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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 王都
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第二十九話 まためんどくさくなってきた

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私のつたない文章を応援してくださってありがとうございます。

これからも文章能力向上に努め、投稿させていただきます。


「面倒くさいのでお断りします」


この言葉に、当然と言えば当然だがこの場の空気が凍りついた。


特に顕著なのが王様の隣に立っているサテレスだ。顔を真っ赤にさせ、拳を震わせている。


「き、貴様っ!! 陛下のお言葉をなんと心得……」

「ぶわはっはっはっはっは!! なんとここまで勇者の言うとおりだとはなぁ!!」


凍りついた側近たちや激怒しているサテレスと違い、意外にも王様が大爆笑していた。


「え、えーっと……どういうことでしょう?」


恐る恐る王様に聞いてみる。少なからず怒鳴られるやらなんやらされると思っていたのだが……


「いやなに、勇者にそなたのことを聞いたとき、そなたを誘ってみてはと尋ねたのだが、『彼はめんどくさいと言って断るでしょう』と言っていたのだ。まさにその通りであったなぁ、くっくっく」


護が? まあ、護とは長い付き合いだから俺の行動パターンを予測してもおかしくないか……しかし、そんな俺のマイナス思考を読まれるのは複雑だ。


「ふっ、一応なぜめんどくさいか聞いてもよいか? 我はかまわんのだが、我の側近たち……というよりサテレスが納得できないようなのでな」


王様の言葉通りサテレスは俺のことをこれでもかと睨みつけている。いや、本当に恐ろしい形相でにらんでいる。きれいな顔立ちでよくそんな顔が出来るなぁ……


「い、いえ……本当に大した理由はありませんよ? 正直戦争なんて全然現実味がないし、そんな所で役に立てるとは思いません。それに……」

「それに?」


護が「探すな」と言っていた……と言っても良いのだろうか。護が接触もせず、間接的に俺に伝えてきたことだ、何か重要な意味でも……まあ俺の頭じゃ思いつかないが、とにかく何かあるのだろう。言わない方がいいのかもしれない。


「いえ、まあ……護のやつは結構強いですから、あいつだけでもなんとかなるでしょうし」


もちろん心配ではあるが……


「貴様っ! そんな理由で陛下のお言葉を……」

「よいよ、サテレス。ユーイチ、楽しいひと時であった。もう下がってよいぞ」

「しかし陛下っ! 勇者といい、この者といい無礼にもほどがあります!!」

「この者たちは別の世界から来たのだ、多少常識が異なっていても仕方あるまい」


王様とサテレスの間で少しばかり意見の食い違いが起こっている。だが、立場上王様の方が優勢だ。


「えっと……結局、俺は帰って良いのでしょうか…」

「おお、すまなんだな。カール、街まで送ってやれ」

「はっ!」


その場に同席していたカールさんと一緒に、王室を出る。出る時も王様とサテレスが言い争っている姿が目についていた。














「しかし、ユーイチ様が異世界からいらしていたのは驚きでした!」


城からの帰り道、フランが目を輝かせながら俺を見つめている。


『異世界……ね、俺も長いこと生きてきたが、そんな所から来たやつを見たのは初めてだ』

「そ、それでそれで、異世界ってどんなところなんですか!? 見たこともない生き物とか、魔法とかがあるんですか?」


フランのさらに増した目の輝きがまぶしい。どんだけ食いつくんだ……


「いや、俺の世界に魔法なんて物は無かったよ。生き物も、こっちの世界のが小さくなった感じだし……ああ、魔物とか災害級みたいな化け物はさすがにいないか、それとフランみたいな猫耳もいなかった」

「魔法がないんですか? でもそれだと色々と不便じゃないですか?」

「ん~、魔法の代わりに科学ってのが発達しててな、はっきり言ってこの世界よりもはるかに便利な世界なんだよ。空を飛ぶ乗り物とか、遠くにあっという間に届くメール……いや、手紙なんかもある」


言っちゃなんだが、元の世界に比べ、今の世界は圧倒的に文明が劣っている。そんなところになんだかんだで順応出来ている俺はなかなかにすごいのかもしれないなぁ。


「は~、よくわからないけどすごい所なんですねぇ……それに獣人族(ビストロイド)がいないならやっぱり差別もないんでしょうか」

「いや、人種差別ってのはある所にはあるらしいぜ? 俺は見たこと無いけど……それにすごいっつっても、ここよりももっと面倒くさい所だ……学校に行かなきゃなんねぇし、ジジイの訓練につき合わされるし……」


ジジイの訓練なんてこちらの世界ならいざ知らず、向こうの世界じゃ何の意味もなかったしな。




そうこう話しているうちに食堂に着いた。


「ここでよかったんだよな? それじゃあ俺はこれで……」

「あっ、カールさん。その前に聞きたいことがあるんですけど…」


食堂に着き、役目を終え帰ろうとするカールさんを呼び止める。


「ん? なんだ?」

「あの、サテレス……さん? がやけに俺のことを睨んでいたんですけど……俺、なんかしました? 確かに王様の誘いは断りましたけど、王様も笑って許してくれましたし」


サテレスの態度ははっきり言って気持ちのよいものではなかった。怒っているというより侮蔑しているといった表情だったからな。


「んー、ああ……そうだな。サテレス様は王党派(Royalist)の筆頭だからあんな反応したんだろうなぁ」

王党派(Royalist)?」

「今現在、城には王族を絶対的な権力者として据え、王国の者だけで戦うことを良しとする王党派(Royalist)。陛下の下に着きながら、あらゆる手を使って国を護ろうとする騎士派(Odonterism)が存在するんだがな、その中でもサテレス様は狂信的な王党派(Royalist)だから勇者やユーイチが疎ましいんだよ」


派閥争いってやつか、どこにでもあるんだなぁ……日本の政治でも同じような感じだったし。


「でも王党派(Royalist)ってやつは王様絶対主義みたいなもんなんでしょう? だったら王様がいいって言ってるんだったら、それに従うんじゃないですか?」


王様は大爆笑で俺の行為を許してくれたし。


「いや、王党派(Royalist)はあくまで王族(・・)に対して忠誠を誓っているのであって、現国王自体にはそれほど忠誠心は無いんだよ。なにせ、陛下は根っからの騎士派(Odonterism)だからな…………っと、長話がすぎたな、とにかく王党派(Royalist)ってのは過激な奴らもいるから、あまり関わり合いにならないことだな」


そう言ってカールさんは去って行った。

王党派(Royalist)ねぇ、まためんどくさそうなのが出てきやがったなぁ……
















時は過ぎて深夜。


色々あったことを思い返しながら、俺の部屋の隅にある小椅子に座っている。


「面倒くさいなぁ……」


異世界に来てから十日足らず、色々なことが起き過ぎた。牛に追いかけられるわ、災害に殺されかけるわ、あげく王国の政治がどうのこうの。これ以上俺の頭を使わせないでほしいものだ。ただでさえ容量が少ないんだから。

結局、無い頭で考えてもしょうがないし、何か思いついても現状が解決するわけでもないので考えることはやめることにした。そもそも今のところ、俺の華麗なスルースキルで被害自体は受けていない。いくらなんでもこれ以上面倒事には巻き込まれないだろう。








ドゴオォォン!!



…………うん。俺が浅はかだったのかもしれないな。


何が起こったのか説明すると、部屋のドアが蹴破られ、黒マントを被った男?たちが部屋に突入した来たのだ。それも、有無を言わさず俺が寝ているはずのベットに剣が突き立てられていく。

結果、ベットは突き立てられた剣によって針山のような状態になった。


「おいおいおいおい!!」


目の前の状態を見て俺は驚愕した。俺が眠っている状態だったら確実に死んでるぞこの状況!!


「何っ!? 気づかれていたのか!?」

「くっ! さすがに災害級を殺っただけのことは……っ!」


男?たちも驚愕の声をあげる。どうやら俺が、襲撃に気づいていたと思っているようだ。



そんな男たちに俺はこう答えた。


「買いかぶりです!!!!」





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