11 捜索 - 全裸の少年の黒い犬の首輪
ディバイン・セイバー完結記念、クリスマスプレゼント企画!
短期集中連載でお送りしております。
犬の首輪を身に着けて変身。
嗅覚を頼りに空き部屋や物陰を駆使して人との遭遇を避け、イナリナを探す二人組。
捜索担当の面目躍如とばかりに、誰とも会う事なく屋敷の中を移動する。
「ああイナリナ待っていてくれイナリナ今すぐお姉ちゃんが駆けつけていっぱり抱きしめてほおずりしてくんかくんかしてぺろぺろして」
「わふ」
際限なく口から漏れ出す変態の欲望に辟易したのか、あるいは隠密行動のため静かにしろと言いたいのか。
犬の姿のため言葉をしゃべれない少年は、小声で鳴きつつ足に体当たりした。
しかし腐っても変態……もといベテラン以上・一流以下のハンター並。
犬の体当たりなど軽く交わすと、なぜか犬相手にそれはもう嬉しそうに勝ち誇った笑みを向ける。
「くくく、犬め。
イナリナのパンツを獣臭くした恨み、忘れてはいないぞ!」
今更何を言っているのだ、こいつは。
犬は遠慮することなく、容赦なく噛みついた。
「ぎゃーっ!?」
人質奪還のための隠密行動中に騒ぎ声をあげる変態エルフ。
犬は、もう嫌とばかりにため息をつきつつ――扉の前で止まった。
意思の疎通は不十分だが、犬と変態であっても扉を開けろということくらいは通じる。
扉には鍵が掛かっていたが
「――ふっ」
少年から返された愛用の宝剣を構え、アエリエが一閃。
薄い刃が扉の隙間を走り抜けて錠前を両断した。
変態とは思えない、卓越した力量である。少年はこっそりと、中身が変態でさえなければなぁとため息をついた。
鍵どころか、ノブを捻っても閉じることのなくなった扉を開けて一人と一匹は室内に滑り込む。
「ここは――」
入った部屋は、特に変わったところのない書斎。
だが、書斎と言えば本棚であり、本棚と言えば――
「わぅ」
本棚の前で小さく鳴く犬。
「この向こうに、イナリナが?」
「わぅ」
エルフの質問に頷く。
本棚と言えば、隠し通路。どうやらイナリナの匂いは、この向こうから漂ってくるようだ。
本棚に貼り付いて調べるアエリエの手荷物を奪って咥えると、カーテンの影へ。
ごそごそと黒いシルエットが光を放ち、全裸に首輪の姿からアエリエに預からせていた衣服に一瞬で着替える。
ほっと一息ついて部屋の方を向くと、なぜか本棚を調べていたはずのアエリエが少年の方を向いており
「……全裸に首輪とか、まるっきり変態だな?
絶対にイナリナには近寄らないでくれ」
「何ひとの着替え覗いてるんだよ!?」
むしろ堂々と、どこか得意げに、少年の着替えシーンを鑑賞して変態呼ばわりしていた。
隠し通路の捜索はどうした。
本棚の仕掛けに手間取ることもなく、普段着に着替えた少年が隠し通路を開く。
もちろんアエリエは役に立っていないが、そこは役割分担ということでいいだろう。
だから、すぐ背後で『イナリナに近づくな、この変態め!』とか『ああイナリナパワーが足りない、嗅ぎたい被りたい』とか言っていても構わない――いや、気が散るから黙っててくれます?
けして背後でぶつぶつ言われると迷惑だからというわけではないが、戦闘担当のアエリエを先行させ狭い階段を下りて行く。
階段を下りた先は、天井はかなり低いものの、書斎と同じくらいの広さを持つ部屋になっていた。
奥には覗き窓付きの小さな扉があった。
そこから室内を覗き込み、
「イナリナ!」
そこに探し求めた妹の姿を見つけた姉は、すぐさま重い閂を外し部屋の中へ飛び込んだ。
「イナリナ、イナリナ!」
「あ、お姉ちゃん」
「うおぉ、イナリナーっ!」
雄たけびを上げて室内の小柄な少女に抱き着くと、そのまま感極まったように首元に鼻先を埋めて
「くんかくんかくんかくんか」
「ちょっ、くすぐったいです、お姉ちゃん」
「くんかくんかくんかくんかくんかくんか」
「ちょっと落ち着いて、離れて……!」
「くんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんか」
「う、もうっ……いい加減に、しなさーい!」
「あいたーっ!?」
アエリエが腰に佩いていた宝剣。
それをいつの間にか鞘ごと抜き、自分に抱き着いた不埒な姉の脳天に叩きつける。
狭い室内、不自由な体制ながら、見事な一撃であった。
たまらず頭を押さえて離れた変態から素早く距離を取り衣服の乱れを直すと、少女は深いため息を吐いた。
そんな二人の様子を、姉妹なんだよね?という気持ちで見つめる三対の眼。
抱き着かれたエルフの少女と共に囚われていた少女が、2名。それと扉の外側で苦笑いしている少年であった。
イナリナ。
金髪緑眼の姉とは異なり、銀の髪に青い瞳をした非常に美しい少女である。
外見の年齢は、人間で言えばおよそ十代前半と言ったところか。
長命なエルフだから実年齢は分からないが、エルフにおける子供であることは間違いないだろう。
体系についても、スレンダーな姉とは一線を隔すメリハリであり、一部については幼さの残る容姿に似合わぬ重量級である。
それを見て、少年は『また牛が……』と呟いたとか何とか。意味は不明である。
他の二人の少女も、非常に愛らしい顔立ちに、発育の良い体つきをした十代前半程度の少女であった。
そのうち一人は、少年が元々依頼を受けて探していた相手だ。
救出に来た二人は、遂にそれぞれが探し求める相手との合流を果たしたのだった。
ゲーム開始時点で死んでいるモブキャラが、独特のノリで死に掛けたり死んだりいちゃいちゃしたりと次々に大活躍!
だいたい100万PVの大人気御礼、遂に第一部完結しました!
ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~
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