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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 王都
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第二十六話 やっぱりご都合能力

グーラのイメージとしては、千と千尋の○隠しのカオナシ暴走バージョンを大きくした感じです。


グーラがフランたちに向かって突き進む。


「ま、待て!!」


グーラの後を追う。

何なんだこいつは……何を基準に獲物を追いかけているか分からない。視覚なのか聴覚なのか、あるいはその両方か……


巨体に似合わず、グーラは速かった。普通の人間では追い付けないような速度だ。しかし、意外なことにフランの足の方がグーラの速度を上回っていた。たしかフランは、エリスを抱えていたはずなのだが……薬草を運んでいた時の馬鹿力と同じように獣人族ビストロイドの特徴なのかもしれない。

ともかく、ある程度の距離を保ちながら、グーラとフランの距離が縮まらない。

速度的には俺の方が断然早かったため、難なくグーラに追い付き、剣をその巨体に振り下ろす。


ガギンッ!!


予想外に剣がはじかれた。しかもグネグネと動いているその体にもかかわらず、その感触は金属のようなものを切った時のものだった。しかもグーラは、効かなかったとはいえ剣をふるわれたにも関わらず気にもとめていないようにフランたちを追いかけ続ける。


「なっ………!」


巨体ゆえ効果は少ないにしろ、ひるむなり俺に気をそらすなりすると思っていた俺は、グーラの無反応を見て一瞬だが体から力が抜けてしまった。しかし、その一瞬に衝撃が俺の体を襲った。

意図的かどうかは分からないが、グーラの足?らしきものに引っ掛かり、転倒させられていた。


「くそっ!!」


あわてて体を起こすと、グーラの体から巨大な腕が生え、フランたちがいた地面をえぐる光景が目に入った。何とか腕には当たらなかったものの、地面をえぐった衝撃でフランたちは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられていた。

さらに、それに追い打ちをかけるようにグーラの腕がフランたちに向かう。


待て、ダメだっ! 届かないと分かっていても手が伸びる。フランが引き裂かれ、潰される光景が見に浮かぶ。

畜生……元の世界で武術を習っても、異世界に来て力がついても女の子一人救えないのか俺は……



「あああああああああーーーーーっ!!!」



思わず目をつむり、叫んだ。フランを失う悲しみか、自分の不甲斐なさへか……しかし、それは思わぬ効果を生みだした。


…………? 何も聞こえない。


地面をえぐる轟音も、フランたちの断末魔も、何も聞こえない。


恐る恐る目を開くと、グーラの腕がフランたちに伸びていたのだが、なぜかその腕が届いていなかった(・・・・・・・・)


よく見ると、フランたちの前に黒い煙が壁のように立っており、グーラの腕はその中へと突っ込まれていた。


空間術?


これは俺が先日習得した術だ。だとすれば出したのは俺なのか? 少し冷静になり分析すると、黒い煙はパッと消え去った。そう、グーラの腕と一緒に。


『こ、これは……っ』

テネブラエが何かに気づいたように声を上げる。



…………?


グーラが自分の無くなった腕を凝視する。一瞬何が起こったのか分からない様子だったが、腕から血のように流れ出た真っ黒の液体を見て暴れだした。


……っ!!……!……kjfw!!!


のたうち回り、体の形をグネグネと変形させる。傍にいたフランが呆然とグーラを見ている。


危ない!


「フラン! 離れろ!!」


大声で叫ぶ。ハッと我に返ったフランは、エリスを抱き直すと、その場から逃げた。

グーラの巨体がフランを襲うことは無かったが、俺が叫んだことにより、ターゲットが俺に変わったようで、目玉が俺を正面に捕らえる。


「あっ、やべっ!」


あわてて剣を構え直す。剣は効かなかったが、防御用としては使えるだろうとの判断だ。


『ユーイチ! さっきのアレ、もう一度出来るか?』

「ああ? さっきのは無意識で出しただけだ。何が起こったのかも……」

『なら俺が指示してやる。まずあいつの影に集中しろ!』


影に集中?


とりあえず突進してきたグーラをぎりぎりのところでかわすと、グーラの後ろ姿を凝視する。イグニスバイソンと戦った時のように、突進後は隙ができるはずだ。

だが、その予想は裏切られた。俺に突進した直後、背中であった場所に目玉が現れ、間髪いれずに再び突っ込んできた。グーラに前後ろの概念は存在しないのか!?


「なんだそりゃ!?」


辛くもそれをかわすと、また同じように、方向転換せずにグーラが突進してきた。


「集中っつったってどうすりゃいい!?」

『空間術を作るだけでいいから、一瞬でいい!』


一瞬でもきついんだが…………でも、あーくそっ! 最悪な方法を思いついちまった。


「死んじまったら怨むぞテネブラエ!」


グーラをかわした後、まず影には集中せず、距離を取るために全力で横っ跳び。

やはり間髪入れずに突っ込んでくるグーラだが、多少距離が生まれた。


『影に集中したら、アレの一部分を空間に入れるように想像して呪文を唱えろ!!』

「……開け(aperire)っ!」


グーラの前半分を煙で覆うように想像し、手をかざす。すると、想像した通りグーラの足元の影から煙が上がり、グーラを包み込んだ。

昨日はコップほどの大きさしか出せなかったのに、急激な成長だ。


『閉じろ!!』


間髪いれずにテネブラエが叫ぶ。


閉じろ(Close)!!」


俺が呪文を唱えると、やはり煙は何事もなかったのように消え、後に残ったのは後ろ半分だけ残ったグーラの姿だけだった。


その体の中央には、蒼く光る球体が埋まっており、その球体に集まるようにいまだ体がうごめいている。

だが、すぐに球体の光が消えうせ、グーラの体も動きを止めた。


「は、ははは……やった? 倒したのか?」

『まさか座標認識のズレを攻撃に使うなんて……()でもそんな使い方はしなかったぞ』


よくわからないがテネブラエが感心しているらしい。っと、それよりも……


「フラン!! ふ……らんは……」


フランの無事を確認しようとしたのだが、急にひどいめまいが起きた。

ああ…これって術の反動か……


目の前に駆け寄ってくるフランを目にしながら、俺は意識を手放した。





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