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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 王都
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第三十一話 デッドオアライブ


一夜明け、翌日。俺は目の下にクマをこしらえ、フラフラになりながらギルドに向かっていた。


結局、片付けが明け方近くまでかかってしまったうえ、いざ眠ろうと自分の部屋に帰ると穴だらけのベットでフランが丸まって眠っていた。

俺が片付けをしている最中にいつも通り潜り込んできたのだろう。

当然そんなベットで眠れるはずもなく、今に至る。


俺は襲撃者に襲われたことを警察に届けようと思っていたのだが、アズラさんに聞いた限り、この国には公式な警察機関というものは無く、基本的に城の兵士に起こったことを伝えるらしい。だが、今回の場合襲ってきたのが城の人間だったため、どうしようもなく、泣き寝入りをするしかないと言われた。そして、なぜかギルドに行くように勧められたのだ。



「でも、実際どうすりゃいいんだ? 昨日は運よく起きてたから良かったけど……俺は気配を察知して襲撃に気づくなんて芸当はできねぇしなぁ……」

『だからこそのギルドだろう? 護衛依頼を出して、ユーイチが眠っている間だけでも護ってもらえばいい……まあ、冒険者が護衛依頼を出すなんて普通はしないがな』


そうか、護衛をつけりゃ解決する問題だったのか……金にもかなり余裕があるし、なかなかいい案かもしれないな。


「…………しかし、やけに街の人たちから見られている気がするんだが……気のせいか?」


そう、道を歩いていて、なぜか行きかう人々が俺を凝視してくるのだ。特に屈強な冒険者らしき人たちに見つめられている気がする。…………俺にそっちの気は無いぞ!


『あ~、あれじゃねぇか? ユーイチが災害級をぶっ倒したってのが広がったとかだろ。本気ですごいことだからな、噂が広まってもおかしくない』

「えっ? つまり今の俺って有名人? やばいな、緊張してきた……」


見られていると分かると、人間色々なことを意識しだすものだ。服を整えたり、髪形を逐一チェックしたりと……もちろん俺も例外じゃない。歩きながら、朝食の残りかすが顔についていないかチェックをし始める。


『自意識過剰ってやつだな。敬われるってのよりも、恐ろしがられるって方が正しいと思うぞ? 災害級をぶっ倒すなんて人間業じゃねぇからな』


テネブラエの言うように、恐らく俺は街の人間に恐れられている。なぜなら、俺が目を合わせると、なぜか視線をそらし、逃げていく人間が大半だったからだ。……夢くらい見させてほしいものだ。




と、そんなこんなでギルドに到着。

ギルド内は、いつもよりも冒険者であふれかえっていた。この時間帯は人が少ないはずなのだが……


「やけに人が多いなぁ」

『何かいい任務の依頼でも来たんじゃねぇか? 掲示板の近くがごった返してるし』


確かに、掲示板付近がむさい男たちでひしめき合っている。遠目に掲示板を見て見るのだが、男たちが集まっている場所の依頼書は見てとれなかった。しかし、端っこにあった依頼書が目に入る。


「あれっ? 討伐任務が復活してる。あれってこないだは受けれなかったよな?」


宝石泥棒の依頼を受けた時は、当分無理そうだとアルテナが言っていたような……


「ん~、恐らくだが……魔物が減っていたのはグーラのせいじゃないのか? 食われて数が減ったり、隠れて見つけられなかったりで任務がダメだったんだろう。そんで、グーラが消えて、数が元に戻ったとか……」


なるほど。説得力がある。なにせ、冒険者をバリバリと食い散らかすやつだ。生態系を乱すことぐらい訳は無いだろう。


「っと、今日は任務を受けに来たんじゃなかったな」


今日は依頼をしにギルドまで来たのだった。依頼だと、アルテナに頼めばいいんだっけ?



「おっす。久しぶり、アルテナ」


元気よく挨拶をする。そういえばアルテナと会うのは四日ぶりだったな。


「え、…………あっ!! ユーイ……チさん……」


ん? なんか歯切れの悪い返しだなぁ……風邪か?

俺のあいさつに、なぜか縮こまり、落ち着かない様子であたりをキョロキョロと見渡すアルテナ。

そのしぐさを首をかしげて見ていると、後ろの方から冒険者の話声が聞こえてきた。


「おい……あいつって……」

「もしかして例の……」

「こないだの森の件か……っ!」


端々しか聞き取れなかったが、多分俺が災害級を倒したことが冒険者の内でも広まっているのだろう。はいはい、化け物じみててサーセン。


「んで、アルテナ。今日は依頼を…………」


ガシッ!


アルテナに護衛任務の依頼を頼もうと思った矢先、誰かが俺の方を力よく掴んだ。


「ん?」


見て見ると、俺よりも一回りでかい男……あ~、こいつってこないだからんできたチンピラじゃねぇか。性懲りもなく……


「なんだ? またブッ飛ばされ…………っ!」

「これ、お前だろう?」


俺の言葉を遮るように、チンピラが一枚の紙を向けてきた。

いや、近すぎてよく見え…………ん?


「ちょっと貸せ!」


チンピラから紙をひったくり、よく見てみると、その紙は依頼書だった。それも書いてあったのは、



手配書


対象・ユーイチ=サヤマ

特徴・黒い髪に黒の瞳、全身黒の装備

報酬・白金貨3枚

容疑・アガルの森での冒険者二十六名の(・・・・・・・・)殺害疑惑(・・・・)

生死を問わず


「はぁっ!?」


冒険者の殺害疑惑(・・・・)? 災害級が出たんだぞ? どう考えてもそれに襲われたに決まっているだろう! なんで俺が……


「まさかお前がこんな極悪人だったとはなぁ……野郎ども! ぶっ殺せ!!」


チンピラの怒号に、ギルド内にいたすべての冒険者が一斉に襲いかかってきた。



「えええぇぇっ!!?」


身に覚えがございません!!!





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