44話「安息」
今日もS2000の足回りをいじっていた。
「うーん、やっぱトラクションだな。そうだそうだ」
といいつつリアの減衰力を調節する。
しかし今は真夏、ガレージは死ぬほど暑い。
まだエアコンが壊れたハチロクよりはマシだが。
メグリユクーケシキイマナガレテイクー♪
宮藤から電話のようだ。
「もしもし?」
『もしもし瞳っち? 面白い話を訊いたんだけど』
「まだバトルはできないよ」
トランクを閉めつつ言う。
『そうじゃないよ、最近このへんの峠に出てくるっていう新参者の話』
「そんなのいたんだ」
『ほんの最近だけどね、出てきたのは』
「で、車種とかは?」
『80スープラだって。それなりの仕様だって』
「それで?」
『瞳っち相手にしないの?』
「まだマシンは未熟なんだから無理だよ。今だってセッティングしてるんだから」
『すぐじゃなくてもいいでしょー、相手がいる限りは』
「えー、まだいいよー。面倒だし、相手が挑んできたら考えるけど」
『いずれくるでしょ。瞳っちは自分が有名人ってわかっておくべきだよ。そのへんで走るなら絶対名前は出てくるんだから』
「けどほとんど挑みにこないよ」
『そりゃ大多数は速いって言われただけで尻込みするでしょ。一部の私みたいな腕自慢くらいしか挑まないよ』
宮藤がドヤ顔する様が目に浮かぶ。わざわざ『私みたいな』を強調してるし。
「まー、当分はS2000を仕上げたいし。バトルは無しってことで」
『えーつまんない、せっかくの夏休みがこれだけなんてつまらな』
ブツッ。
切らせてもらった、これ以上話し込んでもおそらくエンドレスになるだけだろう、うんそうだきっと。
メグリユクーケシキイマナガレテイクー♪
『なんで急に切ったの!!!』
「いやなんとなくね、これ以上引っ張っても仕方ないかなって」
『普通はここで長話でしょ!?』
「そこまでの描写はできないって作……いやなんでもない」
『……』
「そういえばうちの高校に転校するんでしょ。大変だったんじゃない?」
『いやー、大変だったけどやればできる子って言われてたから』
「……それって誰でも言われるよね……多分」
『いやいや、自慢になるけど今までテスト勉強ほとんどしないで赤点取ったこと無いんだよ!』
「まだ2回しか高校で試験してないのに……」
『きっと大丈夫よ、うん。レベル的にもそんな変わらないし』
「ふーん」
その後10分ほど話してから家の中に戻りつつ話そうと思ったが、工具で手がふさがっているし、スマートフォンのバッテリーも心配なので今度こそ本気で切ることに。
「じゃあ、また今度」
『えー、もう切っちゃうの』
……一体普通の女子は何分……いや何時間話してるんだ……?
「もう充電がないから、じゃあね」
通話を切ってふとバッテリー残量を確認すると残り15%を切っていた。危ない危ない。
家の中に戻るといつものことながら、姉貴がぐたーっとしていた。
この姉は寝るか俺をイジるかバイトするか大学行くか走る意外なにかないんだろうか。
「そういや姉貴、そろそろバイトの時間じゃない?」
「あー、本当にねー。行ってくるわー」
といいつつ部屋に戻る。
そして30秒で出てくる。
「じゃあ行ってくるねー」
「いってらっしゃーい」
ちなみに本人曰く、すぐに出れるような格好はしているのだとか、意外と効率重視な人だしな。
俺はシャワーをさっさと浴びたいので浴室へ。
「あれ、なんで音が?」
まさか姉貴が水出しっぱで出て行ってしまったのか。
浴室を見ると。
「ああああああキモチィぃいいいいいいい」
宮藤が我が家のようにシャワーを浴びていた。
「いつの間に来たんだよ!?」
「2時間くらい前からかなー」
「完全に電話する意味なかったよね!?」
「だってそっち行くと暑いし」
「というかどうやって入った……」
「香織さんが入れてくれたよー。シャワーの貸してくれたし」
「あの巨乳め……」
一言俺に言って出かけろや。
「で、なんで来たの?」
30分ほどたって、リビングで冷たい麦茶を飲みながら話していた。
「そろそろ帰らないといけないんだよ」
「そうなの……?」
「仕方ないよ……来年にはこっちに引っ越してくるかもしれないけど」
「そんなホイホイ引っ越せるものなの? 高校だと転校とかも面倒だろうに」
「まぁ……それは……」
一気に顔に陰りを見せる宮藤。
さすがにこれで根掘り葉掘り聞くほど無神経ではないし、うまく聞きだせるわけがない。
ここは一歩引いたほうがようさそうだ……がどう話題を変えるか。
「そういえば今、こっちから行って有城峠の反対側に住んでるんだっけ?」
うん、強引ながら話題変えられた。
「ちょっと遠いけどね、せっかくの夏休みだし瞳っちがどう変わってるか見たかったんだ」
「そんだけのために名前売ったの……? 普通にこっちくれば迎えたのに」
「いやー、あっちで走るのに飽きてたしちょうどよかったよ」
「そうなの……」
俺が次の言葉で悩んでいたら立ち上がり。
「じゃ、次こそマシン変えてでも勝ちに来るからね、それまでにしっかりS2000を仕上げておいてよね」
「もちろん!」
「じゃあ帰るね」
「えっ、いきなりすぎるでしょ!?」
「もっとゆっくり帰りたかったんだけどね、親うるさいし」
「このまま帰っちゃうの?」
「うん……シャワーありがと」
そのまま玄関へ向かっていく宮藤。
突然のことで呆然とし、見送ることを忘れかけていたとき。
「なんで呼び戻しにこないの!!」
と飛び戻ってきた宮藤。
「えっ?」
「普通は『待ってぇぇええええ!』とかって止めに来るでしょ! 危うく帰るとこだっよ!」
「いやいや急な話で呆然としてたんだけど!」
「そこで引き止めていい感じの音楽が流れながら感動のシーンになるはずだったのに!!」
「一体お前はなにを期待してるんだ!」
カーナシーミノー♪
「ほら天の声がいい感じな音楽を」
「いや違うと思うと! なんかドロドロした恋愛アニメみたいだよ!!」
「まったく、瞳っちはツッコミばっか成長して他が全然成長してないんだよ」
「余計なお世話だ!!」
「これじゃあ香織さんが手を焼くわけね……」
「大体いつ帰るんだよー!!」
「遅くても夏休みが終わるまで」
「遅い!! まだ2週間以上あるぞ!!!」
「そう……やっぱ私のこと――」
「……」
「なに?」
「いや……もうツッコむの飽きたなぁって」
「えっ、ちょっと部屋に戻らないで!! ねえ! ねえ!!」
*
ささっとシャワーを浴びて昼食づくりへ。
昨日のご飯が余っているようなのでチャーハンに。
「はいオリーブオイル」
「まずはオリーブオイルを……スルーして油や調味料を用意して」
「いやいや朝の番組だとオリーブオイルは定番だよ!!」
「あのイケメンがやってる料理とはベクトルがまったく違うんだよ!!」
「わかったわかった、まともなモノを食べたいなら待ってようねー」
数分後完成させ食べる。
「よく瞳っちはそんな食べて太らないね」
「なんでだかねー」
というか俺からすればそんなに大盛りには感じないが。
黙々と食べて20分ほど経った頃、唐突に。
「(だから貧乳なのよ……)」
「聞こえてるからね」
イラッ。
「(でもあんまり脂肪ないロリ体型なの……)」
イラッ☆
「(でも低身長貧乳ロリ)」
「ふざけんなああああああああああああああああああああああ!!!!」
「だって事実でしょ!!」
一気に残りのチャーハンをかきこんで、飲み込んでから。
「俺だって好きでこんなロリになってるんじゃないよ!!」
「いや――」
「わかる!? この前イ○ンに服買いに行ったら小学生向けの服のコーナーに案内された気分!!」
「いや知らないよ!!」
「あの『あの……もうちょっと大人っぽいのを……』って言ったら『なにこの大人ぶってるの』みたいな雰囲気出されたときの!!」
「普通に女子高生だよみたいなこと言えばいいんじゃないの!?」
「言ったよ、追加で『一応女子高生なので……』って」
「言ったんだね!!」
「けどなんかすごい微妙な空気になったんだよ!!」
「だろうね!!」
「それ以来買いに行くときは友達と行くことにしてるんだよ!!」
「そして小学生と高校生の姉妹に見られるんだね」
「……」
もういいや、片付けよう。
「(小学生に見られる女子高生……この設定とかってなんかのゲームでありそう……)」
絶対宮藤って姉貴と仲良くなれるよな……けどあんなのが二人になると思うと絶対に嫌だ。
*
とある峠の頂上。
直登はその峠を走る1台のマシンをみていた。
赤い80スープラ。
(あいつか……まさか近場にまで現れるとは)
仲間からの報告を受け、即座に現場にきてみるといたそのスープラ。
(サーキット上がりらしい走りだ。それをここまで峠にも合わせるとはな……だが……)
的確な減速、セオリー通りのアウトインアウトの走り。
(セオリーが通じないのが峠ってもんなんだよ)
とことん駄作を書く割には時間がかかる作者ですこんにちわ(オイ
ということで、ようやく投稿できました。
次あたりからスープラのドライバーの登場(予定)です。
まだキャラのディテール(?)が決まっていないんですけどね(白目




