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3 理由

あれから三十分ほどの時間がたった。今では古城佳奈も涙を流してはいない。

今から教室に戻るわけにも行かないのでこの時間だけはここで過ごすことにした。保健室で寝てたとでも言えば大丈夫だろう。

と、その時。

「あっ、そうだメアド!メールアドレス教えて」

「あいよ」

ケータイを取り出し赤外線通信をする。

「やった……ずっと知りたかったアドレス」

「……なんで古城さんは俺なんかのことをそこまで好いてくれんの?」

これだけは聞いておきたかった。

「知らなかったでしょ?私、力也君と一緒な中学だったのよ」

驚いた。だが知らなくてもおかしいことではない。俺の中学は県内でもかなり人数の多い学校だったからだ。

「知らなかった。そうだったんだ。でもそれで?」

これでは理由になっていない。

「うん。私、友達に誘われてサッカー部の試合に初めて見に行ったのよ。そしたら力也君がいた」

「っ……あ、そうなんだ……」

俺は正直怖かった。あのサッカー部のことは思い出したくもない。

「そんな顔しないでよ。私はあなたと一緒だから」

「もしかして……バスケ部のこと?」

「うん、そりよりも私はその試合を見た時から力也君の事を好きになった。それはもう毎日考えるほど。一目惚れだったのよ」

好きになってからは俺の様子を見に来てもいたらしい、そして性格も大好きだと言った。

「力也君のサッカー部を辞めたことは色々と噂で聞いたことがあった。それでも想いは変わらなかった」

「俺のあんな噂を聞いても……?」

「うん、力也君からの話しか信じないことにしたの私はでも今はその真実は聞かない」

正直にありがたかった。話す気にはなれなかった。

「私も、部活をやっていたのよ、中学から高校一年生の後半まで」

……退部したことは綾瀬さんから聞いていた。

「綾瀬さんから聞いたよ、でもなんで?……っては俺も聞かないことにするよ」

俺は最後のほうは笑って言った。

彼女は本当に俺を好きでいてくれていることが本当に暖かく照れくさかった。

「俺、恋愛なんて興味なかったけど古城さんと出合って初めてこんな気持ち味わったよ」

「ふふっ、嬉しいっ。やっとこの想いが力也君に届いた」

微笑む顔を見て俺は抱きしめたいという衝動に駆られたがどうにか抑えた。

「よし、そろそろ時間だな。古城さん先にここから出て。一緒にいるところ見られたら何言われるか分からないしさ」

「私は逆に見られたいけどね~。なんてね流石に少し恥ずかしいかな」

キスまでしてきて恥ずかしいのか……まぁ、ちょうど良かったわけだけど……。

「冗談言ってる場合じゃないって…古城さ-」

またキスをしてきた。彼女はキス魔なのか……?だとすると俺はとてつもなく嬉しい……。

「っちゅ……今から古城さんは禁止。佳奈って呼んでよ」

「キス魔……?あ、違っ……えっと、恥ずかしいな……か、佳奈っ!」

恥ずかしくて名前のところを強く呼んでしまった。

「う、嬉しい。そんなにハッキリと……て、照れるじゃない……あ、キス魔は嫌い……?いやならあまりしないけど……?」

俺の彼女可愛すぎるだろ……もう抱きしめたい。この一時間でどれだけ俺の気持ちは変化してんだ。

でも、この変化は心地良い。

「いや、キス魔だと正直かなり嬉しい」

ハッキリ言いすぎだ……俺。

「う~~……っちゅ、きょ、今日はこれで最後だからねっ!」

「お、おう」

このラブラブイチャイチャしているのは本物の俺なのか?今更夢オチとかじゃないよな?






その後お互いの教室に戻った。

二限目から授業を受け。昼休みになった。

「力也!古城佳奈とは本当どんな関係なわけ?もう言い訳できねぇぞ」

一限目がいなかったことどんなにバカな大輔でも分かるので言い訳はできそうにない。

「彼女」

と短く告げた。恥ずかしいもんだな……。

「は……?」

固まった。ん?チャンスかこれはこの隙に違うところで昼飯食うか!?

よし、そうと決まれば、イスを引こうとしたところ、ガタッっと音がしたもちろん俺のイスからではない。大輔のイスだった。なぜに……立つ……。

「何言ってんだよ!意味わからん!!バカが!!!」

「声大きいっての、バカはお前だっての」

と、その時後ろから声がかけられた。

振り向くと、綾瀬さんだ。

「おー、綾瀬さんも一緒に昼飯食べる?大輔の席、今空いたみたいだけど」

「空いてねぇよ!」という大輔を言葉を無視し綾瀬さんは言った。

「うん?お、本当だ空いたっぽいね!それじゃあ、この席で一緒に食べようかなっ」

「どうぞどうぞ」

「良くねぇよ!綾瀬お前女子の友達いないのかよ!?」

コイツなんてこと聞きやがる……まぁ、気になるが……。

「いるよ!少なくてもバカな大輔よりはいるよ!バカ!」

バカって呼ばれてる。

「う……なんで俺が友達少ないの知ってんだ……?」

あぁ、負けた。バカって言われたことも突っ込めないとは。


綾瀬さんと大輔とで楽しい昼休みを過ごした。

てか……俺も友達少ないんだよな。大輔って部活やってて友達少ないのには負けるが……泣けてくる。


綾瀬さんには、古城さん……佳奈の事を話しておいたほうが良いかとも思ったが今はやめておいた。大輔も忘れていることだし、蒸し返したくはなかった。それよりも、その話を聞いて綾瀬さんはどんな顔をするのだろうか……付き合ったって報告するのはもしかすると残酷なことなのかもしれない……。





午後に授業も受け終わりすぐに放課後となった。大輔も部活なので俺はすぐに帰宅しようとも考えたがすぐに佳奈の事を思い出し、ケータイを開いた。



「な、なんだこれ……メール四十二件……着信履歴十五件……」

…………え?なにこれ怖いんですけど、何?ハッキングってやつ?いまいちわからんけど、もしかして俺のメアドとかネット上で流れてるのかな?あー……どこに電話すれば良いんだろ、警察かなやっぱ。

泣きそうになりながらもどんなメールが着ているのか気になり開いてみると。

『古城佳奈』

「どうしたの?なんで返信しないのよっ!!浮気!?早くも!?なんでっ!?」

この一件を見てまたケータイを閉じた。俺の彼女はどうやら相当怖い。あーこれはサプライズドッキリってやつかな。それだとちょっと怖すぎるかな。最初なんだからもっとお手柔らかにしてほしいなぁ……

俺このメールあと四十一件も見たら本当心臓飛び出しちゃうなあ~一日一件ずつ見ていくかな。うん、決まり。


そう決断して教室でブルブル震えていると「ドンッ!」という物音がした。教室に残っている皆が一斉に音のしたほうを振り向く。

「ちょっと!なんで無視してんのよっ!バカ力也君っっ!!」

あー……俺もバカって言われた早く言い返さなきゃ大輔と同じになってしまう。

「おい、バカってひど-」

「浮気しないでよっ!!バカ!」

してねぇよ……てかバカ言うな……。

周りでざわざわと声が聞こえてきた「あの子だれ?白泉の彼女?」とか言ってやがる……。

「ちょっと待てこっち来い!」

無理やり腕を取って学校の外に連れ出した。



連れ出す間もずっと大声で喚いていたが俺は無視し、近くの公園まで連れてきた。

「すまん、普段学校であまりケータイ見ないからさ、メール気がつかなかった」

「……本当?無視とかじゃない?」

「本当。無視じゃない」

「そう、それなら良かった。私嫉妬深いの……しかもかなり一途……自分で言うのもなんだけど……」

うん、本当にいやってくらいに分かった。嫉妬とかって無茶苦茶ホラーってことが分かったよ。

「ははっ!本当に嬉しいなあ、暖かくて居心地がいい。この場所は俺だけのものなんだよな?」

照れ隠しに笑いを入れながら尋ねてみる。恥ずかしい台詞だな。ホント……。

「うんっ、力也君以外誰にもこの場所は譲らない私の隣は力也君の特等席っ」

満点の笑顔でそんな事を言ってくれた。はぁ~この一日は俺の歴史を変えた一日になった。

「そういえばなんで昼休みは来なかったんだ?」

顔を少し赤らめながら言った。

「だ、だって!は、恥ずかしいじゃない。教室にお昼ご飯食べに行ったら皆にバレちゃうでしょ?」

あーなるほど……そこは恥ずかしいんだ。なんとなく分かってきた気がするぞ。






少しキツめで一途な女、古城佳奈。恋愛経験ゼロ基本無気力な男、白泉力也。

この二人は今日をもって恋人同士となった。

だが、白泉力也の口からはまだ一度も「好き」という言葉は出ていない。



今回も楽しく書けました。

好きな理由は一目惚れとの事ですが……やはり個人的には一目惚れが一番長く続く形だと思っています。


ここまで読んでくださってありがとうございました!



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