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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 王都
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第十話 アガルの森で出会った萌え


アガルの森


モントゥ王国首都グロリアの北門から歩いておよそ三十分。

その中で俺は…………狼と戦っていた。


「ぬおおぉぉーーー!! 十八匹目ぇ!!」

『ユースケ! 左からもう三匹来るぞ!』


ああ、またかチクショウ!!

依頼は十頭で十分なのになんでこんなにいるんだよ!

狼を狩りに来て、数匹見つけて追いかけると、数十匹の狼の中に飛び込んでしまったでござる。

今思えば、あれは囮になってエサをおびき寄せていたのかもしれん。ここで言うところのエサとは勿論俺のことだ。

当然喰われてやる謂われは無いので、正当防衛の発動だ。


「あ~! あと何匹いるんだ!?」

『多分あと十匹はいるな』

「があぁーー!!」


俺は無心に剣を振った。

途中から周りに飛び散った狼の血やら内臓なんかで吐きそうになりながらも、俺は剣を振るった。

それからさらに三十分。何とかすべてのフィルウルフの討伐に成功。その数三十三匹。

フィルウルフは普通、十頭くらいで群れを作るそうで、俺が当たったのは規格外に大きな群れだったようだ。

最後の十匹を倒したかと思えば、森の奥から何やらボス級かと思われる体が大きく素早い狼が出て来た。

それを倒すと「ククク、奴は狼四天王の中でも最弱」と言っているような言っていないような表情で次々に強い狼が登場。

最後に出て来たキズ有りの奴をワンパンチでKOさせたあたりでようやく戦闘が終了した。


「つ、疲れた……」

『おう! ご苦労さん』


死闘は約一時間も続き、太陽が傾き始めている。

疲れるわけである。



『きゃぁぁぁぁーーーー』


戦いに疲れ、地面にへたっている俺の耳に女の子らしき悲鳴が聞こえてきた。


「ん?」


悲鳴が聞こえた方向を見てみると案の定女の子の悲鳴だった。しかも、フィルウルフの生き残りに襲われそうになっている。

木々の向こう側に女の子はいたが、その姿は俺にとって見覚えのあるものだった。

ぼろぼろの服、やせこけた頬、痛々しいあざに金髪の髪の毛。つまり、


「フラン!? なんでこんなとこに……っ!」


距離的に助けるのは間に合わない。

そう判断した俺は、とりあえずテネブラエを投げた。

刀身をむき出しにし、くるくると回転しながらテネブラエは空を舞った。


『おおおおぉぉぉぉ!?』


ギャンッ!!

悲鳴が聞こえた。

だがそれは、狼に襲われるフランの声ではなく、剣が突き刺さり絶命する祭に放ったフィルウルフの断末魔だった。

五十メートル近い遠投。両手剣で割と重いテネブラエを良く投げれたなと、自分自身で感心した。

と言うか、今考えれば一歩間違えば串刺しになっていたのはフランである。……次からはもう少し考えて行動しよう。


「大丈夫か?」


すぐさまフランの元に駆け寄る。

フィルウルフに突き刺さったテネブラエを抜くと、周囲を警戒した。

しかし、周囲にはもう獣の気配はない。さっきのが最後の一匹だったのだろう。

安心して鞘にテネブラエを戻そうとすると、抗議の声がかかった。


『こらぁユーイチ! なに人のこと投げてんだよ! 剣は切るものだ! 投げるもんじゃねぇ!!』

「しょうがねぇだろ! 緊急事態だったんだから!!」

『それにしたって止めろ!! あれ結構怖いんだぞ!?』

「まあまあ。飛んでる時、結構かっこよかったぞ?」

『え、マジで? ど、どのくらいかっこよかった?』

「えーっと、水面に浮かんで必死に水かいてるアヒルぐらいかっこよかったぞ」

『お、おお……それはかっこいいのか?』


俺とテネブラエが言い争う。

遠目から見ると俺が一人で騒いでいるように見えるシュールな画だろう。

見る人が見れば精神病院行きかもしれない。


「……あっ、あのっ!」

「ん?」

『あ?』

「た、助けていただいてありがとうございました!」


深々と頭を下げるフラン。

礼儀正しく腰を折ってもらって何だが、頭を下げられると言うのはあんまりいい気分じゃないなぁ。

そりゃ人によっては優越感に浸れるやつもいるんだろうが、俺はそう言うタイプの人間じゃないらしい。

と言うわけで、できればフランには頭をあげてもらいたい。


「ああ、気にしなくてもいいよ」

「いえ! ぜひ何かお礼をさせてください」


フランは頭を下げたまま、懇願するように俺に頼んだ。

何を必死にしているのか解らんが、その顔はあまり見たことのない本気で頼みこんでいる人間の表情だった。

半ば、お礼をさせることを強要しているかのようだ。立場が逆ではなかろうか。


「う~ん、って言ってもなぁ……」

『それならフィルウルフの牙を取るの、手伝ってもらえばいいんじゃないか? あの数だと時間かかるだろ』

「ああ、じゃあそれで」


他に思いつかないし、適当に答えた。

女の子には重労働かもしれないがフランは快く引き受けてくれた。


「は、はい! 一生懸命お手伝いします」


ようやく顔を上げ、笑顔を俺に向けるフラン。

うん。女の子の笑顔はきれいだなぁ。頭の上の耳も元気よく動いてるし。

……………………頭の上の耳?

そう、フレンの頭の上には耳がついていた。もちろん人間のそれとは違い、毛に覆われた、いわゆる猫耳と言うやつだ。

それがピコピコと頭の上で動いている。

猫耳メイドカフェとかのコスプレで見るような簡単な作りの猫耳じゃない。

どう見ても本物。

猫についている猫耳である。

つまり、金髪猫耳少女。



これは…………あれだな、


「猫耳萌えっ!!」



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