12 脱出 - 中級冒険者の中古装備一式
メリークリスマス☆
ディバイン・セイバー完結記念、クリスマスプレゼント企画。
本日はクリスマスイブなので、2話投稿でお送りします!
幼い少女達は、特に縄で縛られたり拘束具を使われたりはしていなかった。
扉さえ開けばすぐにも移動可能だったが、手持ちの甘い物を3人の少女に分け与え、人心地つくのを待つ。
その感、少し落ち着いたはずだが、それでもにじりよってくる姉アエリエ。
そんな姉を、姉と共に助けに来てくれた丁寧な少年を盾に躱しつつ、妹イナリナはお菓子を食べ終えた。
「ありがとうございます、お兄さん」
「うん、どういたしまして」
姉を警戒しつつ、服の裾をちょこんと握ったまま頭を下げるイナリナ。
その愛らしい姿に、自然と笑みを浮かべて頭を撫でる少年。
そんな様子を見て、我慢ならなかったのが変態――もとい、姉のアエリエであった。
「なななななななっ、なぜだ! なぜなんだイナリナ!?
助けに来たのはお姉ちゃんなんだぞう!
この剣で敵をばったばったとなぎ倒し扉の錠前も切り裂いて助けに来たのはお姉ちゃんなんだぞう!
それなのに、なぜ、そんな胡散臭い人間の男なんかにお礼を、あまつさえ笑顔を向けるなんて!
さては人間、貴様妖しい術を使ったな、イナリナから離れて死ね!」
言葉を発する度にエスカレートしていくエルフの女剣士。すでに手は剣の束を握っており、今にも抜き放たれようとしていた。
その姿は、事情を知らぬ他の少女達にとっても怖いものに映ったようで、少年を盾にする少女の人数が3人に増えた。
服にお菓子の食べかすがつくなぁ、とか少年はのんきにそんな事を考えていた。
「落ち着いて、みんな怖がってるから。
それに、お菓子をもらったからお礼を言う、当たり前の事じゃないか。それが出来るイナリナちゃんは、いい子だね」
そう言いながら、再度頭を撫でる少年。
イナリナはくすぐったそうに眼を細めると、笑顔で少年の顔を見上げて
「そいつ、イナリナのパンツに顔突っ込んで嗅いでたんだぞ」
「……」
少年に向けた笑顔を、凍り付かせて。
一歩、イナリナが後ずさった。
イナリナのその様子を見て、それはそれは嬉しそうな顔で、アエリエはにたりと笑った。
そして、暗い悦びに突き動かされるまま、さらなる言葉を続ける。
「しかも、イナリナの服を私から奪って、あろうことか自分で着た変態なんだぞ?」
「……」
もう一歩、イナリナが後ずさった。
ついでに二人の少女も、おろおろしつつイナリナと一緒に下がった。
「ちょっ、おい!」
唐突な暴露に、少年が少し焦った声をあげた。
嗅いだのと服を着たのは、捜索と囮捜査に必要なことだった。
だがパンツに顔を突っ込んでないし、変態は間違いなくアエリエの方だ。
それでも、嗅いだことだけは事実なので、全面的な否定の声は出ない。
ここで眉一つ動かさずにさらっと嘘をつければ良かったのかもしれないが、少なくとも素の状態の少年にはそんな器用な真似は無理。
余計な事を言ってメイドに殴り飛ばされている毎日は伊達ではないのだ。
幼い少女達の疑惑の視線と、その後ろで邪悪に笑う変態エルフ。
困った少年は、一度部屋の隅に移動してマントで身体を隠すと――
茶色い犬に変身した。
「わんっ」
どこからか――明らかに少年が居たはずのマントの中から現れた犬が尻尾を振りながら、少女達の目の前にちょこんとお座りした。
「わぁ」
「……いぬ?」
「かわいい」
それを見た少女達は、ちょっと疑問を感じながらもその愛らしい毛並みを撫でる。
「く、くっそぉぉぉ、私も犬になってイナリナになでなでくんくんぺろぺろされたぁぁぁぁいっ!」
少年がいかに危険かを説明し相対的にアエリエの株を上げて可愛いイナリナを保護して抱きしめてくんかくんかするという姉の野望は、少年の神にも等しき奇跡の能力の前に脆くも崩れ去った。
少年の蛮行疑惑は捜索のためということをご理解いただくことができ、3人の少女は犬から人に戻った後も少年の傍に立ち。
少年を貶めようとして自滅した姉には、最愛のイナリナからちょっと冷たい視線が向けられたのでした。
それでこそどぉぉぉぉしよっ、とどこかで変態店長が笑った気がした。
結果的に、少年の特異な能力についても「なんか変身できるお兄さん」ということで受け入れられた。
空腹と精神的な不安感の最低限のケアも完了ということで、隠し部屋の扉を抜け屋敷からの脱出を目指す5人。
年長者2人が警戒しつつ先行し、年少者3人は互いに手をつないで少し段差の大きい階段を一生懸命上がった。
そうして、長い階段を抜けて書斎に踏み込んだところで――
横手から振り下ろされた長剣を、アエリエが抜き放った宝剣が受け止めた!
そのまま襲いくる敵と剣戟を交わしつつ、入り口から一歩踏み込んで道を開けるアエリエ。
その後ろから飛び出したのは、ややくたびれた鉄の鎧に全身を包み、雑に切り揃えた短髪を逆立てた、一人の中年剣士。
交戦中の敵はエルフに任せ、中年剣士は室内で出口を塞ぐ他の敵達に剣を向けた。
「よもや我っが屋敷に侵入者なっど、見張りは何をしていたっのだ!
汚い男と年増風情っが、愛しいコレっクションに手を出すなど断じてゆるっさん!」
やや言葉に詰まりつつも怒りを露わにするのは、仕立ての良い服を着た小太りの男。
侵入者たる二人は知らないことだが、この屋敷の主人コッコナー=ツミックルである。
「そのっ、娘たちはっ!
まだ幼っく無垢な娘ったち、だがその身っ体は豊かな乳! 乳! 揺れる乳っ!!」
拳を握りしめて力説する、小太りの男。
アエリエと戦闘中だった護衛は、間合いを開くと我関せずとばかりに無表情で斜め上を眺めた。
突然の力説にアエリエと少年が思わず無言で顔を見合わせる中、少女たちは不安そうに互いの身を寄せ合った。
意図しての事ではなかろうが、コッコナーが力説する豊かな乳。三人六つの大きな乳が、互いに寄せ合わされてむにゅりと柔らかくひしゃげる。
それを見たコッコナー氏、目を血走らせながら演説を続ける。
「幼く大きな蕾を愛でっ、調教しっ、私好みに育て尽くしっ!
大きくなったら売りっとばして、また新しい幼女を愛でっるのだ!
これぞ我っが楽園っ、幸せのエターナルっロリっパラダイス!!」
あ、うん。変態ですね。
という顔で、中年剣士となった少年は周りの護衛に目で問うた。
うん、うちの主人は変態なんですよ。まあ金持ちにはよくあることだよな。
そんな顔で、護衛達はひっそり頷いた。
一方この中で一番変態の疑いがあるエルフ剣士だけは、どこか慄いたような表情をしている。
その背後に書き文字を加えるとしたら『なんて羨ましい、私もしたい』だろうか?
いや、『その手があったかー!』かもしれない。
どちらにせよ、仲間のはずのエルフ剣士は、あちら側だなぁと少年は密かにため息をついた。
それと、妹も姉の様子を見て深く深くため息をついた。そうだ、減俸しよう。
そんな自分以外の様子には気づかず、演説を終えたコッコナー氏。
なぜか戦いをやめて傍らに戻っていた男を含め、二人に戦闘指示を下した。
「エルフは捕らえて売りとっばす、男は殺して構っわん。やれっ!」
先ほどまでアエリエと斬り結んでいた男が、仕切り直しとばかりに再びアエリエに斬りかかる。
それとともにコッコナーの傍に立っていた男の一人が、中年剣士に向けてナイフを突き出した。
それを左手の小盾で受け止め、お返しとばかりに剣を振るう。
剣による攻撃は避けられたが、特別強い相手ではない。少女達が人質に取られたりしなければ、時間は掛かっても勝てぬ相手ではないだろう。
少年が変身した中年剣士はエルフ剣士と肩を並べると、今度は二対二で敵との戦闘を開始した。
ゲーム開始時点で死んでいるモブキャラが、独特のノリで死に掛けたり死んだりいちゃいちゃしたりと次々に大活躍!
だいたい100万PVの大人気御礼、遂に第一部完結しました!
ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~
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