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公道最速少女  作者: oroto
40/50

39話「FRとFF 後編」 


 2台のマシンがスタートする。

 FFのフィットはFRのハチロクに比べトラクションがかからなく、スタートダッシュで遅れる。

 だがそこはふたりとも想定済み。


(意外とフィットが伸びてくる……)

 だがすぐに第一コーナー。

 二台が減速。


 イン側の人にはバックミラーを確認し、アウトに膨らみ大丈夫か確認する。

 わずかにノーズをねじ込むようにしている。

 だが瞳はためらわずアウトに膨らむ。

 それを予想していたかのように引っ込める宮藤。

 だがテール・トゥ・ノーズ。


 そして二つ目のコーナー。

 少しの減速で十分曲がるコーナー。


 2台ともアクセルの開度を的確に操作し、抜ける。


                         *


 一方頂上では。

「FFってのは峠みたいな低速域だと以外と曲がったりするんだよな」

「確かにハルのFD2は結構曲がるしね」

 と納得しかけた藤原に横川は言う。

「FD2はちょっと特殊だとは思うよ、FD2にだけじゃなくて、基本的にはタイプRはサーキットベストだから、峠のスピードレンジだと逆にダメだったりするよ。あたしのFD2だ


って純正より柔らかめにしてあるし。……乗り心地を考えてそうしたとこもあるんだけどね」

「じゃあハルからみてあのフィットはどうなの」

「さあね、あんまり他の車の解析なんて得意じゃないし」

「まったく……ハルはそういうとこが冷たいんだから」


                         *


(ホンダ車って低速がスカスカなイメージがあったけど、あれは結構低回転からでもついてきそう……思ったより仕上がりがいい……)

 ストレート区間。瞳のハチロクとフィットの加速が試される。 

 必死に高回転まで回すハチロク、トラクションをうまくかけつつ加速させるフィット。


 拮抗する2台。

(そうか……あのフィットは現行RSベースだから6速なのか……)


 3速に入れる。その時。

(なんだ? シフトフィールがなんかシブいような……)

 変速には問題は無いが、なにか違和感を感じる。

(くそ……ミッションはミッションオイルかえただけだったしな……いつも気をつけててもこんなに酷使したらガタはくるか……)

 そして4速には入れず、ストレートエンドでレブギリギリまで回す。

 フロントのブレーキディスクがパッドに挟まれ発熱し光る。


 ギアを落とし、ハンドルを切りマシンを旋回させる。

 後ろから感じる威圧感。

(くそ……こんなときにこいつは……)


                         *


 中盤のセクションにいる直登。

(FFは終盤になるとフロントタイヤが熱ダレしてきてアンダーとの格闘になる……それがわかってるであろう宮藤なんだから、おそらくはFFが有利なこのコーナーで仕掛ける


だろうな。ま、瞳もそこは予想してるだろうが)


 直登が腰をかけているBNR32、前回の瞳とのバトルでエンジンブローしたのをこの前復帰させたのだ。

(R34にしようかと思ったが、やっぱGT-Rならこいつだな)


                         *


 ヘアピンを抜け、更にヘアピンを抜ける。


 そして待ち受けるのは直登が待機する中速コーナー。


(タイヤのことを考えればここでいくしかない……!)

 ブレーキング、インに入っていく瞳に対し、宮藤はアウトいっぱいにマシンを寄せる。

 巧みに左足ブレーキとアクセル開度を調整し、アウトのガードレールに向かうマシンをインに向ける。

 

 だが瞳も慌てない、冷静にチャンスを待つ。


(ここで並んだままいけばいける……!)

 この先はヘアピンと、FFが苦手とするところ。

(サイドバイサイドでは道幅を使えないからFFではつらいはずだ……そこが俺のチャンスだ……!)


 アウトとインが入れ替わる。

 どちらとも引かない。

 ギアチェンジをする瞳。

(くそ……またか……!?)

 繊細な瞳だからこそ感じてしまう違和感。ほんの一瞬だがそちらに気を逸らしてしまう。

 それが仇となる。


 フィットがほんの少し先に出る。


 ブレーキングからの展開も取られ、攻守が逆転する。


                         *


 その一部始終を見ていた直登は異変に気づく。

(あそこで瞳が一瞬気を取られたように見えたが……やっぱおじさんが言っていた通りか……)

 フィットをダイナモにかけるときにハチロクのメンテをしているあのチューナーから聞いたこと。

『瞳ちゃんのハチロクは、正直なとこエンジン、足回りどころか駆動系までオーバーホールしないといつ壊れてもおかしくない状態にはなってるんだよ……。本人にはまだ伝


えてないけどね』

『なぜ伝えないんですか? バトル中に故障したら最悪命にも……』

『キミらの親父さんがね、「俺の子供の誰かがあのハチロクを使うなら、いずれは壊さないとな」って遺言え言っててね。』

『どういうことなんですか?』

『あくまで君たち3兄妹の誰かの練習用にさせるつもりだったらしいからね。今の時代、ハチロクでバトルするのも難しいだろうからもしも乗り換えしたくないって言うとかな


ら、どうにか走行不能にして諦めさせて欲しいって。そうでないと次のステップにはいけないだろう、ってね』

『だからミッションのことはあえて触れずに足回りだけリフレッシュを……』

『そうだよ、多分のあのハチロクは駆動系統が結構ガタガタだし、それに全てを直そうとしたら新車が買えるかもしれないくらい金もかかるしね……』


(せっかくリフレッシュしたマシンからまたガタが、よりによってバトル中に出るのは精神的に来るだろうな……だが、それで宮藤に勝てるかはまた別問題になりそうだ……



                         *


(くそ……余計なことを考え過ぎた……けど次はこっちの番だ)

 とフィットのリアを睨む。


 一方宮藤は。

(計画通り……ここから逃げ切ればどうにかなる……!)


 またしても長いストレート。

 だがストレートの速度が拮抗するのは確認済み。


 次のブレーキングに備えマシンをアウトに寄せる。


 瞳もここでは仕掛けない。

(定番だがいくしかない……5連続ヘアピン……)

 今ここでがむしゃらに突っ込めばタイヤを消耗するだけで終わるであろう、だがしっかり5連続ヘアピンまでにオーバーテイクの組み立てを出来れば突破口はある。

 走りこんだ地元のことをじっくり考え、ラインを絞る。


 とりあえずはフィットにピッタリついていく。


(実力は拮抗してるはずだ……なら突破口はある)


 対する宮藤は本人にしては珍しいほどの興奮。

(ついに抜けた……あの榛名のハチロクを!!)


 だからといって気は抜けない。

 むしろこれからフィットが苦手とする区間に入るのだ。


 タイヤを痛めず、かつ瞳に抜かれない範囲で攻める。


                         *


 香織は中盤セクションで観戦をしていた親友からの連絡で、瞳が抜かれたことを知る。

(まぁ、予想通りね。けど瞳にはまだチャンスはあるわ)

 そこが今いる5連続ヘアピンの4つ目。

(FF乗りからすれば、タイヤが消耗してからあのコーナーはちょっと嫌なのよね。その辺のドライバーならともかく、走りなれた瞳があそこでミスをするとは思えないし)

 だからと言ってFFがヘアピンが苦手といわけではない、むしろ不安定な後輪駆動車より安定して踏めるFFのが速いというパターンもあるようだ。


 直後、香織の携帯が着信音を発する。

 

 シーズーカニウツリユクー


「はい、沙織ちゃん?」

『タコが抜かれたって本当なんですか!?』

 相当慌てているようだ。

「本当みたいわよ、友達から曰く、中盤で抜かれたみたいね」

『それで……大丈夫なんですか?』

「大丈夫よ、今まで通り、しっかり抜き返して戻ってくるわよ」

 香織は確信したように答える。


                         *


((もうすぐ5連続ヘアピン……!))

 2人の思考が重なる。だが本質的には違う。

 瞳はどう攻めるか、宮藤はどう守るか。


 一つ目のヘアピン、二台ともレイトブレーキングで突っ込む。

 だがこれというほどの変化はない。

 瞳も仕掛ける様子はない。


(いつ来るの? こっちはタイヤも十分なんだよ)


 宮藤に焦りはない、むしろ瞳を煽りたいくらいだ。

 だがそんな動きをすれば一気に隙をつかれるだろう。


 ハイレベルにセッティングされた足回り、イン側のタイヤが浮くんではないかというほどマシンが傾くフィット。

 曲がらないはずのFFをとことん曲げるために追い込んだ足回り。


 それを後ろから見て、その完成度に驚く瞳。

(こいつ……どこのショップで仕上げたんだ……?)

 ここまでの仕上がりと腕なら、どこかしらにショップのステッカーがあってもおかしくないはず。だがそれがない。

(今はそんなことより抜くことだ……!)


 だが勝負はここだけではない。


 2人の闘争心が最高潮に達する、それがこの榛名名物の5連続ヘアピンでの実現なのだから、観客のテンションも上がる。

 このバトルで何回も繰り広げられたテール・トゥ・ノーズがここでも起こる。

 むしろ離れたときが少ないのではないかと思われるほどの接戦。


 タイヤの悲鳴とも言えるスキール音を響かせながらコーナーを抜ける。

 そして4つ目のヘアピン。


 瞳は接近したままなにも仕掛けず、短いストレートを挟んだあとのヘアピンに突っ込んでいく。


 だがそこでも形成は逆転できず。


                        *


 それを眺めていた香織。

(まぁ、最初に思いついたのとは違うけど、堅実ね)

 と思いつつ2台の音がするほうに視線を向ける。

(確かにアレなら相手を欺く抜き方になるでしょうけど、無茶だけはしないでね瞳)


1週間くらいで投稿できました。

この以外とサクサクとかけて作者も驚きを隠せません(オイ


次回でVSフィットは終わりですね。


次回のライバルについても考え始めなければ(汗

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