかけるべき言葉ではない物も聞こえてきていた。
…………王様の評価を改める必要がありそうだ。
「む、ここももう安全ではないか……おお、そうだ。先日、勇者の故郷について聞くと約束をしておったな。今から聞こうではないか」
「えっ!? ちょ、ちょっと…………」
断りを入れる暇もなく俺は王様に引きずられていった……
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というわけで今に至る。
「ふむ、前にも聞いてはいたが……勇者の故郷は愉快な所なのだな。馬が引かぬ馬車や鳥や飛竜よりも高く早く飛ぶ乗り物など想像もつかん」
この世界の文明水準は、俺が見て回った限り中世ヨーロッパに近い。魔法やこの世界独自の技術も存在するが、現代日本と比べるとはるかに劣っていると言える。
そもそも別世界を比べること自体間違いなのかもしれないが……
「それに我が気になったのは『ニホン』という国の価値観だな。『ブシドー』という価値観があるにも関わらず自分を下に見せる文化とは……あべこべではないのか?」
「一応、武士道以外にも宗教や習慣などが組み合わさった結果「謙虚さは美徳」とされてきました。あまり深く考えたことはありませんが」
「ふーむ、異世界の価値観はよくわからぬが……だからこそこの世界とは隔たりがあるのやもしれんな」
元の世界でも、日本は特異な国だと思うのだが……これ以上言うと延々と説明させられる気がするのでやめておこう。
「…………話は変わるが、勇者は我が娘のことをどう思っているのだ?」
「……? 本当に急に変わりましたね。シルフィ様のことは……とても活発なお方だと思っていますよ?」
「ふー……その様子では我が娘の思いが達せられるのはいつになることやら」
『うふふ。シルフィちゃんはマモル君のそんな所も好きなんじゃないかしら?』
二人が何を言っているのか分からない。急に話が変わったかと思いきやシルフィがどうのこうの……何の話なんだろうか。
「……? シルフィ様のことは(友人的な意味で)好きですよ?」
「いや……恐らく勇者が言っているのとは違う気がするのだが……」
『シルフィちゃんも大変ねぇ』
「……お二人が何を言っているのかいまいちよく分かりません」
「ま、まあ分からぬのならそれでもよかろう……そういえば勇者は今日街に出ておったのだったな? 何か用事でもあったのか?」
再び話が変わった。だが、この王様の台詞で俺は思い出した。
「ああっ! そうでした……そのことでお話があります」
「む? なんだ?」
「今日私は……暗殺されかけました。犯人は……この城の人間です」
グダグダと申し訳ありません。
次話が終わればとりあえず雄一ルートに戻る予定です。
あと、ここでしていいのかは分かりませんが新しい小説を書き始めました。
『国作りをしよう』という国作り奮闘記を現在執筆中です。
そちらもだらだらと書いて行く予定なので良ければお読みください。