表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公道最速少女  作者: oroto
7/50

6話「戻ってきた日常」

久しぶりのギャグパートが主です。


 横川が失速したのを見た横谷瞳はいつもより深い角度でドリフトしていく。

 ――――勝った。

 それだけが、瞳の頭の中で鳴り響いていた。


 瞳はアクセルを抜いてエンジンのクーリング走行に入る。


 その後ろからは横川のシビックが近づいてくるのが見えた。

 だが、その時にはゴール地点を抜けていた。

 ゴール地点でクルンと回った瞳はそのまま頂上に戻っていく。


                               *


 ゴール地点では藤原達や兄貴も迎えてくれた。

「さっすがタコ! いやぁー、勝てるとは思わなかったよー」

「藤原、お前、バトルが始まってから『勝てる勝てる!』と騒いでいたじゃないか」

 と工藤。

「いいのよ。勝てたんだから!」

 と反撃をする藤原。

 俺がエンジンを切って外に出ると。

「流石、高性能車殺し(ハイスペックキラー)だ。横川が勝てなくて誰が勝てるんだか」

 と斉藤。

 俺としては、いつ負けてもおかしくないバトルだったけどな。

 その後ワイワイ騒いでいると、横川が戻ってきた。


「………………負け、か」

 とたっぷりと時間をかけながらいう横川。

「まったく、直登さんが敵わなかったわけだ」

 と独り言のように呟く横川。

 そして、帰って行った。

「なにか言えばいいのにね……」

 という涼宮。


                               *


 俺も全身の筋肉の緊張が解けてきたとき、兄貴が突然。

「なぁ、お前のハチロク、走らせていいか?」

「なんで?」

「乗りたいだけさ」

「兄貴なら……大丈夫か……」

「ありがとうな。制限回転数(レブリミット)とパワーバンドを教えてくれ」

「わかった」

 今兄貴に訊かれていることはエンジンを回していい限界値のレブリミットと最大トルク発生回転数から最大出力発生回転数の間のパワーバンドについてだ。

 どちらも重要なことなのだ。

「最大出力は10000回転ちょい、最大トルクは8000回転くらいだから、レブリミットは11000回転」

「とんでもない高回転型エンジンだな……」

「まぁ、けど6000回転くらい回れば思うように動くと思うよ」

「わかった。足回りとかはどうなってる?」

「アンダーステア気味。とにかく根性がないと踏めないよ?」

「わかった。多分、2,3往復はすると思うから」

「事故らないでね〜」

 と俺がキーを渡すとニコリと笑ってハチロクの元に向かう兄貴。


 エンジンに火が入って加速していくハチロクを見つめる。

「やっぱ、いい音だな……」

 とポツリと言ってしまった。

「へ?」

 と藤原。

「いや、普段は乗ることだけだから。こうやって外から排気音(エキゾーストノート)を聴くことがないから新鮮だなって思っちゃって」

「あぁ、確かにそうだね」


                                 *


 横谷直登は回転の伸びをみながら考える。

(やっぱり、1速ではそんなではないが、2速では6000回転くらいまで回らないとのろく感じる)

 ドリフトの体勢に入る。

 いっきにアクセルをかけてリアの荷重を抜く。

 ―――だが。

(スライドしない!?)

 思ったよりアンダーステア方向にセッティングされている瞳のハチロク。

(こんなのをドリフトさせてんのかよ……)

 正直、呆れかえる直登。

 2回目の挑戦。

 今回はスライドした。


 だが、角度が出てなく戻ってしまう。


(とんでもない……じゃじゃ馬だ)

 と思ってから、ドリフトさせるのはやめてボディや足回りの完成度を見ることにした。


(ボディはロールゲージを巻かずによくできている。スポット増しやガゼット補強が完璧なんだろう―――足回りもいい)

 さらには意外と気持ちよく走ってくれるハチロク。


(不思議だ。乗ると乗りにくくて苦戦すると思っていた。だが、6割程度なら思ったように動いてくれる。俺もここまで仕上げられたハチロクには乗ったことがない……)

 と感嘆する直登。


                                 *


 兄貴は3往復程度で戻ってきた。

「どうだった?」

「思ったより乗りやすいな。けど、全開には出来なかった……」

「全開にしたいという気持ちがあればできるよ」

 と助言をするも。

「そんなもんじゃない。とんでもないマシンだ」

「そうかねぇ……」

「今日はありがとうな」

 と言って帰ろうとした兄貴を―――

「兄さぁぁぁあああああああああん!!」

 ―――呼び止めようとして姉貴に先を越された。

「香織……?」

 と言って振り返った兄貴を姉貴は。

「今日は、瞳の勝利祝いでもしようと思っているんだけど。一緒にどう?」

 と訊かれて黙る兄貴。

 おそらく、こう思っているんだろう―――自分は妹と弟(当時)をほっといて、勝手に家出した身勝手な兄なのに、いいのか?―――と。

 もちろん。

「わかった。行こうか」

 と言った。

「じゃあ、みんな、ウチに来なさい!」

「「「はーい!」」」

 と6人、それぞれに言い方で揃う。


 その後、俺の家でワイワイ祝った(という名目で遊んでいた)のだ。


 で、次の日は休み。

 俺は昨日のバトルでマシンがおかしくなっていないかチェックをしていた。

 特に問題無し。


                                  *


 一方、同時刻にとあるマンションの一室(『組織』の寮)でベットで天井を見つめている少女が居た。

 横川春奈だ。


 勝負というのは、勝った方は気持ちがいいが、負けた方は良くないことが多い。

 勝負の負の面だ。

 だが、横川は決して悲しんでいるわけではない。

 ただ、悔しいだけだ。

 横谷直登に頼りすぎた自分の心が敗因。

 それだけ――

 それだけのはず―――


 なのに、なんでこんなに退屈なの――――――?


 いつも、行こうと思えばシビックで峠や首都高環状線(C1)に行って気を紛らわせられる。

 なのに、行く気にもなれない。


「どうして……?」

 もう、走る気力をなくしてしまったのか、横谷瞳に抜かされて、アクセルを戻してしまったあの時から―――


 そんなことを考えていても、時間は平等にすぎる、重い心のまま登校か、と心がさらに重くなる横川。


                                 *


 俺が翌日、登校すると横川はすでに着ていた。

「横川、おはよう」

 普通はバトルをすれば仲良くなるもの、だから少しはフレンドリーになれる―――

 返事がこない。

「横川?」

 声をかけても黙りこくっている。

「……なに?」

「い……いや、一昨日のバトルでなんか根に持たれたのかなぁって……」

「いいや、特に」

「なら、いいが……」

 と、一瞬横川の顔が変なものを見る目になった。

 なんか変なことを言ったか?

「で、あんたはなんで話をかけたの?」

 こいつ、不慣れな相手だといきなりぶっきらぼうになるのか?

「なんとなく……」

「なんだし……」

 と呆れたように窓の外を見る。

 なんというか、自分が信頼できる人じゃないと心を開かないというか、社交性がないなぁ……


 その後、なにもなく授業も受けて放課後、教室の外から。

「タコー! お客さん!」

 と藤原の声。そっちのほうに行ってみると。

「あ、中河さん」

「横谷さん、久しぶり〜」

 いたのは以前バトルをした中河(なかがわ) 里美(さとみ)だ。

 こいつはGT−Rのエンジン、RB26を載せたS30Zに乗ってるやつで、速かったな。

「今日はどうしたの?」

「この間さ、また勝ったんだって?」

「ああ、バトル?」

「そうそう、結構派手に抜いたって話だけど?」

「まぁ、派手と言ったら派手かなぁ……」

 むしろ早業と言った方がいい気がするが。

「勝ったのは最近速いって言われているシビックでしょ? 凄いよね!」

「ありがとう……」

 そろそろ終わりにしないとボロが出る……

「で、途中で悪いんだけど―――」

 と藤原が言ってきた。助かったぁ……

「―――私達が作る部活に入らない? 入ったらタコの秘密を教えるよ」

「う〜ん、入りたいのは山々だけど、書道部に入っちゃったからなぁ……」

「そっかぁ……まぁ、たまでもいいから顔出してね」

「いいよっ!」

 あぁ……俺がさっきまで相手にしていた女子よりも社交的、というか一般的だ。横川は特殊戦の隊員みたいだから疲れる。


 中河が去って行った後、藤原は。

「部員を欲しいんだけどなぁ……」

 とクラスを見渡す。って!?

「あ、横川さーん!」

 手遅れ……だった。

 これで、どこかの特殊戦隊員のような奴が入ってくるのか……疲れるぞ。不可知戦闘域に入ってチキンブロスにされるぞ。


 だが、そもそも社交性がない横川が俺達の部活に入ものか? という疑問が出てきた。

 なに、横川が断るさ―――――

 と、藤原がこっちに向かって。

「タコー! 入るって!」

「あぁー、そうなの?」

 ………………!?

 なんだってぇぇえええええええええええええ!!

 何故だ!? なんであんな集団とは関係のなさそうな横川が入ると言ったんだ!? 何故だ!? 何故なんだぁぁあああああああああ!!


 と俺が頭を抱えていると。

「横谷」

 と斉藤が声をかけてきた。

「なんだよ……?」

 こちらは無愛想な新入部員で大変なんだ。

「前にも言ったはずだが、あいつも『組織』の一員だ。藤原の近くによれるなら、新自動車研究部にも入るだろう」

「あんな無愛想なのが?」

「そこは否定しない……まぁ俺も似たようなもんだ。それに、俺達の近くにいればなにか変わるかもしれないし」

「……?」

 と俺はなんかの違和感に悩む。あっ。

「斉藤、横川となんか関係があるの?」

「ああ、同じ施設で育った中だから、一般的には幼馴染ってとこかな。って、なんで横を向いてクスクス笑っているのかな?」

「ふふふっ……いやいやいや、気にしないで……ふふふ」

 俺はある程度理解して(?)笑いがこらえられなかった。

 

 そんな俺のニヤニヤタイムを破壊したのは。

「斉藤ぉぉおおおおおお! なに俺の横谷に手を出してんだ!」

 工藤だった。

「なんにもしてねーよ! というか横谷から話しかけてきたんだ!」

「横谷にどんな淫らなことをした!」

「「何故『淫ら』が前提なんだよ、お前は!」」

 ここは斉藤と全力でツッコマさせていただく。

「横谷の身体を見ていて年中ムラムラしてて、とか!」

「「それはお前だけだ!」」

 てか、自分で言うのもなんだが「可愛い」と思うなら構わないが、「ムラムラ」は勘弁して欲しい。

「……横谷、お前変わっちまったな……」

「なにがだよ!」

「昨日は、あんなにベッドで俺を求めていたのにっ!」

「クラスの皆さんが誤解するからやめろ!」

「事実では―――――」

「無い」

 キッパリ言っておく。

「くそ……」

「少しは黙っておけ!」

くそったれ(シット!)

「英語の赤点候補が言うな!」

「ヤック……デカルチャー」

「もう無茶苦茶だよ!」

 もうだめか……ツッコミの処理速度が追いつかなくなっきた。クラスに変な噂が流れないうちに息の根を止めるしかない!

「ウォラァ!」

 ドンッ!

「グハッ……波動か!?」

「まだか……ッッッッッ!」

「アッ――――――――――――――――――――――!」

 工藤の息の根が止まった。


 で、見事に放物線を描いて飛んで行った工藤は――――

「「あ」」

 見事に涼宮の足元に墜落。

 そして、顔を上げれば―――――

「……横谷ではないが、天国だ……」

 天国と地獄は隣り合わせだった。

「って、すみませんでした! 事故です! 事故ですから! そんな『ひぐらしの○く頃に』のような笑い方はやめてください!!」

 工藤の弁解もままならず。怖〜い顔をした涼宮に部室に連れていかれて制裁(涼宮の足元に転がった時点からの記憶の消去)をされた模様。


 二人を追いかけて部室の中を呆然と見守る俺、斉藤、藤原、横川だった。


 横川以外にも、問題児はいた……


 ―――――ちなみに、作者のorototにも制裁が加えられたのは言うまでもない。

最後のほうは若干エロくなってしまったのは見過ごしてください。R15指定は避けたいのでそのような描写は無し(当たり前だが)工藤がなにを見たかは皆さんのご想像にお任せします。

当分このようなギャグパートが続くと思いますが、楽しんでくだされば光栄です。

感想お待ちしてます!


作者への制裁……痛かった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ