06 相談 - 変態エルフ剣士の宝剣ムーンベリル
ディバイン・セイバー完結記念、クリスマスプレゼント企画!
短期集中連載でお送りしております。
まず少年が語ったのは、自分が現在受けている依頼についてだった。
娘が行方不明になったという母親の頼みで、幼い少女を探していたという。
その際、同じように少女を探しているアエリエを発見し、関連があるかと思って様子を伺い、声を掛けたとの事。
アエリエもまた、イナリナの失踪の経緯や捜索した範囲などを改めて説明した。
「というわけで、我々の状況とタイミングはよく似ており、同一犯の可能性は低くないと見ています」
「なるほど、言いたいことは分かった。
貴様がアエリエのパンツを犬臭くしたなど言いたい事は多々あるが、それはひとまず後に回してやろう。このけだものめ!」
「それ、後に回してないよね?」
ため息混じりのツッコミを無視してガツガツと食事をとりながら、アエリエが続きを促す。
「……納得いかないけど。
とりあえず、さっき案内した屋敷に妹さんの匂いが続いていたから、一度あの屋敷に囚われたことは確かだと思う」
「では、今から殴り込みに行けばいいのだな」
「あの家についての情報とか、人間の出入りの確認とか、下調べもあるが――」
「必要ない!
そのようなことをしている間に、イナリナが怪我させられたり、どこかへ連れ去られるかもしれん!
ならば、今すぐにでも殴り込むべきだ!」
「一理あるね。
ちなみに、腕前の程は?」
少年の疑問に、アエリエは腰に吊るした剣を鞘ごと軽く掲げてみせた。
「人の世のハンターランクこそ高くないが、これでも剣の腕は里で一番であった。
直接やりあった事はないが、魔物相手の腕前としてはおよそB~A級程度と思ってくれて構わない」
ギルドで評されるハンターランク。
見習いのE級から始まり、駆け出しのD級、一版のC級、ベテランのB級と続く。
B級とその上、一流を意味するA級とでは、かなり大きな隔たりがあるのだが。それはまぁいいだろう。
アエリエの戦闘力を一般的なB級と考えれば、声を掛けたことは間違いではない。
「さらに、急激にイナリナパワーを取り込むことで、短時間だが我が戦闘力を倍加できる。
いざという時は任せてくれ」
……いや、やはり声を掛けたのは間違いだっただろうか。
パンツパワー以外の『イナリナパワー』の詳細説明を受け、まだ会った事もないイナリナについて、少年はまた一つ詳しくなってしまった。
ああ、こんな変態の相手なんかしてないで、早く魔法少女を愛でたいものです。ラブ魔法少女、まだ見ぬあなたは今いずこ。
「そういうお前の方はどうなのだ?
犬に変身して捜査ができるのは分かったが、戦えるのか?」
「ちょっとぼくの能力は特殊でね、装備した衣装に見合う戦闘力になるんだ。
良い武器、良い装備があればあるほど、戦闘力が高くなるよ」
「……?
それって、普通の事ではないのか?」
「もちろん誰だって良い装備を持てばその恩恵は受けられるけど、ぼくの場合はそれが極端でね」
少年は、アエリエに簡素化した数値で教えた。
素のアエリエの戦闘力を10としよう。
アエリエの戦闘力は、素の強さに加えて、武器の性能によって強化される。
粗末なナイフであれば+1。一般的な剣で+5、今使っている宝剣であれば+10。
合計すると、今のアエリエの戦闘力は10+10=20となる。
ここにイナリナパワーを加えると――いや、それは少年の戦闘力に関係ないので別にいい。
一方、少年の戦闘力には『素の強さ』がない。
単純に、武器によって強化される戦闘力の2倍と考えれば分かりやすいだろう。
武器込みの少年の戦闘力で、粗末なナイフを握れば2、一般的な剣なら10。アエリエの持つ宝剣を装備すれば20となる。
「なっ、や、やらんぞこの剣は!
これは里の大事なものなのだ、やらないからな!」
「分かってる分かってる、ただの説明だよ」
実際はもちろんこんなに単純ではないのだが、他人に理解してもらうにはこの程度でいいだろう。
要するに、現状で戦闘する分には少年の方がアエリエより弱い。
さらわれた少女達の捜索は少年がメイン、戦闘はアエリエがメインで行う。その役割分担ができれば十分なのだ。
「では、今から殴り込むか?」
「待て待て待って、敵の数も分からないのに正面突破は無茶だ。
敵の強さも分からないし、倒せるにしても人質が居る限り勝ち目は薄いよ」
「むむ、それもそうだが、しかし時間を掛けるわけには……」
「まずは潜入、人質の救出。
そこら辺は、捜索担当のぼくの役割だ」
少年が、予め考えてあった救出計画をアエリエに説明する。
大まかに言えば、午前中は少年が潜入準備、アエリエは休息。
午後から行動開始し、相手が人さらいを続けている場合はさらわれて潜り込む。
午後の活動が空振りであれば、夜にこちらから屋敷を訪問する段取りであった。
ただし、途中で馬車が出るなど、イナリナの搬送が行われそうな場合には予定変更して強襲に踏み切る。
「人さらいにさらってもらえるなら、良いと思うが……
しかし、屋敷を見張っていないといけないのでは?」
「それについては、もう手配済みだから大丈夫だよ。
今も協力者が見張ってくれている」
「なんと……!」
でなければ、さらわれた相手の居る屋敷から目を離して準備など出来ない。
「よし、分かった。
イナリナが不安に怯えているかと思うと気が気ではないが――救出に万全を期すためだ。お前の策に乗ろう」
「ああ、よろしく頼む」
話はまとまった。
少年とアエリエは握手をかわし――
「ところで、お前の名前は何というのだ?
一時的とは言え仲間となり背を預けるのだ。名ぐらい教えてくれ」
「ぼくの名前、か。
ぼくは――」
『名無し』
少年は、自分の名前をそう名乗って小さく笑ったのだった。
ゲーム開始時点で死んでいるモブキャラが、独特のノリで死に掛けたり死んだりいちゃいちゃしたりと次々に大活躍!
だいたい100万PVの大人気御礼、遂に第一部完結しました!
ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~
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