みんなの記憶から消えるまで
今日からバイト、バイト、バイト
安倍秀雄の夏はバイト
高校二年生の財布事情はかなり厳しい厳しいのだ
親から貰える月2000円ほどのお小遣いこの時代に
2000円だプリクラ4枚も撮ったらすぐなくなるだが
そんな機会ないので2000円も得してると自分を納得させている。幸せだ多分
そんなこんなで学校も終わり放課後
家に帰宅すると机の上に2000円と母からのメモ書き
汗水垂らして稼いだ2000円です、大事に使ってください。とのこと...とりあえず冷蔵庫で母が飼育しているクリオネのビンに唾を吐いた。
そしてついに来てしまったバイトの時間
今日も全力で走ってバイト先のコンビニに向う
今日もどんな客がくるんだ、からあげさんは何個あげりゃーいいんだそんなしょーもない事を考えてるとバイト先につく
今日も楽しいのか悲しいのかわからないバイトが始まる
『お疲れ様ですー出勤しましたー』
…ニヤリと笑いながら言った。
『おう、待ってたぞ秀雄、今日からレジも覚えてもらうからな』
一瞬時が止まる。
レジ? あのピーピーやるやつ?
ただでさえ品出しとゴミ捨てとからあげさんでてんてこ舞いなのに、レジまで?
『え、マジっすか』
思わず声に出た俺のセリフを、店長は聞こえていないふりして続ける。
『大丈夫大丈夫。すぐ慣れるから。あと、今日新人来るから、ちょっと面倒見てやって』
追い討ちのような一言。
俺が新人じゃなかったのか。まだバイト3日目だぞ。
しぶしぶエプロンをつけ、タイムカードを押す。
レジ前には、小さく震える影——どうやらその新人らしき子が、緊張した面持ちで立っていた。
『あ、はじめまして…バイト初日です』
声はか細く、どこか俺と同じ匂いがする。
ああ、こいつはきっとプリクラ4枚で全財産溶けるタイプだな
『とりあえず、挨拶からだな’いらっしゃいませー’っえ元気に言ってればいいから』
高校二年生の夏、俺の円バイトライフは、静かに加速し始めた。