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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 王都
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第三話 腹が減っては……死ぬ




思い出した。


思い出してしまった。


神様とのやり取りを思い出し、シルフィにかいつまんで説明した。

俺が手違いでこの世界に召喚されたこと、そして俺が勇者ではないこと。

説明をしている中、シルフィの表情が目に見えるように暗くなっていった。

終いには目に涙をためはじめた。何もしていないのに罪悪感に苛まれる俺。


周囲の神官たちが慰めようと声をかけるが、全く効果が無い。「このままでは世界が」とか「最後の希望だったのに」とかぶつぶつとつぶやく有様である。

さすがに俺も目の前で女の子が泣いているというのは居心地が悪いので慰めようとした。

そっと声をかける。


「まぁ…………なるようになるさ!」


うん。

それが悪かったのかな?

ビンタとともに、このような怒号が飛んできた。


「勇者じゃないなら出てけ!!!!!!!」







そんな感じで俺は今城門前へと追い出され、ビンタされた頬の痛みと格闘中である。

主人公(仮)の称号を早々に返還したのである。まぁ、最初から勇者(主人公)とは信じられていなかったが……


さて、ひとまずここで俺の装備品を紹介したい。


高校の制服一式 防御力0 腐女子への受け3


財布 特殊効果無し

 

所持金 日本円 313円也


ちょっ! 死ぬ!!


「ちょっと待って!! 死ぬから!! 死んじゃうから!!!」


俺は城門を叩く。そりゃぁ叩くだろう。死活問題だから。

本当にここが異世界なら俺はどうすることもできない。飯は? 寝床は?

まさに0からのスタートなのだ。

数回門を叩くと中から兵隊さんが出てきた。

睨まれた。……恐ぇ!!


俺は城に助けを求めることをあきらめた。

だって兵隊さんに槍を突きつけられたらあきらめるしかないじゃないか!

すごすごと退散する。

だが収穫が無かったわけでもない。

怖い兵隊さんは「町に行けば仕事がある」と言って指を指した。

ああ、ありがとう兵隊さん。それが俺を追い払うためでも俺にとっては大助かりだ!

とりあえず街に行ってみよう。というよりそれしか選択肢しかない。

ドラ○エで最初のモンスターを仲間にするときに選択肢が実質一つしか無い時と一緒だ。選ばなければ前に進まない。



数分と言った距離である。そこに街があった。

そこは驚くほど活気に満ち溢れ、行きかう人々の表情は一様に笑顔である。

例えるなら日本の夏祭りのような雰囲気だ。かといって、祭りであるわけではない。

皆普通に商品を買って、普通に飯を食って、普通に道を歩いているだけだ。装飾が飾ってあるわけではない。これが素の街の活気と言う物なのだろう。現代日本ではあまりお目にかかれない光景である。


ぐうぅ~~


む? 何の音だ!? 敵か? それともまだ見ぬ凶悪モンスターか!?


…………まあ、俺の腹の音だ。

下校途中で拉致(?)され、普通なら今頃夕食時だ。腹が減ってくらくらしてきた。

ここはあれだ。とにかく飯だな。腹が減っては戦はできぬというらしいし。



食事ができる場所を探し、少し街を歩いたところ、俺はあることに気がついた。

この世界では言葉が分かるだけではなく、文字も理解できる。

と言っても日本語の看板が掲げられているわけではない。

地球で言うところの中東?……アラビア語のような文字が羅列してある。だが、俺はアラビア語をマスターしていたわけでは当然なく、頭の中で自動的に翻訳されているようだ。言葉のことと言い、なんというご都合主義。


そうこうしているうちに食堂らしき店を発見した。


店のメニューが載っている看板に目を向けてみる。


パルトの煮物定食 銅貨6枚


メチカワとカララギの炒め物 銅貨4枚


カラマチ 銅貨9枚


すげぇ、料理名だけじゃ肉料理なのか魚料理なのか野菜料理なのかさっぱり分からん。


とりあえず情報収集でもしてみよう。

料理についてではなく、料理の値段についてだ。

自慢だが、俺はこの世界の金なんて持ち合わせていない。価値すら分かっていないのだ。


「すんません」


店の中で働いている女性に声をかけてみる。

ちなみにこの女性は少し太った体型のおばさんである。なんというか……ジ○リの映画に出てきそうな気持ちのいい女性だ。

「お母さん!!」と叫びたくなるのはなんでだろう。


「ん? なんだい?」

「この店で一番安い料理ってこれですか?」


看板のメニューを指差し尋ねる。


「ああ、定食で一番安いのはパルト定食だけど単品だと銅貨3枚だよ。食べてくかい?」

「いえ、今は持ち合わせが無いんで。物を売ろうと思うんですけど、どこか買取をしてくれる店ってあります?」

「武器とかだったら街の反対側にあるけど……そんなの持って無さそうだしねぇ。雑貨ならこの道の向かい側で買い取ってくれるよ」


親切にもおばさんが道に出てきて教えてくれた。本当に気持ちのいい人だ。


「ありがとうございます。お金ができたらまた食べに来ますんで」


そう言って俺は頭を下げる。うん。やはり礼儀は大事だな。

まぁ、俺は誰であれタメ口を聞くことができるスキルを持っているが……なぜだろう、この人にはタメ口をきいてはいけない気がする。


「あら、礼儀正しい子だねぇ。待ってるよ」


その場から離れ、おばさんに教えてもらった店に向かう。


その間に食堂での情報を整理しよう。


食堂で一番安いメニューが銅貨3枚。一食を単品では済まさないだろうから定食で一食約銅貨6枚。

一日三食……いや、最低2食で銅貨12枚。自炊すればもう少し安くなるだろうが、大体そのくらいで一日食べることができる。もちろん住む場所やら何やらでもっとかかるだろうが、野宿をすれば食事分だけで生きていけるか……

全く、頭が悪い設定の俺になんでこうも計算をさせるんだ。せめて計算機が欲しいところだ。


「まずどうやって金を稼ぐか…だよなぁ」


思わずため息が漏れる。児童養護施設も大概貧乏だったが、食に困るほどではなかったもんなぁ……

無い頭を悩ませているうちに雑貨店に着いた。

店の前には鍋やフライパン。何に使うのか分からないものまで様々なものが並んでいる。


「すんませーん」


店内に声をかけてみる。


返事が無い。


「ん? 留守か?」


まずいな、金が作れないと飯が食えない=BAD END 

やばい。戦なんてしてる場合じゃねぇな。何もせずに死ぬわ。


つってもそこまで悲観することではないか。

店の人が戻ってくるまで待てばいい話なんだから。


とりあえず店員が戻ってくるまで雑貨でも見ていることにしよう。


「これは…鍋か、しかしやけにぼろいな。ほかには置物?ネックレスに本。あと手とビンと……………手?」


手。

うん。手。

それが雑貨の中から生えていた。

そしてその根元から何かが聞こえる。


「タスケテ~」

「手えええええええぇぇぇぇ!!??」


思わず叫んだ。いや、叫ぶだろう普通。雑貨の中に人が埋まってたら。


俺はその手を掴み引っこ抜いた。

難なく瓦礫の中から引っ張り出せた。歳は俺よりも少し下ぐらいの少年だ。


「ああ~、ありがとうございます~」


少年は少し目を回しているようだったが大事は無さそうだ。

割と重い雑貨に埋もれて目を回すだけと言うのは丈夫な少年である。


「大丈夫か?」

「はい。大丈夫ですよ」


少年はヒビの入った眼鏡をかけ直し、慣れた様子で散らばった店を片付け始める。

…………本当にずいぶんと慣れた様子だった。テキパキと動き、見る見るうちに店としての機能が回復して言った。

頻繁にこういうことが起きるのだろうか。


「埋まってたところ悪いけど、買取をお願いしたいんだが」


そうだ、金がないと飯が食えない。

現実は残酷である。


「ああ、はい。どれを買取いたしましょう」

「これなんだけど」


俺は唯一の所持金である313円を財布から出した。

所持金と言ってもこの世界では何の役にも立たないからな。


「はい。こちらですね。これは……硬貨…ですか?珍しいものですね」


そう言うと少年は百円玉をつまみ、指ではじいた。

周りに百円玉の音が響き渡る。


「…………これは、見た目は鉄ですけどほとんどが銅ですね」


へぇ、そうなのか。俺は見たまんま鉄だと思ってた。

そのほかの硬貨、十円玉と一円玉も同じように指ではじくとようやく査定結果が出た。


「占めて銅貨1枚、銅板5枚ですね」


銅板?また新しい硬貨がでてきたな。つーか足りない……食堂の単品にも届いてない。


「も、もう少し何とかならねぇか?」


値段交渉に入る。日本にいたときは値切りなんてしたこと無かったけど今は本気で死活問題だ。


「すみませんが、同じものがもう一枚あれば銅貨3枚まで出せますけどこれだけだとこれ以上はだせません。」


あと一枚?

くそっ! どっかにねぇか!?

ズボンのポケット…無い

上着のポケット…無い

もう一度財布…無い


ああ、やっぱりもう無いか。

がっくりとうなだれる俺。ああ、かわいそうな俺。こんなことなら昨日の帰り道で買い食いなんてしなけりゃ良かった。

ああ、でもあの肉まん……美味かったなぁ。あの味をもう一度味わいたいものだ。


「あっ、それって」


顔を上げると少年が目を輝かせながら俺の手元を見ている。いや、手元ではなく財布だ。


「もしかしてこれ、売れる?」


恐る恐る聞いてみるとすばらしい速度で財布を奪い取られた。


「これは……うわぁすごい…どうやってこれを…………何だこの素材……」


一人でぶつぶつとつぶやく少年。端から見ると少し気持ちが悪い。


「査定終わりました。この財布ですが、銀貨1枚と銀板5枚でどうですか?」

「銀貨?」


銀貨?多分銅貨よりも高価な硬貨だろうが、価値が分からないので呆けた返しをしてしまった。


「あっ、安かったですか?ん~苦しいですが、銀貨2枚までなら何とか出せますけど……」


俺の呆けた返事を違う方向に受け取ったらしい少年。交渉をすればもう少し高く買い取ってくれそうだが、俺にはそんな能力は備わっていなかったため交渉はこれで決着した。


今回の利益  


313円 銅貨1枚銅板5枚


財布 銀貨2枚


計 銀貨2枚銅貨1枚銅板5枚


あとはこのお金がどれくらいの価値なのかを調べる必要があるが、その前に腹ごしらえだ。さすがにもう限界……。

腹減ったーー!!


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