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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 -外伝- 勇者来る
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第九話 鈍感キャラ

第八話の最後を修正しました。

護君は土下座ってキャラじゃありませんね、雄一君と混同していました……


「す、すみません!! 大丈夫ですか!?」


意図した物でなかったにせよ、木人形を消し炭にしてしまい、訓練をしていた兵士が呆然としている。

慌てて駆け寄り、頭を下げるのだが兵士の近くに来てみると気付いた。

兵士はまったく動じていなかったのだ(・・・・・・・・・・)

呆然としていたのではなく、目の前で起こったことを異常なまでに冷静に観察していた。


僕が頭を下げると俺の方をギョロッとした目で一瞥すると、その兵士は足早に訓練場を後にした。

失礼かもしれないがかなり不気味な雰囲気の兵士だった。


「な、なんだったんだ…今のは……」

「それはこっちの台詞だーー!!」


シルフィが金切り声を上げる。

それはもう……城中に響き渡るような大きな声だった。


「マモル! なんだ今のは! 初歩の呪文で何で中級魔法並の爆発が起きるのだ! マモルは魔法を使ったことが無かったのではないのか!?」

「そ、そんなこと言われても……僕はただ言われたとおりに……」

「だから! それでなぜあのような事が起きる!! これでは……むがっ……!」

「はいはい、シルフィ様。それじゃあ話が前に進まないぞ?」


シルフィが繰り返し同じ内容の怒鳴り声を上げたため、ゲイルがシルフィの口をふさぎ止めに入ってきた。

シルフィがゲイルの腕の中で暴れている。


「マモル。シルフィ様の言うとおり、今のはあまりに強力過ぎる。わざと……と言うわけでは無いんだな?」

「むがっ! むぐ……っ!!」

「ああ。不可抗力だ」

「むごご! むぎっ!!」

「うん。なら問題ないな。マモルが強ければそれだけ戦いも楽になる。魔法は追々慣れていけば良いさ」

「むぐぐぐっ…………(ブチッ)……ふんっ」


ドスッ!!


訓練場に鈍い音が響き渡る。

見ると、ゲイルの顔色がだんだんと青色になっていった。

原因は……言わずもがな…シルフィのハイヒールがゲイルの足に突き刺さっていた。

ちなみに、普通の鎧ならばハイヒールごときは防げるのだが、今ゲイルが来ている鎧は礼装用の派手な物だ。戦闘を考えていないため、所々隙間が空いている。

と、なんの意味もない鎧の説明が走馬燈のように頭をよぎった。身の危険を感じるほどシルフィから殺気がみなぎっていたからだ。


「ぶはぁっ! ……息ができないだろうこの馬鹿者!!」


よかった。この殺気は俺に向けられた物ではなさそうだ。

だが、ほっとしたのも束の間、シルフィの目が折れに向けられた。


「マモル! なぜそなたはこうも…………せっかく妾が…」


怒号が飛んでくると思いきや、なぜかか細く、若干泣いているかのように声が震えていた。しかも顔をうつむかせているため、実際泣いているようにも見えた。


「あ、あの…シルフィ……さん?」


おそるおそる声をかけてみると、うつむいていた頭を上げ、キッと俺を見ると


「とにかく!! 城の中では魔法の使用は禁止だ!!…………ま、マモルの馬鹿ーーー!!」


最後になぜか僕に罵声を浴びせかけ、訓練場を飛び出していった。


『あらあら、青春ねぇ』

「アタタタ……そ、そうだな。私はとばっちりだったが……」

「あれっ!? 今の状況が理解できていないのって僕だけ?」


エクスカリバーとゲイルの口ぶりからすると、二人は現在の状況が理解できているようだった。


『それは……ねぇ? うふふ』

「それは……なあ? ふっふっふ」

「な、なんだよ二人して気持ち悪い。……ともかく、僕はシルフィが心配だからちょっと追いかけてみるよ。悪いけどここの片付けはお願いして良いかな?」


ゲイルは快く了承し、エクスカリバーを預けると僕はシルフィの後を追った。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「シルフィ!」


しばらく走っていると、シルフィに追いつくことができ、後ろから声をかけた。

シルフィが振り向くと、気まずそうな表情で僕をみている。


「あ……マモル…」

「その……さっきはごめん!!」


とりあえず頭を下げた。

正直、なぜシルフィが怒っているのかは分からないのだが、僕が原因で怒らせてしまったのは間違いない。


「な、なぜマモルが謝るのだ?」

「えっ? でも、僕が魔法を使ったせいで怒ってるんじゃ?」

「む……違う。 さっきのは…………妾のわがままだ」

「わがまま…?」

「…………そうだ。妾は……ま、マモルに魔法を教える事を楽しみにしておったのだ!」


シルフィが恥ずかしそうに言い放った。

ああ、少し分かったかもしれない。


「わ、妾がマモルに教える事ができるのはこの世界の事だけなのだ。だが、マモルは頭が良くて教えたことはすぐに覚えてしまう……後は魔法だけだったのに……」


シルフィが目に涙をためている。

恐らくこの子は自分に対して怒っていたんだろう。

僕に何も教えてやれない、してやれることは無いのだと……


「このままではマモルに見てもらえなくなるのではと……」

「シルフィ」


シルフィの涙声の言葉を遮り、視線を合わせるために跪いた。


「僕は君に感謝してるよ? この世界に来てからいろいろと気を使ってもらって……」

「でも……妾がしてやれることはもうほとんど無いのだぞ?」

「そんなことは無いさ。君といると楽しいし、これからも一緒にいたいと思うよ」

「…………っ! ほ、本当か!?」


シルフィに笑顔が戻った。ためていた涙もいつの間にか引いている。


「うん」

「わ、妾とずっと一緒にいてくれるのか?」

「うん」

「妾の事をずっと見ていてくれるか?」

「うん。今もこうしてシルフィの顔を見ているよ?」

「……………………は?」

「……………………ん?」


シルフィが首をかしげる。

それにつられて僕も首をかしげた。

……なにかおかしかっただろうか…


「い、一応聞いておくが……今のは恋人にささやくような意味合いであろうな?」

「ん? なんの話だい?」



…………………………



二人の間に沈黙が流れた。


「……………ん」

「あっごめん。もう一度言ってくれるかな」


僕が聞き返すと、それはそれは恐ろしい形相でにらみつけられ、



「このっ!!! 鈍!感!!」



小柄な体からは到底想像のつかないような重い右ストレートが僕の顔面へと吸い込まれた。



こうして、二日連続で同じ人物に気絶させられ一夜が明けるという理不尽極まりない状況が生まれたのであった。



…………本当に僕、なにかまずいこと言ったのかなぁ?






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