9 結末
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「ふぁ……はぁ……あまり寝れなかったな……」
どう謝ろうかと考えて全然眠れなかった。緊張してってのもあるんだけどさ……。
一階に降りて毎度おなじみのパンを食べながら言った。
「母さん、佑稀は?また朝練?」
驚いた顔た顔をしている。……いや、まぁそりゃ驚くか。あの事件以来、兄弟の仲が悪くなったことは両親とも知っている。
「佑稀ならいつも通り部活よ。珍しいわね。力が佑稀の事聞くの」
「あぁ、まぁ気になっただけだよ」
パンを食べ終えコーヒーでぐっと飲み干し、支度して家を出た。
歩いていると駅の前で佳奈の姿が見えた。
「おっす。佳奈」
「おはよ、力也君」
……うん、寝てないな。佳奈。
「佳奈さ~ん?目が真っ赤なんですが?」
「昨夜ちょっとipodに音楽を入れててね遅くなっちゃった」
……デジャブってやつ?……うん、俺が言った台詞だよね。
「はぁ……佳奈も緊張して眠れなかったのか」
「っう……や、やっぱり緊張するよ!ねえ、明日にしない?!」
「駄目だっての」
そう言い額を小突いた。
「痛っ……もう……分かってるよ」
まだ緊張した面持ちだったが俺にはどうすることもできない。……俺も緊張してるのにそんな余裕ねぇーよ……。
二人の会話はほとんどなく、ため息ばかりしていると学校に着いた。
「佳奈、俺教室まで付いていくから」
「え?な、なんで!?逃げないように見張りのつもり!?なんで分かったの!?まさかこれが愛の力!?」
いつもの佳奈じゃない……何この変なテンション。てか、逃げるつもりだったの?!ここまできて!?
「……うん、愛の力だよ。んで分かったか?」
「う……うん」
力なく頷いた。
佳奈は鞄を置いたあとこちらに戻ってきた。
「ふう、よし!行くぞ」
佳奈も隣で深呼吸を繰り返してる。
「よし、行こう」
俺は佳奈に三階で待っててくれと言い残し教室に向かった。
すぐに教室に行き、鞄を置いて綾瀬の机の前に立った。
「綾瀬さん、ちょっと来てくれ」
少し複雑な顔で言った。
「ん、何?昨日のこと?それならもう気にしてないよ!」
「それじゃ、俺が納得いかない。ちゃんと謝らせてくれ」
「本当にもう良いんだけどな~……」
早くしてくれ。……佳奈が緊張で逃げ出してしまう……。
「綾瀬さん、俺についてきてくれ」
あ、これじゃまるで……
「えー!それじゃまるで告は-」
急いで口を塞いだ。
「んー!んんー!分かた!分かったから。付いてけば良いんでしょ!」
色々と思い出深い人気のない三階にやってきた。
綾瀬さんはすぐに佳奈に気が付いた。
「古城さん……」
「綾瀬、今日は言いたいことがあるの」
綾瀬さんは黙っている。
「私、力也君と付き合ってるの」
「知ってるよ?そんな事。おめでとう!」
え……なんで笑ってんだ。綾瀬さんは予想外の反応を見せた。
「え、綾瀬さん……」
「綾瀬……?」
ふうっと息を吐き綾瀬さんは言った。
「もう力也君の事は吹っ切れた!そして、古城さんあなたとはもうライバルでもなんでもない!私は今大事な人ができたからね!だから-……許す!って……私もあの時は悪かったんだけど……ごめんね」
佳奈はポカーンとしていた。そして、俺もポカーンとしていた。
「え、うん、私のほうこそ本当にごめんなさい。今ではやりすぎたと反省してる」
「だからもう気にしてないって!これからは仲良くしていこ!たぶんこれからまた付き合い長いと思うし!」
?何言ってるんだ綾瀬さんは……。
綾瀬さんは振り向き俺に言った。
「それと力也!あなたは私の初恋相手『だった』んだから責任取ってよね」
責任……?
「責任って……?」
真顔で言ってきた。
「顔面一発で許してあげる」
……へ?あぁ、デジャブってやつね。
「……分-」
バコッっ!!
「っつぅぅ……あぁ、綾瀬さんってグーで殴るだね。俺、平手だと思ってたよ」
無茶苦茶痛い。昨日に続き今日も殴られるって俺ヤンキー漫画の登場人物みたい……。
綾瀬さんは笑顔で言った。
「それじゃ、二人ともまたね!」
去っていった。
佳奈と二人きりになった。
「俺……ヤンキーじゃなくて本当に良かったよ。たぶん、三日で死ぬよ」
「はは、あんな過激な事は漫画の中だけだよ」
笑いながら言った。……俺の頭の骨は結構ガチで持っていかれそうだったけどね。
「でも、釈然としないよね。なんか呆気なかったっていうか……」
「そうだね、でも綾瀬本当に振り切れた顔をしてたよ。本当に大事な人を見つけたんだね。私みたいに……」
佳奈は今ではもうすっかり第一印象とは違う。クールな子だと思ってたけどそうでもなく。本当に一途で可愛い……。最初会った時はこんな顔するなんて想像もできなかった。
「なんか、失礼な事考えてる?……私からも一発お見舞いされたいの……?」
怖い怖い怖い怖い。久しぶりに真顔で言われた。
「なんも考えてない!」
俺は即答して教室へ戻った。
そして、午前中の授業も終わり昼休みになった。
教科書を片付けている大輔に声をかけた。
「大輔、佳奈のところ行ってくるな」
すると大輔は慌てて言った。
「あー駄目駄目!、今日はこの教室で食え。古城さんも呼んで」
あ、もしかして……ふと声がかけられた。
「大輔、ちゃんと誘った?」
「あぁ、今誘ったとこ」
この二人もしかして……。
「お前等二人もしかして……?」
二人顔を合わせて口を揃えて言った。
『付き合ってる』
……言葉を無くした。
「大輔お前本当に告白したんだな」
照れくさそうに言った。
「あぁ、長い長い片思いが実ったよ」
横から声が飛んできた。
「大輔!恥ずかしい言い方すんな!力也、あなたに振られたから大輔に乗り換えた訳じゃないよ?!どちらかというと-」
大輔が口を塞いだ。
「バカヤロー!彼氏の前で昔好きだった男の事言うな!!」
その後少しだけ大輔の告白話を聞いた。話す機会があれば話そうと思う。うん。佳奈とかに話せるといいな。
「それじゃ、佳奈呼んでくるよ」
「おう、早く呼んでこい」
「私も久しぶりにいっぱい話したいし早く呼んできて~!」
俺は笑いながら佳奈を迎えに行った。
甘酸っぱい青春。俺はこの一年を絶対に忘れない。忘れるはずがない。楽しくて、恥ずかしくて、嬉しいことがいっぱいある青春時代の事を……あ……あと痛かったことも忘れないだろう。
ここまで読んでくださってありがとうございます!!
佳奈と力也のイチャイチャ話を書きたい(苦笑
指摘、アドバイスくださる方いつでも募集中です!誤字脱字、感想等もいつでも募集中です!