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理不尽な神様と勇者な親友  作者: 廉志
第一章 王都
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プロローグ(改定済み・設定イラスト)

現在、物語全体の改訂作業中です

サブタイトルの横に(改定済み)と書かれた話までが改訂作業終了している状態です

改定に合わせ、話の辻褄の整理も行うため、(改定済み)と書かれていない話は、それまでの話とつながっていない場合がありますのでご注意ください

くわしい経過報告は、最新話の『更新停止について』を参照してください


挿絵(By みてみん)


「あー、美少女でも降ってこねぇかなー」

「空から女の子が落ちてきたらニュースに出れそうだね、雄一」


空を仰ぎ見ながらため息をつく

現在高校二年生、17歳。高校生活も折り返し、そろそろ彼女の一人でもできないかなぁと焦りだす時期

雪降る中、俺こと佐山雄一は白い息を吐きながら家路についている


「ふっ、お前にはわからん悩みだろうさ。あー、イケメンという種族は滅べばいいのになー。そう思わないか、護?」

「そんな笑ってない目で言われたら怖いから止めてくれよ」


隣りにいる男は我が友人。同じく17歳の同級生。そして俺とは違い大変なイケメン男子高校生、音竹護

顔面偏差値だけではなく、頭の偏差値にも大変な差のあるこの男は女に飢えたことなどないのだろう。大変な余裕である


「僕だって彼女いないんだけどなぁ」

「護、彼女がいないことと、彼女ができないことは同じじゃないんだよ」

「雄一……さっきから目がマジじゃないか」


そりゃマジもマジ、大真面目だ


「そんなことばっかり言ってると、帰ってから先生のげんこつが飛んで来るよ?」

「ジジイのげんこつは理由なく飛んでくるから今更だろ。俺のアタマが悪いのはジジイのげんこつを毎日浴びているからに違いない」

「叱られるようなことばかりしてるからだと思うけどね」


俺と護から”先生”とか”ジジイ”とか呼ばれる人物がいる

名を佐山玄道。俺達が所属する児童養護施設の院長である

俺と護はとある理由からその施設に厄介になっているのだが、そこではジジイによる『古武術指導』というわけのわからないカリキュラムが組まれている

現代において、空手だとか、柔道だとか。ほとんどスポーツ化している武道が多い中、”実践主義””サポーターは邪道”などという頭のイカれた主義を貫く武術である


「毎日毎日、アルバイトと称してこき使ってくれやがって。そもそも一介の高校生が武術指導のアルバイトってどういうことだよ。人手が足りないならあんなもん止めちまえばいいのに」


通常、うちの児童養護施設は高校生になると独り立ちする人間が多い。働ける年齢の人間を置いておく余裕が無いのだからまあ当然だろう

しかし、俺と護はアルバイトで学費の一部を捻出することを条件に、衣食住を施設で過ごしていた

護は外家庭教師のアルバイト。俺は施設で炊事洗濯雑用ついでに武術指導と、要はジジイの小間使いのようなことをしているのである


「それだけ信頼されてるってことだろう? ほとんど師範代と同じ扱いを受けてるじゃないか。すごいことだと思うけどね」

「お前だって俺と変わらない扱いじゃねぇか。たまにしか顔出さないくせに同じ扱いってのは不平等を感じるぞ」

「だから君のほうがよほど強いよ。施設の子たちにも好かれてるしね」

「最近中学に入った女のガキどもが、お前の話しかしないのは殺意が湧くがな」

「おっと、藪蛇だったか」


そそくさと足を速める護を睨みつけた

くそう、なんでこんな奴が女にモテるんだ。ただ顔が良くて勉強ができて、スポーツ万能で武術もできて、人柄が良くて友人たちからの信頼も厚いだけじゃないか

…………あ、こりゃモテるわ。むしろ良いところを羅列しすぎて、俺が惚れてしまいそうだ



「あー! 護兄ぃ! やっほー!」



唐突に耳に届く女の声がした

声をした方を見てみると、小柄でショートカットの、大変健康そうなスポーツ女子がブンブンと手を振っていた

ランニングの最中だったのか、汗だくの状態のまま俺たちのもとへ駆け寄った


「よう静香。部活中か?」

「……あれ? 雄兄ぃ居たの? 気が付かなかった」

「扱いひどくね?」


俺への扱いがぞんざいで大変不満であるが、この少女、名を工藤静香と言う。俺達と同じ施設に住む中学生だ


「おかえり、静香。今度のソフトボール大会への練習は順調かい?」

「うん! 今度こそピッチャーでスタメン取るからさ、今度の大会は見に来てよ! あ、雄兄ぃも来ていいよ?」

「だから俺の扱い……まあいいや。ほれ、まだ練習中なんだろ? とっととランニングに戻れ。しっし!」

「そっちの扱いだってひどいじゃん……っと、たしかにもう戻らないと。待ってもらってるんだった。それじゃあ行くね。晩御飯までには戻るから、ちゃんと残しておいてよ」

「はいはい。ちなみに今日の晩飯は俺得性クリームシチューだ。喜ぶがよい」

「やったぁ!たくさん食べるから多めに作っておいてね! じゃ! 護兄ぃ! 雄兄ぃ!」


ちょこまかと動いて感情豊か。小動物みたいなやつだなぁ

ランニング途中で体力も減っているだろうに、そんな様子も見せず飛び跳ねながら静香はこの場を後にした


「……懐かれてるね」

「お前がな……さて、晩飯の買い出し行かないとな」

「うん。荷物持ち手伝うよ」


こういったサラリと吐く気遣いが、この男をイケメン足らしめているのかもしれない

財布の中身を確認しておこう。そう思い立って財布を開いた

残高312円也

…………いかん、金を引き下ろしに行かないと何も買えないわ


「ぶっ?」


財布を除きながら歩いていると、護の背中にぶつかった


「おい、何止まって…………どこ見てんだ?」

「雄一。道路の真ん中に……ドアがある」


何を言ってるんだこいつは

護体を押しのけて、彼が指差す方向を見た

そこにはいつもの通学路が見えるだけで、ドアなんてものは存在しなかった。そもそも道路の真ん中にドアがあるって状況って何さ。業者さんがトラックから落っことしたとか?


「そんなものはない」

「え? だってあんなにはっきり……ほらここ! ここにあるんだって!」


手をかざしてドアの存在をアピールする護には悪いが、俺にはそんなものは見えない


「護……あなた疲れてるのよ。家庭教師のバイト、そんなに辛かったのか?」

「これが見えないなんて、そっちのほうがどうかして…………ん?」

「どうした?」

「ドアノブから手が離れない」


護がパントマイムに目覚めたらしい

ドアノブを持ってガチャガチャと上下に揺らす……ように見える。いつの間にそんなかくし芸を習得したのだろうか


「お前は頭が良いのに、ギャグセンスはないんだな」

「ギャグじゃな……いや、とにかく手を引っ張ってくれないか。ホント手が離れないんだ」

「ふざけてないでとっとと買い物行くぞ。まあその前に金を下ろさな…………っ!? なんだ!?」


差し出してきた手を握り、この茶番を終わらせようと引っ張った瞬間


俺にもドアが見えた


真っ白でなんの特徴もないドア。ドアノブは金色で、たしかに護はそれを握っていた

そして、驚きのけぞったとき、唐突にそのドアは開いた


「な、なんだ!?」

「す、吸い込まれるっ!?」


ドアから目に見えない力で吸い込まれる感覚が俺を襲った

手を握っていた護も同じようで、思いっきり踏ん張るも奮闘むなしくその足は離れた

体が宙に浮き、明らかに重力を無視した方向へと体が持っていかれる

守るの体がドアの中へと収まり、俺もそれの後に続いた


「こなくそ!!」


もちろん俺は抵抗を見せる

ドアの縁をつかむことに成功し、もう片方の手で護引っ張り上げる


「うおぉ! 負けるかーっ!! ファイトー! いっぱ…………あ」

「あ」


…………手、滑っちゃった


「「ああああああああああああああああああああああああ!!」」


俺と護、両者の叫び声は近所中に響いて……掻き消えた


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