表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どんな衣類もジャストフィィィット! でもオーガのパンツや犬の首輪って衣類なんですかね?  作者: 岸野 遙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/16

14 窮地 - 中級冒険者のぼろぼろになった剣と盾

ディバイン・セイバー完結記念、クリスマスプレゼント企画!

短期集中連載でお送りしております。


「大丈夫ですか?」

「う、く……」


 優しい少女の声が、響く。

 その声音に癒されるように、少年の意識は回復し小さくうめき声を発した。


 ぼやける意識をなんとかつなぎとめ、顔をあげる。

 魔剣を胸に突き刺されてもがく変態中年を背景に、横からエルフの少女、イナリナが自分の顔を覗き込んでいた。


「よかった……」


 見回せば、書棚の前にアエリエがうつぶせで倒れており、救出した二人の少女は部屋の隅で震えている。

 使っていた剣と盾はすぐそばに落ちていたが、剣は刃こぼれし盾はひしゃげてぼろぼろなのが一目で分かった。


 ドナンの握る魔剣が炎のように赤い光を立ち昇らせながら血を啜る様子に、絶体絶命という言葉が頭をよぎる。


「二人を連れて、あなただけでも逃げてください。

 あの危険な剣が、あの人の血を吸い終わる前に」


 思ったよりも――地下で出会った時よりも、ずっとしっかりした様子で。

 イナリナは、少年に懇願した。


「君とアエリエを置いていけないだろう。逃げるなら全員一緒だ」

「それは、無理でしょう……

 皆で逃げれば、すぐにも追いつかれます」


 戦闘の様子を見ても、魔剣の男のスピードは異常だった。

 あれが血を吸う魔剣の力だとするならば、今新たな血を吸った魔剣を持つ男は、これまで以上のスピードで追いかけてくるはず。


 しかもこちらには、囚われていた年若い少女達がいるのだ。

 足手まといがいる状態での鬼ごっこなど、捕まえてくれといっているようなものである。


「ですが、私たちが残れば。

 血を吸ってる間は、足止めできるはずです」


 少女の言葉に、思わず目を丸くしてその瞳を覗き込む。

 そこには、まだ幼い少女ではなく、深い決意を讃えた強い眼差しがあった。


「そんなの、良くない」

「ええ……人として(・・・・)、良くありません。

 ですが、全員が殺されて、あの魔剣を持った男が野放しになるよりは良いはずです」


 5人全員が死ぬより、何人かでも生き残った方がいい。

 それに、誰かが外に出て衛兵等に伝えられれば、魔剣を持った男を討伐することもできるはず。

 全員がここで死ねば、凶行が世に知れることもなく、さらなる被害の拡大につながるかもしれない。


 それでも。


「それでも、受け入れられない。

 だったらまだ、君たちが逃げて、ぼくが足止めすればいい」


 もちろん、少年に自殺願望などない。

 したいこともあるし、生きる目的もあるし、痛いのだって嫌だ。


「いいえ。

 あの男は、エルフの血を吸うことに執着があるようでした。

 おそらく人間だけが残ったなら、殺すだけ殺して逃げたエルフを追うことでしょう。血を吸うために」


 魔剣の意識が、自分達を見ている(・・・・)

 イナリナは、そう感じていた。

 あの魔剣は、人間以上に、エルフの血を欲しているのだと。


「だから。

 人間であるあなた達だけでも、逃げてください」




 コッコナーの血を吸いつくし、禍々しい光を発する魔剣を舐めて。。

 ドナンは歓喜の中で残った者を順番に見つめた。


「あとはぁ、おっさんとおんなぁ、ガキぃさんにん。

 しかもぉぉ、そのうちぃふたりもエルフなぁんだもんなぁ。


 いっきにぃエルフぅふたぁぁりもすったらぁ……どぉぉなっちまうんだろうなぁぁ!」




 血を吸い終わったドナンの雄たけびを耳にして、イナリナは無意識に小さな手で中年となった少年の手を握りしめた。

 その瞳と言葉には強い光と決意があったけれど、小さなその手だけは震えを抑えることができなくて。

 震えが伝わってしまう、そのことを悔やみながらも、胸に沸いた恐怖を前に、少年の手にすがることを止められなかった。




 だから、少年は。


 自分の中の決め事も葛藤も浪漫も何もかもを、今この一時だけは、飲み込んで。


 この気高くも弱い少女のために、自分に出来る事をすると決めたのだ。




脱衣(クロスアウト)


 中級冒険者の姿から、元の自分の姿に戻ると。

 イナリナの小さな手を握り返し、柔らかく微笑んだ。


「ごめんね、まだ幼い女の子に、そんな怖い決意をさせてしまって」

「お、おさないおんなのこ……」


 少年の言葉に、なぜか動揺した様子を見せるイナリナ。

 その髪を柔らかく撫でてから、少年は痛む身体で立ち上がった。



「おぉん、なんだぁおまえぇ?

 なんかぁわかがえってねぇかぁ?」


 先ほど戦って倒した侵入者の居た場所に立つ、見知らぬ黒づくめの少年。

 顔が若くなってるだけでなく、服装も鉄の鎧から黒づくめの衣服に変わっている。

 そんな突然の事態に、少し警戒したのかドナンが剣を構えた。


「まぁなんでもいいやぁ、いまのやっべーおれのてきぃじゃねぇしなぁ。


 エルフのちぃすうまえにぃ、おまえもぉぜんさいにしてぇやるぜぇぇっ!」


 少しでも警戒した自分を、まるで恥じるかの如く。

 大声で自分を鼓舞し、雄たけびをあげて斬りかかる、が――




変身(ジャストフィット)!!」



 その刃が届くよりも、腕輪に触れて少年が呪文を唱える方が、ほんの少し早かったのだった。


ゲーム開始時点で死んでいるモブキャラが、独特のノリで死に掛けたり死んだりいちゃいちゃしたりと次々に大活躍!

だいたい100万PVの大人気御礼、遂に第一部完結しました!


ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~

https://ncode.syosetu.com/n8991iq/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ