第十九話 決してめんどくさくなった訳ではない
探さないでください?
普通こういうのって、「確認したら~に来てください」とか「連絡してください」とかじゃないのか?
ま、ともかくこういう時の対応は……
「じゃ、探さなくてもいっか」
探さないでおく。
『え?』
テネブラエが疑問の声を上げる。
『探さなくてもいいのか? 故郷の友人なんだろ?』
「いや、探すなって言う奴を探してもなぁ…それに護は意味もなく冗談を言うタイプじゃないし、何か訳でもあるんだろう」
護は良いやつではあるが、気まじめ過ぎて冗談が通じにくいやつだ。このような冗談を言うとは思えない。
『う~ん、まあお前が良いならいいが……』
「というわけでアルテナ、人探しの依頼も必要なくなったから」
「あ、はい」
状況についてこれていないアルテナが返事をする。
さてと、急に暇になったな……あ、いや…そう言えば金が底をつき始めたんだったっけ。
「とりあえず、任務でも受けていくか」
「あっ、それですと、ユーイチさんは先日Cランクに昇格されましたので、Bランクまでの任務を受けることができます。Aランク以上のランクになりますと、そのランクと同じ冒険者ランクが必要になりますのでご了承ください」
「ああ、分かった。じゃあ、掲示板見てくるよ」
ふむ実は掲示板から任務を選ぶのって初めてだったりする。
えーっと……採取任務に取り立て任務、護衛任務に…………あれっ?
「アルテナ! なんか討伐任務が一つも無いんだけど!」
そう、ほかの任務は多々あるのだがなぜか討伐任務が一つたりとも存在しない。
「ああ、それなんですけど……なぜか最近、王都周辺に害獣や魔物の数が激減しているそうなんです。先日、ユーイチさんがイグニスバイソンを討伐する前から確認されていたことなんですが……依頼達成が困難になっていることから、当分討伐任務は受けられないと思います」
ふむ、牛を倒したときに狼も相当数倒したはずだけど……あれは運が良かっただけなのか?
「そうか……じゃあ、他のは~っと」
『おう、ユーイチ。その任務なんてどうだ? 他のよりも報酬は良いぞ』
テネブラエが言った任務は、捕縛任務と呼ばれる任務だった。
捕縛任務
最近街に横行する宝石泥棒を捕縛せよ。
対象・盗賊
特徴・女、緑色の髪、ローブを着用
報酬・金貨1枚
確かに、Bランクまでで金貨越えはこれだけだ。
「うん。これにするか。アルテナ、手続き頼む」
「はい。捕縛任務ですね」
アルテナは手慣れた様子で受注書にサインをしていく。
「こちらが受注書になります。がんばってください」
俺に受注書を渡すと笑顔で送り出してくれた。
「ともかく、まずは情報収集からだなぁ」
食堂に戻った俺は、フランに料理の注文をするとカウンターに腰を下ろした。
だが、その時、隣に座っていたお客さんの荷物をカウンターから落としてしまった。
「あっ、すいません」
「あらぁ~、気にしないでぇ」
荷物を拾い上げるとお客さんに手渡した。
その時気付いたのだが、そのお客さんがめっちゃ美人でした!
目を奪われるほどの豊満な胸! プルンとした唇にきれいな緑色の髪の毛!…………あれ?
何かに違和感を感じた俺は、先ほどもらった受注書にもう一度目を通す。
特徴・女、緑色の髪、ローブを着用
…………ちなみに目の前の女の特徴・女、緑色の髪、ローブ(マントかもしれないが差が分からない)着用
……いや、たまたま特徴が似ていただけかもしれないし、決めつけは良くないよな……うん。
「う~ん、この街にもあの宝石無かったなぁ~」
女が呟く。
「発見!!!」