プロローグ
護ルートでしたが、書いているとあまりのつまらなさに嫌気がさしました。基本的に雄一ルートの補足なので流し読み程度でかまいません。
……と言うより流し読みでお願いします。読者が離れて行っている気が……
第二章へ急げ!!
扉
そう、扉が道路の真ん中に立っていた。
珍しい光景だが、それ自体は別段おかしいものではない。どこかの大工が運搬中に落としてしまったとか、何かのイベントの飾りだとか、可能性自体はいくつかあるからだ。
だが、僕が驚いていたのは周りに誰もいないにもかかわらずひとりでに扉が立っていること。そして……僕以外の人間には見えていないということだ。
なんど聞き返しても、同じ児童養護施設に住み、なおかつ親友の佐山雄一には目の前に立っている扉が全く見えていない様子だった。
しかも、僕の頭がおかしくなったと言わんばかりに僕の体を心配してくる。……その言葉と瞳がとても優しいものであるのが救われない……
しばらくすると扉に動きがあった。
扉がひとりでに開いたかと思うと、僕の体が扉に吸い込まれ始めた。
なんだこれは!扉があることまではまだいい!だが、吸い込まれるってどういうことだ!これではまるで……
フィクションの……
「うわあああああ!!!」
吸い込まれまいと必死に抵抗したのだが、結局僕の体は扉へと吸い込まれていった。
こうして、『僕』音竹護はこの世界からその姿を消した。…………最後には雄一の体を掴んでいた気がするのだが……どうなったのだろう?
「……ろ。……おい……」
ぺちぺちと頬を叩く感触がする。
「ん、ん…………?」
重く閉じた瞼を開くと目に飛び込んできたのは、見たことのない、三、四十代といったところのあごひげを蓄えた中年男性だった。あと顔が……
「近っ!?」
見知らぬ中年男性が寝起きに息のかかるような距離にいたとなれば、特殊な性癖を持っている人間以外は鳥肌ものだろう。もちろん、僕もそのような性癖は持ち合わせていないので、起きてすぐ、中年男性にアッパーカットを喰らわせてしまった。
「がふぅっ!!」
男性がきれいに曲線を描きながら吹っ飛んでいった。
「あ、ああ! すみません!大丈夫ですか!?」
「良いパンチだったぞ、音竹護。出来れば殴らないでもらいたかったが……」
僕が少しパニックになっていると、鼻にティッシュを詰めた男性がいつの間にか目の前に来ていた。
自分で言うのもなんだが、非常に痛々しい。
「あ…も、申し訳ありませんでした! 驚いたとはいえ、殴ってしまうなんて……」
「いや、こちらも不用意に近づきすぎた。気にすることは無い。本日二度目はさすがにきつかったが」
そう言って、男性が使から何か書類のようなものを受け取り、めくり始めた。
「あ、あの。いくつか質問をしてもよろしいでしょうか」
僕は学校で先生に質問するときのように手をあげる。天使(仮)以外にも聞きたいことはある。
「ん、いいぞ」
「言いたいことは色々ありますが……ひとまず質問です。ここはどこで、なんで僕はここにいるのでしょう?」
僕は全く見知らぬ場所にいた。しかも、周りは白一色ではるか彼方まで何もない場所……いや、空間に俺は立っていたのだ。
それに、確か僕は雄一と一緒に下校途中だったはずだ。途中でおかしな扉が現れたところまでは覚えているのだが……
「ふむ、ここは確か~……『時空の狭間』…だったか? いや、確か……スーパー……まあいい。それと、ここに呼び出したのは私だ。少しばかり手荒になってしまったが……」
『時空の狭間』? アトラクションとかエリアとかにありそうな名前だ……ということは、ここはどこかの遊園地か何かの中か?
だとすれば、このおかしな空間にも納得がいくかもしれない。鏡張りか何かだろう。
「分かりました。それでは次の質問を……僕と一緒にいた高校生を知りませんか? 名は佐山雄一と言うのですが……」
僕は雄一と一緒に下校していた。だが、今この場所に雄一はいない。一緒に連れてこられなかったのか、または別の場所にいるのか……
「佐山……雄一……ああ、あの頭の悪そうな少年か。あれなら、手違いで連れてきてしまったので、早々に退場してもらった。音竹護もすぐに同じ場所に送るから、気になるのならばその時に探せばいい」
この男性の言うことを信じるならば、ひとまず雄一は無事なのだろう。
さて、次が恐らく最も重要な質問だ。
「では、最後に……あなたは一体何者ですか? 身代金目的の誘拐なら当てにしない方がいいですよ?僕は施設で暮らしているので身寄りもありません」
そう、今のこの状況でもっとも可能性が高いのは僕が誘拐されたということだ。
もし本当に誘拐ならば、この男もなかなか頭が悪い上に運も無い。そもそも誘拐するなら僕のような男子高校生ではなく、小学生くらいの女子を狙うべきだ。それに言ったように僕は施設で暮らしているので身寄りが無い。よってお金を払うことは出来ない。
「ん? どうやら少し勘違いがあるようだな。佐山雄一はそれほど気にしていなかったのだが…」
「彼は頭が残念な人なんです。一緒にしないでください」
「ふっ、そうか……しかし安心しろ。私は誘拐犯ではなく…………神様だからな」
……………………神様?
……ああ、なるほど。誘拐犯に加え、麻薬中毒者だったわけか。
「ふむ、その目は信じていないな? というか、失礼なことを考えているだろう。まあ、よかろう。では証拠を見せてやる」
僕の疑いの目を察したのか、神様(仮)が持っていた書類をぺらぺらとめくり始めた。
「音竹護17歳。現在は東京郊外の児童養護施設で暮らしている。小学校に入学するころ、母親の虐待によって施設に入る。後に父親に引き取られるが、そこでも虐待に遭い再び施設入り。現在は、施設で古武術を習う傍ら、勉学にも励み、全国模試で二位になるほどの秀才ぶりを発揮する」
「なっ!!」
神様(仮)がつらつらと並べ連ねたのは、僕の過去や現在のプロフィールだ。それに僕が施設に入った原因なんて佐山園長を含め数人しか知らないことだ。
「ふむ、他にも色々あるぞ? おねしょをした最終年齢とか好きな女性のタイプとか……」
「わーっ! わーっ!! もういいです!!信じますから!!」
僕の恥ずかしい過去や女性の好みまで知っているとは……神様とは信じがたいが、ただ者で無いことは確かなようだ。
「信じてもらえて何よりだ。では、そろそろ本題に入らせてもらうぞ」
先ほどまでへらへらと笑っていた神様だったが、急に顔つきを変え、真剣なまなざしで僕を見る。
「な、なんでしょう?」
「音竹護。お前を異世界『アストラム』に勇者として召喚する」
はい?
「勇者って……昔話とかゲームとかに出てくる…アレですか?」
「まあ、そんなところだ。『アストラム』を救うのがお前の使命だ。詳しい説明はめんど…ゲフンゲフンッ、あちらの世界でしてくれるだろう」
「今めんどくさいって言いかけませんで…………ってうわあぁ!!」
僕は神様への突っ込みの途中だったが、急に強烈な浮遊感に襲われた……というより、なぜか僕の体が落下し始めた。
「うわああああああああ!!!」
結局、何が何だかわからないまま、僕は異世界へと送られることになった。
さて、読者の皆様には面倒くさいこと極まりないでしょうが、『護ルート』の始まりです。前書きでも書きましたが流し読みでかまいません。飛ばしていただいても多分問題ありません。
とりあえず、本編である『雄一ルート』は『護ルートが』終わり次第再開します。