表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 王都
25/91

第二十四話 断末魔

少し残酷な描写が含まれます。

ご注意を




アガルの森


俺がここに来るのは二度目だ。

王都の北門から、目算でだが約三十分の距離。だが今回、全力で走ってきたため五分足らずで森に入ることができた。


だが、森に入ってからフランを闇雲に探しまわってみたものの、さっぱり見つからない。どころか冒険者や盗賊の人間さえ見つからない。

アガルの森はそれほど広い場所ではない。人が行動出来る範囲となると大体東京ドーム二個分といったところだ。しかも俺は強化された体で飛び回っているのだ、フランが見つからないにしても誰にも会わないっていうのはあり得るのか?



三十分ほどだろうか、森のほとんどを探し終わった俺は一つ可能性を考えた。

フランはすでに街に帰ったのではないだろうか。そうでなければそもそも森に来なかった可能性もある。

そう考えた俺は一度森を抜けることにした。

だが、森の中心部まで差し掛かったところでその可能性は崩れた。



「この女がどうなってもいいのか!!」


フランが盗賊たちに人質にされていた。しかし盗賊が武器にしているのは先のとがった枝だ。さすがに脱走するときには武器は持っていけなかったようだ。

盗賊たちと対峙しているのは恐らくは冒険者と思われる男が二人。二人とも剣の構えからして、アルテナが言っていたAランカーだろう。

そして俺は盗賊と冒険者の間に飛び込む形となっていた。


「あっ! あんた昨日の!?」


盗賊が俺を見て叫ぶ。昨日の手配対象となっていた女の子だ。


「ゆ、ユーイチ様!!」


フランが俺を見て叫ぶ。


「ちっ! 次から次へと!!」

「エリス! てめぇがもたもたしてるからだぞ!!」

「なっ! あ、あんたたちこそ人質なんかとるから足が遅くなるんだ! 離してやりなよ!」


盗賊たちが内輪もめをしている。どうやらエリスと呼ばれた女の子と他の三人は折り合いが悪いようだ。

いつもなら一生やってろとでもいうところだが、今はフランが人質になっているため、話をしている暇もない。

つまり


「お前ら、フランを離すか俺に殺されるか選べ」


俺は怒っているのだ。


フランは俺が一度救った。正直、それを恩着せがましく言うつもりはない。だが、一度救ったのならばその後の面倒も見るべきだ。これは児童養護施設のジジイから教え込まれた俺の行動原理だと自覚している。

奴隷から解放した直後は、フランのその後はフラン自身が決めるべきだと思っていた。もちろん、ジジイの教えに基づきサポートはするつもりだったが、結局、俺がフランに何をしようとも、その後を決めるのはフラン自身なのだ。

まあ、その時はこの世界の無知がたたって、男の甲斐性がなんだとアズラさんに突っ込まれたのだが……



結局何が言いたいのかというと…………俺が救ったやつを(・・・・・・・・)傷つけることは(・・・・・・・)許さない(・・・・)



実に利己的ではあるが、俺の性分なので仕方がない。



「ば、馬鹿かお前……人質を離すわけねぇだろうが!」


盗賊の言葉は勇ましいが、すさまじい形相でにらみ、テネブラエを向けてくる俺に対してビビっている様子だ。


「き、君! あまり盗賊を刺激しないほgs……!?」


なぜか盗賊とおなじく俺に気押されていた冒険者。その一人が、落ち着けと俺に話しかけたのだが、その言葉が途中で途切れた。

その場にいた全員の視線が冒険者に集まったが、そこに冒険者の姿は無い。二人いたはずの冒険者は一人になっていた。


「「「「「「「えっ?」」」」」」」


いまこの場にいる全員は同じ表情をしているだろう。そしてその表情はすぐにもう一つの異変に向けられた。


冒険者がいた空間のさらに向こう側、ただ単に森が続くはずだったその場所はなぜか他の場所と比べて暗くなっていた……いや、黒い壁に覆われていたのだ。


全員が呆然とする中、そのうちの一人、冒険者の表情だけが歪んだ。

原因はすぐに分かった。冒険者の腹から黒い棒状のものが突き出ている。そして、その棒状のものは黒い壁から生えていたのだ。


「な、なに……ごばぁ!」


疑問の声を口にしようとした冒険者は代わりに大量の血を吐きだした。


「何が……起きて……」


目の前の光景に俺は唖然とする。

人が死んだ(・・・・・)


元の世界では人の葬式ぐらいは体験している。だが、その時の死体は死に化粧が施され、きれいなものだった。

もちろん目の前のような血まみれの状態ではなかった。


「うっ…………、た、助げで……!」


生きている!

一目見て助かりそうな状態ではなかったのだが、冒険者はまだ生きていた。


冒険者からの精一杯の言葉に手を伸ばしかける……が、冒険者を助けることはできなかった。


黒い壁が口のようにぱっくりと開き、冒険者を引きずりこんだのだ。


「ひglkhがklhg:あkhが……っ!」


冒険者の断末魔が響き渡り、血しぶきが吹き上げる。肉片が飛び散り、冒険者の姿は消えた。




「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーっ!!!!」


フランの叫び声はこの場にいる全員の気持ちを代弁していた。







いきなりなんだ!! と思われるような残酷な展開。

あれ? こんなに残酷にするつもりはなかったのですが……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ