14 目標
公園を取り巻く雑踏はもう俺の耳には届かなかった。静かに佳奈に別れようと告げだ。
佳奈な泣きじゃくっていた、目は真っ赤で髪も乱れていく。ずっと小声で何か囁いている。……学校での冷静な佳奈の姿はそこには一切なく。
「……佳奈、送っていくよ。帰ろう」
「……嫌……私、次は力也君の言うことを絶対に聞こうと思ってたのに……それだけは頷けないよ……」
「佳奈……俺には佳奈の隣を歩いていく資格なんて無くなったんだ。それと……これ以上佳奈が泣く姿を見たくないんだ。ごめんな……逃げ出して」
「……そんな事ない。力也君しか私の隣を歩ける人はいないよ。……お願いだからそんな事言わないで……」
「……佳奈、最後のお願いだ。帰ろう」
「…………戻りたい。あの時に……そしたら私絶対に力也君の言う事を聞いていたよ……」
俺は佳奈にあぁと肯定した。そして告げた。
「そうだな、俺も戻りたい……でも佳奈、絶対に戻る事はできないんだ」
佳奈は答えない。俺は最後にもう一度を言った。
「……佳奈帰ろう」
佳奈は涙を流しながら立ち上がった。
駅の中へ涙を流したまま入れる事は抵抗があったが、佳奈の涙は止まらなかった。
「佳奈それじゃ……元気でな」
「……また学校で会えるよ。これからだって何もか-」
俺は佳奈の言葉を遮った。
「学校で会っても、しゃべりかけない。これからはお互いの道を進むんだ。俺なんかに構うな佳奈」
「……嫌だよ力也君、力也君は私の-」
電車の音にかき消され、そこからは聞き取れなかった。
「佳奈、電車きた。それじゃ俺行くな」
俺は踵を返し振り返らずに駅を出て行った。
家に帰り気まずい夕食を摂り、風呂に入り。……俺はベッドの上で涙を零した。この一年はまだ続くのだろうか、どれだけ俺は泣けば許してくれるのだろうか。そんな事を考えてるうちに意識は遠くなっていった。
朝起きて一階に向かった。
いつものように佑稀の姿はなかった。情けない話しだが姿が見えないのが分かって少しほっとした自分に腹を立てた。……そんなんだから佳奈を……。
朝食を食べ終えた後ゆっくりと学校に向かう準備をした。担任からもらった反省文の記入欄をすべて埋め親の捺印ももらい鞄にしまった。
「母さんそれじゃ、学校行ってくる」
「いってらっしゃい、頑張ってね」
「はは、頑張ることはないと思うけど……」
苦笑しながら言った俺に母さんは笑いながら見送ってくれた。
学校に着き真っ先に指導部へと向かった。
髪をオールバックにセットしている指導部長からお説教を受けた。理由を知っていたのか説教は思ったほど長くはなかった。……分かっていたことを改めてハッキリと言われた。
「白泉、分かっていると思うが……大学に行くにしても、就職にしても随分と不利になる。理由があったとしても警察のお世話までなったんだ。そんなに簡単にいくことではないぞ」
「はい。分かってます」
「そうか……白泉お前は三日間自宅謹慎だ。良く頭を冷やして、今後の進路をゆっくりと考えろ。金曜日の終業式には顔を出せ」
反省文を提出し、失礼します。と声をかけ指導部を後にした。
玄関に行くと、大輔が待っていた。
「……大輔、授業始まってんぞ。早くいけよ」
「……お前さ正直に言うけど……かなりむかつく」
「……あぁ、俺も最近気づいたよ」
「力也お前、古城さんの事振ったんだってな。彼女泣いてたよ」
「……そっか。で?どうした。俺は佳奈から逃げ出した。もう関係ないだろ?」
「……お前もし、俺が古城さんと付き合いだしたらどうするよ普通に過ごせる自身あるか!?」
「……っ!」
下唇を強く噛んだ。
「なんとか言えよ、古城さんの隣に俺がいるんだよ!想像しろよ!どうだ!?正気でいられるかお前は!?」
「…………なんだお前、俺に喧嘩売りにきたのか……?それならもっとましな喧嘩な売り方-」
「そんな事聞いてねぇんだよ。どうなんだよ!正気でいられるのか!?イラつかないのか!!」
「…………イラつかねぇ訳ないだろ。正気でいられる自信もねぇよ……」
「……お前はまだ古城さんを幸せにできんだよ。なんで自分からその権利を捨てちまうのかが俺には理解できねぇよ。そした-」
「……そうだな。俺は佳奈の事が今でも大好きで……あいつの隣を歩くのは俺だけしかいない……でもまだ佳奈のところには会いにいけない。その権利は俺にはまだない」
「何言ってんだよ、お前。古城さんは一秒でも早くお前と会いたいんだよ。話したいんだよ!」
「駄目だ。……自分への罰だ。ケジメをつけてからじゃないと佳奈に会わせる顔がない。……大輔ありがとな。お前が友達で本当に良かったって思ってる」
大輔は、頑張って来いと言って俺の肩を殴った。
「……地味に痛いんだけど」
「はは、闘魂注入だ。野球部流のな!」
「……うそつくなよな、エースの肩を殴るなんて事する野球部があったら、その野球部は甲子園なんか目指してねぇよ!」
最後に大輔は、「早く過去の事なんて忘れちまえ!」と笑いながら言われ、見送られた。
……大輔に過去の事を話したことはない。だが、大輔は知っていた。噂などで知ったのだろう。それでもこれまで一度も過去を詮索することもなく俺に普段通りに話しかけてきてくれた。……佳奈といい大輔といいなんであんな噂を聞いてまで俺にしゃべりかけてきてくれるんだろうな……。俺は涙を堪えながら帰路についた。
大輔のおかげでまた目標を見つける事ができた。
過去とのケジメをつけ、佳奈に次は自分から……告白する。これが俺の新しい目標。
こっちの路線に持っていってよかったのか!?と正直思っていますが……。
どうにか書き終えたいと思いますので宜しくお願い致します。
ここまで読んでくださった方本当にありがとうございました!
新連載も新しくやらせて頂いたのでもしよろしければ「Happy dreamへダイブ!」も読んでみてください!こちらも二話目が気に入れば好きになってくださるかと思います……。