09 潜入準備 - エルフ少女の普段着一式
ディバイン・セイバー完結記念、クリスマスプレゼント企画!
短期集中連載でお送りしております。
午前中に行われた少年の準備は、半分達成、半分失敗といったところか。
己と共に暮らす奴隷秘書の衣装は借り受けられなかったが、潜入後の活動のために怪盗の衣装は入手した。
さらわれるための衣服を他に用意しなければいけないが、そちらについては当てがあるのだ。
ただちょっと、変態の相手がめんどくさいだけで。
そんなわけで、めんどくさい変態の相手をするため、今は教えられた宿の一室、アエリエの部屋に訪れて準備中である。
「イナリナのパンツを嗅いだだけでは飽き足らず、今度は衣類一式を嗅ぎたいだとぉぉ!?」
「嗅ぎたい、ではないです。借りたいです」
「だが、借りたら嗅ぐだろう、同じことではないか!」
「同じじゃねーよ、嗅がねーよ!」
変態の相手は、実にめんどくさい。
頭の中で美貌の店長が『幼女の衣類でもイケるのだよ、君のストライクゾーンは火口のように広い!』と叫んだ気がした。
非常に面倒で無駄なやりとりがありましたが、最終的に救出のために必要ということでアエリエが涙を流しながら折れました。
というかこれ、あなたの妹さんの服ですよね? なぜあなたがそこまで号泣するのかが分かりません。
少年は、潜入に持ち込むべき道具一式を鞄に入れて身に着けた。
さらに、渋々ながら一時的に渡されたアエリエの宝剣も腰に下げる。
「いいか、持たせるだけだぞ、あげるわけでも貸すわけでもないからな!」
「分かってるよ。丸腰で潜入させられないからぼくが運ぶだけだからね」
基本的な仕事スタイルである動きやすく脱ぎやすい服装に、要所にプロテクターのついた対刃ジャケット、自分用のショートソードとアエリエの宝剣。
腕輪の衣装スロットの節約のため、鞄の中に荷物として2点の変身用『衣装』を入れれば準備OKだ。
「ここに置いたイナリナの服はどうするのだ?」
「これは、こっちにしまうんだよ」
少年は左腕につけている腕輪をかざす。
腕輪には親指の爪くらいの大きさの丸い宝石が3つと、それらに支えられるようなデザインで大きなひし形の宝石が1つはめられている。
右手で腕輪の丸い石に触れ、左手でイナリナの服の上に手を乗せた。
「クローゼット、イン」
少年の言葉にあわせて、置かれていたイナリナの服が消え、透明だった丸宝石の一つが服の色と同じベージュに染まった。
ちなみに他の宝石の色は、丸い宝石は鉄色と赤紫半々が一つずつ、ひし形の宝石は白とピンクのストライプだ。
「ななな、なんだ今のは! イナリナの服が消えてしまったぞ!?」
「この腕輪の中にしまったんだよ。
衣類一式をセットで3着まで収納して、直接着替えられるんだ」
「きっ、きききっ、きがえるだとぉぉ!?」
腕輪の宝石に衣類がしまわれたという異常な説明を聞いたアエリエは、目を剥いて少年に詰め寄り
「よっ、よもやっ、お前が、お前がイナリナの服を着るというのか!
嗅ぐだけでは飽き足らず、汚い身体を包みこんで幸せになろうと言うのかあぁぁっ!」
「最初から言ってるじゃん、潜入のために着るって」
「いや、いやいやしかし、しかしだな、そんなのずるい、私がしたい!」
「あーもう、だったらぼくと同じことが出来るんだったらアエリエに任せるよ。
ぼくだって本当は女の物の服なんて着たくないんだからね」
(脳裏で店長さんが『ふふふ、今のうちに思う存分抗うが良い、どぉぉぉっしよ!』って悦んでます、本当に勘弁して下さい)
気を取り直し。
先ほどイナリナの服をしまった宝石に指をあて、中に入った衣類を身に着けた姿を思い浮かべる。
「同じこと、だと?」
「ジャストフィット」
少年が呟くと、かすかな光とともに少年の姿が黒いシルエットとなった。
光とシルエットは一瞬で消え、後に残ったのは――
「イナリナ!?」
「ふう。
これがぼくの能力、ジャストフィットだよ」
名前と衣服以外知らぬエルフの少女、衣類の持ち主の声で己の能力を告げる、少女の姿をした少年。
『ジャストフィット』
衣類に、身体を合わせる能力だ。
鎧をまとえば戦士となり、コックコートを纏えばシェフとなる。
体の大きさだけではない、種族や能力までをも衣類に見合ったものとする能力。
今朝アエリエと出会った際、少年はこの力で犬に変身していたのだ。
「ななな、なんということだ」
震える声を出しながら、なぜか気持ちの悪い笑みを浮かべ。
今は少女の姿をした少年に、にじり寄っていくアエリエ。
少年が少しひきつった笑みを浮かべて一歩下がると、アエリエは素早く二歩間合いを詰めた。
「い、いや、見た目が変わろうと騙されないぞ、私は騙されない。
だからそう、本当にイナリナであるかどうか、まず私が診察してやらなければな!
そう、つまりこれはお医者さんごっこだ!」
己の欲望を全力で正当化――してないような気もするが、つまり欲望を垂れ流したアエリエが迫るのをひきつった顔で見上げる。
一歩、また一歩と迫りくる変態。
やがてじりじりと下がりつつも壁際まで追い詰められた少女は、よだれを垂らしながら襲いくる変態に――
「――ひっ!
へ、変態なお姉ちゃん気持ち悪い、だいっっきらい!」
「げぶはぁぁぁっ!?」
とっさに叫んだ妹の姿をした少年の言葉に、変態なお姉ちゃんは血を吐きながら卒倒したのだった。
ゲーム開始時点で死んでいるモブキャラが、独特のノリで死に掛けたり死んだりいちゃいちゃしたりと次々に大活躍!
だいたい100万PVの大人気御礼、遂に第一部完結しました!
ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~
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