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その25の1「レグと誘拐犯」


「難しいはずなんだけどね。


 次期国王のためならっていう


 配慮が働いたのかもしれないね。


 エリクサーがあれば、ねえさんの体は元通りだ。


 王位を継ぐのに何の問題もなくなる。


 それでは困るんだ。


 だからねえさんには、ここで消えてもらう」



「そんなことをして、タダで済むと思うのですか」



「なるべくボロが出ないように努力するよ。


 それじゃあさようなら。ねえさん。


 ねえさんのことは、べつに嫌いではなかったよ。


 …………やれ」



 キリアンの指示を受け、剣を手にした部下が、アムの前に立った。



 アムをこの世から消し去るために、男は剣を振り上げた。



 どうしようもない。



 もし体が健康でも、全身を拘束されている現状では、逃れる術はない。



 アムにできたことは、ただ口を動かすことだけだった。



「っ……レグっ……!」



 その場に居ないはずの男の名を、アムは必死に呼んだ。



 そのとき。



 頑丈なはずの倉庫の戸が、ハデに吹き飛ばされた。



「「みゃーっ!」」



 直後。



 二頭の猫が、勇ましく倉庫に飛び込んできた。



 黒と白、それぞれの猫の上に、人の姿が見えた。



 アムを殺そうとしていた男が、黒猫に向き直った。



 距離を詰めてくる猫に向かって、彼は剣を振り下ろした。



 黒猫はそれを俊敏に回避。



 即座に反撃の体当たりを決めた。



「ぐあっ……!?」



 男は吹き飛ばされて、手から剣を取り落とした。



 猫たちの姿が、アムの視界に入った。



「カゲトラ……! シルク……! それに……」



「よっ。平気か?」



 カゲトラの背中で、レグは軽く手を上げた。



「レグ……!」



「私も居ますよ。アムさま」



 シルクの上で、レイスが口を開いた。



 二頭の猫は、アムを守って勇ましく立った。



 一行はキリアンたちと向き合い、あいだに緊張感を漂わせた。



「どうしてここがわかったのかな……?」



 キリアンがレグに尋ねた。



「簡単な話だ。


 安全のため、アムのガントレットには発信機が仕込まれてるのさ」



「えっ?」



 初耳だがと、アムが声を漏らした。



「ってのは嘘だが。


 アムは香水を強めにつける癖があるからな。


 おかげで猫に探させやすかったぜ」



「匂いか……。


 そんな初歩的なことに気がつかないんて、


 自分の底の浅さが嫌になるね」



 失態を犯した。



 誰を責めることもできない、自分自身の失態だ。



 それを悟ったキリアンは、呆れたような笑みを漏らした。



「けど、今さら退くわけにはいかない。


 こいつらを片付けろ!」



 すぐに真剣な顔になり、キリアンは部下に命令を下した。



 彼らはすぐに動きはじめた。



 レグとレイスは猫から下りた。



 レグは素手のまま、レイスはナイフを手にして構えた。



 そしてアムの守りを猫たちに任せると、迎撃を開始した。



 レグから見て、敵の手並みはそれなりだった。



 悪くはないが、あくまでもそれなりだ。



 レグの実力は明確に、敵よりも勝っていた。



 武器を手にかかってくる相手に、一方的に拳を叩き込んでいく。



 強烈な打撃を前に、敵は次々と倒されていく。



 そのとき、フードを被っている男が、ナイフでレグに斬りかかった。



 その一撃は、他の連中のものよりも鋭い。



 レグは即座にスキルを発動させた。



 そしてナイフを手中に出現させ、相手のナイフ攻撃を受け止めた。



「この前は世話になったな」



 敵が夜道で襲ってきた相手だと、レグは気付いていた。



「とっとと死ねよ。無能が」



 悪態をつき、敵はフードを外した。



 見覚えのある顔が、レグの瞳に映った。



「エラン=エナンカだったか。


 レイガルルのパーティの新入り。


 どうしてこんな所に居るんだ?」



「ただの副業さ。


 カネが良いから誘いに乗った。深い理由はねえよ。


 おまえをブチ殺すのにも理由はいらねえ」



 今回の事件は、政治的問題だと言える。



 次代の王が変われば、国の将来が左右されることになるだろう。



 そんなことに、レグの眼前の男は、微塵も関心がないらしい。



 ただカネのために。



 いかにも小者めいた動機だが、レグはエランの言い分が嫌いではない。



 レグ自身、この国の将来なんてものには、大した関心を持っていないからだ。



「ずいぶんと嫌われたもんだ」


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