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7 友

「ごめん、付き合ってる。言おうと思ってたんだけど……タイミングがなかったんだ」


「なんで謝るの……?別に悪い事してないじゃん!良かったね!おめでとう。」

涙声で祝福してくれている綾瀬さん。俺は何か言わなければいけないと思った。


「……ごめん」

違うこんな言葉じゃないもっとちゃんとした事を言わなければいけない。そう思ったのに頭が回らない。

「だから謝るな!!私がみじめになるだけ!ていうか、なんでよ?なんで古城佳奈と……」

俺は黙って聞くしかなかった。

「なんかしゃべってよ、なんで黙るのよ。……私のほうが力也の事好きだよ。絶対幸せにするよ?今でも好きなんだよ?」

佳奈にもこんな事を言われた覚えがあるな。そうか……告白された状況と似ているんだ。泣いているところまで一緒だ。ただ違うのは、ここは人気のない三階ではなく……人気のある教室だということだ。

そのことに今気が付いたようで

「もう一回告白したら-……あ、っ!」

言いかけて走り出してしまった。俺は追うべきなのだろうか、それとも追わないほうが良いのか……佳奈もう少しだけ待っててくれ。

追ってなんて声をかけてやればいい?分からない。だが、追わないといけない、しっかりとけじめをつけなければいけないと思った。



だが、その行くを遮るように現れた奴がいた。部活に行ったんじゃなかったのか……?

「……大輔、悪い今急いでる話なら後でにしてくれ」

「お前、何綾瀬泣かしてんだよ。言えよ。なんでだよ!!」

大輔はキレていた。

「おい、お前等帰りやがれ!早く失せろ!」

教室に残っている奴等を追い出すようにキツイ言葉で言った。

そして誰もいなくなった。


「お前には関係ないだろ、そこどけ!」

「関係あんだよ!俺が一番大切な奴が泣いてるのに見過ごせるわけないだろうが!」

「っ!……お前他の女のことばっかり言ってたじゃねえーか。うそつくなよ」

「あいつとは小学生ん時から一緒だからな、関係が壊れるのが怖くて告白なんてしたことなかったけどよ」

「……」

黙って聞いている。

「あいつがお前に告白したのも知っている。その時はそれは仕方のないことだと思っていた。だが、お前はあいつを振った。それも許せる。だが、古城佳奈と綾瀬にどこに差がある?お前等、最近知り合ったばっかりじゃねぇか。どうゆうことなんだよ!?納得いかねぇぞ!!」

胸倉に掴みかかってきたそれを遮ることをせずに素直に掴ませた。

「……大輔お前が怒るのも今なら分かる。佳奈と出会えていなかったらこんな気持ちも分からなかっただろうな。付き合ったのは成り行きかも知れない、それでも俺が好きになったのは古城佳奈だけだ。今では佳奈の一途で純粋なところ、普段は少しクールでキツめだが俺の前では甘えてくれるところ他にももっといっぱいある。その一つ一つが大好きなんだ」

俺は正直に言葉を連ねて言った。


言い終えると大輔は胸倉を離した。


「……一発殴らせろ」

……へ?さすがに嫌なんだが。

「……分-」

言う前に拳を構えたので咄嗟にガードしようと腕を出す……だが間に合わない。

「いっ……っつぅ……まだ答えてなかったはずなんだけどな」

無茶苦茶痛い。軽くホントに死ねるって……。

「今の一発でチャラだ。……お前はあいつのところに行かなくていい。俺が行ってくる。……よくよく考えと俺にやっとチャンスが回ってきたってことだしな」

スポーツマンらしい爽やかな笑顔で言ってきた。

「……でもお前部活は?……やっぱり俺が行かないと解決にならないしな、俺が行-」

言い切る前に大輔が言った。

「あ~~……部活かしゃぁねぇな今日は休むことにするか、俺が行くって言ってんだろ。やっと巡ってきたチャンスを摘み取んなよ」

「……そっか、それじゃ大輔頼むな」

「そんな暗い顔すんな!もう怒ってねぇよ、また明日な」

と言うと、踵を返し階段を下りていった。



何もかもを考えるの億劫になり、誰もいない教室の自分の席に座りうな垂れていた。その時ケータイが震えた。


「新着メール四通か……はは」

苦笑しながらメールを一つずつ読んでいく。

『古城佳奈』

「今終わったよ。早く来てね!」

二通目

『古城佳奈』

「そっちはまだ終わってないの?」

三通目

『古城佳奈』

「早く来て!どこにいるの?」

四通目

『古城佳奈』

「メール返信してよ!どこにいるの!怒るよ!……私泣きそうだよ……」


はぁ……俺、彼氏失格だな。佳奈をまた不安にさせた。プロポーズはなんだったんだ。佳奈を安心させてやることもできないのか俺は……くそ!くそ!

涙が溢れてきた。

何泣いてんだよ、俺そんな事で許されると思ってんのか……!くそ……!

机に突っ伏している俺の頭が誰かにそっと抱かれた。……佳奈……こんな俺でも好きでいてくれるのだろうか。いやたぶん佳奈なら間違いなく俺を愛してくれるのだろう。俺はその優しさには甘えてはいけないと思っていたが。耐え切れなくなった。

顔を上げずに言った。

「佳奈……ごめんな。迎えに行けなくて」

「……本当だよ。私待ってたけど中々来ないから迎えに来ちゃったよ」

佳奈は頭を撫でてくれている。心地良い。

「俺さ、もしかしたらかなり泣き虫かもしれない。それでも佳奈は俺のこと好きか?」

これで最後だこんな事を聞くのは。佳奈に甘えていてはいけない。

「そうだね、力也君は泣き虫かもね、プロポーズの時も泣いてたし。でも私は力也君のことを一切嫌いにならない。逆にその泣き虫なところも好きになれる自信があるよ」

「……」

何も言えなかった俺は涙を流しながら必死に耐えていた。なにか言えば声が震えてしまうだろう。そんな姿は見せたくなかった。



十分が過ぎた。その頃には俺の涙も止まっていた。その間も佳奈はずっと頭を撫でていてくれた。

「そういえば、私が告白した時は逆だったよね。頭撫でてもらってはないけど」

「……そうだったな。頭撫でてやれば良かったな。かなり気持ちが落ち着くぞ」

「そっか、それは良かった。腕が疲れた甲斐があったよ」

「はは、ごめんな」

苦笑いして言うと佳奈は笑った。





「佳奈、前は聞けなかったこと聞いていいか?」

「……綾瀬のことだね。うん、良いよ」










俺は初めて自分の嫌な過去の事を話しても良いと思った。……これを聞いたら俺の過去を話そう。

はじめに戻れるなら戻りたいと何百回思ったか分からないあの過去のことを。











ここまで読んでくださった方ありがとうございました!



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