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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 王都
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番外編 サテレスと…



「なんだとっ!? 暗殺に失敗した!?」


モントゥ王国王城。その執務室でサテレスが、数人の男たちに怒鳴り声を上げている。


「し、しかし宰相閣下っ! やはり私どもの戦力では災害級を打倒すような者を討つことなど……」

「馬鹿ものっ!! それが栄誉ある王国騎士の台詞か!!」


言い訳とも取れる部下の言葉にさらに怒りを表すサテレス。その言葉に襲撃者たちは一様に口を噤んでしまった。


「そもそも! 私が言ったように初めから毒を盛ればよかったのだ!! それなのになぜ貴様は直接手を下せと言った!!」


サテレスの視線が部下たちから部屋の隅にいた男へと移る。

男はフードをかぶっており、その顔はよく見えない。ただ唯一特徴があるとすれば、男の身長とほぼ同じ程度の大剣を背中に背負っていることだ。


「先ほど、あなたが言った栄誉ある王国騎士とやらが、毒殺などという卑怯なやり方をしてもよいのか?」

「ムッ………」


男の言葉に、言葉を詰まらせるサテレス。


「だ、だがしかし、あやつを殺せと言ったのは貴様ではないか?」

「私は殺せとは言っていない。『襲え』と言っただけだ。そもそも殺すことが目的ではないし、この者たちにそんなことができるとも思っていない」


男の言葉にカチンときたのか、襲撃者たちが次々に抗議の声をあげる。先ほど自分たちの実力不足を告白した者たちだが、男の言葉にさすがにプライドが傷つけられたようだ。


「殺すことが目的ではない!? どういうことだそれは!! 勇者の時といい(・・・・・・・)、貴様は一体何がしたいのだ!?」


男の言葉に納得がいかないといった表情で男に喰いかかるサテレス。襲撃者たちも一様に険しい表情をしている。自分たちの仕事に意味が無かったと言われているようなものなのだ。当然だろう。


「すべては君たちの誉れあるモントゥ王国のためだ。計画が進めば、おのずと結果は見えてくるだろう」


男の自信に満ち溢れた言葉に一同は唾を飲み込んだ。一同の不満や疑念などを吹き飛ばすほどの自信と確信が、フードからのぞかせる男の笑みから読み取れたのだ。


「ふ、ふんっ……我らが王国の永久(とこしえ)の繁栄を実現させるためとはいえ、貴様のような平民に頼ることになるとはな」

「そのことに関しては気にすることは無い。私は私の目的のために動いているにすぎないからな。あなたたちの『王国の人間以外の力は借りない』というものには当てはまらないさ」


襲撃者たちが互いに顔を向け合い、笑顔をこぼす。自分たちの手によって王国が繁栄するのだ、という喜びからだろう。


「ふ、ふはははっ! 当然だ。王国の繁栄は王国の人間によって成し遂げられる。貴様の力では決してない」


男の言葉に気を良くしたのか、サテレスが高らかに笑っている。先ほどの言葉とは逆のことを言っていることに気づいていないようだ。


「……話は戻るが、ユーイチ=サヤマの今後について伝える」


脱線しかけていた話の流れを男が元に戻す。


「ユーイチ=サヤマには手配書を出しておけ。罪状はそうだな……災害級によって殺された者たちがユーイチ=サヤマによって殺されたことにすればいい。災害級が出たことは民にはまだ知らせていないのだろう?」

「ああ。民に無用な混乱を招くだけだからな。だが、なぜそのような廻りくどいことをするのだ? これも『計画』とやらに必要なものなのか?」


サテレスが疑問の声を投げかける。『計画』がどういうものかサテレスは知らないが、襲ったあとに手配書を出す意味が分からないのだろう。初めから手配書を出せば、襲う必要は無かったはずだ。


「まず、ユーイチ=サヤマをこの街から出す必要がある。最初に襲わせたのは、街に居れば常に身の危険にさらされるということをユーイチ=サヤマに知らせるためだ」

「だが、あの者が逆上して城を襲ったらどうする? 先ほどの部下ではないが、今城には迎え撃つほどの戦力は無いぞ?」

「その時はまた別の作戦がある。あなたが心配することではない」

「む、そうか?…………おい! すぐにユーイチ=サヤマの手配書を作成し、明日までにギルドに提出しておけ」


心配していたことが男の説明によって解消されたのか、サテレスはえらそうに部下に命令する。

男がほくそ笑んでいることも知らず…………











「さて、ここでの目的は達せられた。ここらで私は街を去ることにしよう」


襲撃者やサテレスが手配書作成に忙しそうにしている中、男は突如口を開いた。


「何? もう出ていくのか? 次はどこに向かうのだ?」

「……………………東だ」






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