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9話:殺人鬼③


 殺人鬼のコアを破壊し、戦いを終えた翌日、黒四季死生はエクシアからの緊急招集を受ける。


 メッセージは簡潔だった。「世界治安維持機構の作戦本部へ至急来てください。あなたとジュリアス・エメリー、リリウム・オルレアの同席を希望します。殺人鬼に関する重大な情報です」


 死生はパワードスーツの修復を急ぎ、ジュリアスとリリウムを連れて、機構の要塞のような本部へと向かった。



 世界治安維持機構の作戦本部は、都市の中心にそびえる鋼と魔力結晶で強化された巨大な塔だ。内部は無機質で、魔力モニターや戦術マップが壁を埋め尽くす。


 死生、ジュリアス、リリウムは厳重なセキュリティを抜け、広大な会議室に通される。エクシアが待っていた。


 彼女の蒼白いローブは新調され、光の翼のオーラが静かに脈打つ。彼女の隣には、機構の幹部と思しき数名と、別の「天使」が控えている。


 エクシアは三人を席に促し、事務的な口調で切り出す。


「お集まりいただき感謝します。昨夜の殺人鬼のコアを解析した結果、重大な事実が判明しました。まず、単独のイレギュラーではなく、同様の個体が複数存在します。少なくとも十数体、組織的な動きでダンジョン攻略者を狙っています」


ジュリアスが眉を寄せ、蒼い軽鎧を鳴らす。


「組織的? ただの化け物じゃないってこと? 誰が糸を引いてるの」


 エクシアは魔力モニターを起動し、殺人鬼のコアの解析データを表示。


「コアはダンジョンコアの派生物ですが、人工的に改変されています。超速再生や戦闘力の強化は、未知の技術によるもの。背後には、ダンジョンコアを操る集団――我々が『深淵教団』と仮称する組織が関与している可能性が高いです」


リリウムは修道服を握りしめ、震える声で呟く。


「深淵教団……神に背く者たち……? どうして攻略者を狙うんですか?」


 エクシアの視線が死生に向く。


「その核心が、次の議題です。教団のターゲットリストを解析した結果、最重要ターゲットが特定されました。黒四季死生、あなたです」


 死生は腕を組み、目を細める。


「俺?  理由はなんだ?  ただの攻略者がそんな大層な標的にされる筋合いはねえぞ」


 エクシアは新たなデータを表示。死生の戦績――単独でのダンジョン深部制覇、クリプトアダマントの回収量、殺人鬼との戦闘記録――が詳細に並ぶ。


「あなたの実力は、教団にとって脅威です。ダンジョンコアの安定供給を阻害し、彼らの計画を妨げる存在。特に、昨夜の殺人鬼を仕留めたことで、教団はあなたを最優先で排除する方針を固めたと推測されます」


 ジュリアスが苛立たしげに言う。


「つまり死生が強すぎるってのが原因? だったら、私たちも巻き込まれるってことね」


 リリウムは不安そうに死生をちらりと見る。


「死生さん……そんな危険な目に……神よ、どうかお守りください……」


 エクシアは冷静に続ける。


「治安維持機構は、死生への保護プログラムを提供します。専属の天使部隊の護衛、強化された魔道具の供与、教団の動向に関するリアルタイム情報。代わりに、教団の拠点特定とコア技術の奪取に協力してほしい」


 死生は低く笑う。


「保護プログラムは必要ない。教団が俺を狙うなら、逆にそいつらの巣を潰してやる」


 ジュリアスが肩をすくめる。


「相変わらずね。まあ、死生一人じゃ心許ないから、私もついていくわ。リリウム、あなたはどうする?」


 リリウムは一瞬怯むが、修道服を握り直し、決意のこもった声で言う。


「私も……死生さんたちと一緒に行きます!  神のご加護で、皆さんを守ります!」


 エクシアは微かに頷く。


「了解しました。治安維持機構は情報提供と必要装備の支援を行います。ただし、教団の戦力は未知数。殺人鬼以上の脅威が潜む可能性があります。準備を怠らないでください」


 会議を終え、三人は本部を後にする。死生はスーツの調整を頭に巡らせながら、ジュリアスに言う。


「教団か……ダンジョンより面倒な敵だな」


 ジュリアスは軽く笑う。


「あなたなら、化け物だろうが教団だろうが叩き潰すでしょ。リリウム、置いてかれないようにね」


 リリウムは小さく頷くと叩く。


「はい! 神の光を信じて、頑張ります!」


 死生の背後に、深淵教団の影が迫る。殺人鬼のコア、ダンジョンコアの秘密、そして教団の真の目的――新たな戦いは、死生を世界の闇の深部へと引きずり込むだろう。エクシアの視線が、彼らの背を見送る中、作戦本部のモニターには、教団の次の動きを示す不気味なデータが点滅していた。




 世界治安維持機構の作戦本部での会議後、死生、ジュリアス・エメリー、リリウム・オルレアは、深淵教団の脅威に対抗すべく準備を整えた。


 エクシアから提供された情報により、教団がダンジョンコアを悪用し、崇拝する「邪神」の復活を目指していることが判明。


 邪神は、ダンジョンコアのエネルギーを吸収し、世界を混沌に陥れる存在とされ、教団は攻略者を排除することでコアの支配を確立しようとしていた。死生が最重要ターゲットにされたのは、彼の活躍がコアの回収を加速させ、教団の計画を遅らせていたためだ。


 死生はパワードスーツを完全修復し、新たに強化されたクリプトアダマント製の装甲と高出力ブースターを装備。


 ジュリアスは蒼い軽鎧に魔力増幅のルーンを刻み、支援魔法の精度を向上。リリウムは修道服に神聖な加護の護符を縫い込み、ヒーラーとしての能力を最大限に引き出す。三人は機構から提供された教団のアジトの座標を頼りに、夜の闇に紛れて出発した。




 教団のアジトは、荒野の地下に広がる巨大なダンジョンのような要塞だった。


 入り口は魔力障壁で封じられ、殺人鬼のようなイレギュラー存在が哨戒している。死生はスーツのセンサーで敵の配置を解析し、ブースターで一気に突入。パルスブレードが青白く光り、障壁を切り裂く。


「行くぞ! 皆殺しだ!」


 彼の声が闇を切り裂く。

 ジュリアスが即座に援護。


「死生、突っ込みすぎないで!」


 彼女は風の魔法で敵の投擲武器を弾き、粘着陣で哨戒の殺人鬼を足止め。リリウムは祈りを唱え、金色の加護を三人に付与。


「神よ、我々に力を!」


 彼女の光が毒や呪いの効果を中和し、チームの動きを強化する。


 アジト内部は、ダンジョンコアのエネルギーで脈打つ不気味な空間だ。教団の戦士――黒いローブに身を包み、コア由来の強化を施された人間やイレギュラーが襲いかかる。死生はグレネードとミサイルで敵の陣形を崩し、バズーカで通路を破壊。


 殺人鬼型の敵が立体機動で襲うが、死生はブースターで対抗、ブレードで首を刈る。血とコアの破片が飛び散る。


 ジュリアスは魔法で敵を分断し、死生の進路を確保。


「リリウム、回復を死生に集中!」


 リリウムは頷き、加護の光を死生に注ぐ。スーツの損傷が癒され、彼の動きがさらに鋭くなる。教団の戦士は数で圧するが、三人の連携は完璧だ。死生の火力、ジュリアスの支援、リリウムの回復が一体となり、敵を次々に殲滅した。


 アジトの最深部、巨大な祭壇の間へ突入。そこにはダンジョンコアを模した巨大な結晶が浮かび、教団の幹部たちが邪神召喚の儀式を進めていた。死生はブースターで祭壇に突っ込み、バズーカで結晶を攻撃。爆発が部屋を震わせ、幹部たちが叫ぶ。


「愚か者!  邪神の復活は止められん!」


 死生は冷たく笑う。


「なら、てめえらから片付ける!」


 パルスブレードで幹部を斬り、グレネードで儀式の装置を破壊。ジュリアスは魔法で敵の魔術師を封じ、リリウムは加護で教団の呪術を無効化。戦いは一方的だ。教団の戦士、殺人鬼、幹部――全てが死生の刃と爆炎に沈む。血と灰が祭壇を埋め尽くす。


 だが、最後の一人、教団の高司祭が血まみれで立ち上がる。彼は砕けた結晶を握り、狂気の笑みを浮かべる。


「だが、勝ったのは我々だ!  邪神よ、今こそ目覚めなさい!」


 彼は自らの胸をナイフで刺し、コアのエネルギーを解放。祭壇が赤黒い光に包まれ、空間が歪む。巨大な影――邪神の片鱗が顕現し、咆哮がアジトを揺さぶる。

死生はスーツの全システムをフル稼働。


「ふざけやがって!」


 彼はジュリアスとリリウムに叫ぶ。


「下がれ! こいつは俺が叩く!」


ジュリアスがバリアを展開し、リリウムが最大の加護を死生に注ぐ。邪神の影が触手を振り下ろす中、死生はブースターで突進、全火力を邪神の核に叩き込む準備を叩き込んだ。



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