Day.1【ラビとカロの日常】
魔法と剣が栄えているとある世界に、“桜月ラビ”というウサギの獣人がいました。
彼は街の外れで小さな魔法道具屋を細々と営みながら、それなりに充実感のある日々を送っていました。
彼の1日は、日課であるマンドラゴラの“カロ”への水やりから始まります。
「おはようカロ、今日はどんなお客さんが来るかな」
店内は狭いながらも整理されており、商品はきちっと並んでいます。
よくあるポーションの類、魔法石、乾燥した植物、古びた本、小さなナイフ、使い方のわからない魔道具など、いろんな商品を取り扱っている雑貨屋のようです。
ラビは水を入れた小瓶を持って、商品棚にある植木鉢のそばに置きました。
するとその植木鉢の中からモゾモゾとカロが顔を出し、おもむろに小瓶を手に取って水を1口飲みました。
「今日 “も” 誰も来ないんじゃない?俺はその方がのんびりできていいけど」
「失礼な。こないだご新規さんがきたじゃないか」
「こないだっていつ?」
「……2日前ぐらい?」
「6日前だよ、ラビ」
ラビは他人事のように「へーそうなんだ」と返事をしつつも、テキパキと開店準備をしていました。
開けた窓から朝の暖かい日差しが入り始めた頃には、清掃や商品の補充、在庫チェックまで終わり、ラビは満足げに頷きました。
「相変わらず几帳面だねぇラビは。ウサギ族ってみんなそんな感じなの?」
「んーどうだろ?他のウサギとそんなに話したことないんだよね」
「地元の繋がりは大事にしたほうがいいって聞くよ?」
ラビは誰に言うでもなく「なんか合わないんだよなぁ」とつぶやき、カウンターの中で新聞を読みながらお茶をしばいていました。
――そうして他愛のない話をしていると、カロは「ひなたぼっこしたい」と言い出しました。
ラビはカロの植木鉢を店の入り口横あたりに移動させ、リクエストに応えてあげました。
「僕は後ろの作業部屋で道具製作してるから、お客さん来たら教えてね」
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ラビは『いつか自分のお店を出したいな!』という夢を叶えるため各地を転々としていた冒険者でした。
1年ほど前にようやく自分の店を持つことができましたが、今でもギルドで採集クエストを受けたり、必要な素材を自らダンジョンに潜って手に入れたりと、冒険者活動は続けています。そして、長年の冒険者生活で身に着けた手先の器用さを活かし、手に入れた素材でポーションや魔道具をハンドメイドしているのです。
「えーと、こないだ魔石水筒が売れちゃったんだっけ。あ、あと解毒薬も減ってきたし作っておくか」
最近はリピート購入してくれるお客さんも少しずつ増えており、製作の手にも一層力が入ります。
――しばらく作業していたとき、突然なにやら聞こえてきました。
「……んだ!何しに来た貴様!」
ラビの長い耳がピクンと反応し、耳だけ入口の方を向きます。
「おい犬!お前ここでオシ○コしようとすんな!畜生の分際で!バカたれ!いいか、俺様が植木鉢から飛び出て奇声を発すれば良くて気絶、最悪の場合は命にかかわるほどのーー。おい待て、クンクンすな!やめろ話せばわかる!ちょ、ラビ助けて!おい犬やめろ!ラビー!!」
ラビの耳はスッと元の位置に戻り、そのまま作業を続けました。
その後、カロは3日ほど口を聞いてくれませんでした。
こんな感じのゆるい日常を投稿していく予定です!
のんびり見守っていただけたら嬉しいです♪




