38話「FFとFR 前編」
宮藤との暮らしに不安は抱いてはいたが、案外普通な奴だった……のだが。
「掃除~」
宮藤の部屋でも掃除してやろうかと部屋に入ると。
「ん、パソコン?」
ノートパソコンが置いてあった。
それも、普通の人はあんまり知らないような、主な使用法がゲームに使われるような、安いやつだ。
「しかもこれ、HDDの容量多かったんだよなぁ……」
とつぶやきつつ、さっさと掃除機かけて出ようと思ったらマウスに触れてしまった。
どうやらモニタの電源が落ちていただけのようで、俺がマウスに触れた弾みで画面がついてしまったようだ。
デスクトップのアイコンに俗にいうギャルゲらしきのが……。
ダメだ……みてはダメだ……ッ!
カチッ
「…………見なかったことにしよう」
俺はそのままなにもせず外に出た。
そのまま姉貴の部屋の掃除をしようと行くと。
『ふふふ……妹キャラが一番ね……この―――』
これ以上聞くといろいろまずそうなので離れる。
この家にはまともな奴はいないのだろうか……。
自分の部屋に戻ると。
「ほえー」
「なに人のパソコン勝手に見ちゃってるのぉおおおおおおおおおおおおお!?」
「瞳っち……百合が好きなの……?」
「しかもそういうとこだけピンポイントにみちゃってるの!?」
「大丈夫だよ、人には隠し事だってあるんだろうから……」
「それは姉貴から押し付けられたものだし!」
「へー」
「その気のない返事はやめて」
「じゃあこっちの前々からインストールされてそうな姉ゲーは……」
「もうやめてええええええええええええええええええええええ」
泣きついたのが功を奏したのか、なんとかPCから離れてくれた。
「百合……姉……そうよね……小さい時からだから……」
「だからその話はやめろ」
*
時は変わって夜中。
「タコの幼なじみとは、世の中は狭いもんだねー」
と涼宮。
「むしろ私から近づいていったようなものだけどね」
微笑ながら宮藤。
こいつ、しっかり人によって態度を分けているようだ。
まぁ、俺や姉貴、工藤は小さい頃からの知り合いだからそこまで気を使わなくても、他のメンツからすれば初対面だし。同い年に敬語もおかしいし。
「そういや藤原は?」
「ああ、あいつなら家族旅行とか言ってたなー。だよね?」
「うん、伊豆の方だって」
また微妙な……せっかくなんだから遠くにいけばいいのに。
「まぁ、そんなことより。いつバトルするの? 俺はいつでもいいけど」
「まだこっちのセッティングが終わってないのに、中途半端な車で瞳っちに勝てるわけがないし」
「セッティングはどれくらいで終わる予定なの?」
「来週かな、といっても慣らしとかもできてるだろうから、来週の土曜にはできるよ」
「わかった」
*
次の日、直登のガレージにて。
「というわけでなんとか榛名山近くの宿を入手できましたよ」
「また豪快なことを……まぁ確実と言えば確実だがな……」
「ところでセッティングまだですかー?」
「もうちょいなんだがな、瞳たちと走ったおかげか、少し早く仕上がりそうだ」
といいジャッキを下ろす直登。
「これで8割方は仕上がった感じだ。あとはダイナモでちゃんとした数値をみて考える」
「ダイナモ……ってなんですか?」
「正式名称は『シャシーダイナモメーター』、ローラーの上に駆動輪を置いてローラーを回転させてその車のパワー、トルクを測るものだ」
「ということは、理論値じゃなくてちゃんとした数字で出るんですね」
「そうだ」
数十分後、二人はとある工場に。
「お久しぶりです、高城さん」
「久しぶりだな~、じゃあ早速例のフィットを」
「わかりました」
外で直登が戻ってくるのを待っていた宮藤。
(すごいショップ……パッと見、レース用のやら、普通のチューニングカーとか)
見えているのは4,5台ほどだがシャッターなどで見えない分も含めると相当ありそうなところ。
「宮藤、いくぞ」
と言われ、ついていく宮藤。
ガレージのようなところに、ローラーや冷却用だか高速域での吸気を想定してるのか巨大なファンがある。
直登や直登と一緒にきた気前のよさそうな中年の男性がテキパキとセットし、測定を始めた。
走ってるのをみるのとは違う、空ぶかししてるのとも違う音はするのに動いていないという変わった状況で少し呆けていた宮藤だったが、測定が終了したらしく、数値をみている二人。
「思ったよりは出てますね」
「みたいだな、フィットでこれは上出来だろう」
「ありがとございます」
その二人の後ろから見ようとする宮藤。
だが、出ているのは二本の線が書かれているグラフで、どこをどう読めばいいかわからなかった。
困っていたところ、直登の解説。
「この線がパワー、こっちがトルクだ……と言ってもわからないだろうから、数値だけ言うと……パワーが168馬力、トルクは18.2kgm。ま、瞳のハチロクとよりは速くはなったのかな」
「それなら瞳っちに……」
「車だけならな、それで勝てたら苦労はしない」
「大丈夫ですよ、耳にたこが出来るほど言われてますし」
*
その夜。
まもなくバトルというところ、特に地元ではない宮藤はコースを覚えなければいけない。
ギアチェンジしながらコーナーを抜ける。
FF特有のアンダーだが、それさえわかればセッティングである程度解消したり、それを逆手にも取れる。
それでもFFは構造上絶対トラクションの問題がついてまわる。
いかに荷重をうまく移動させトラクションを稼ぐか……これは瞳のハチロクの駆動方式であるFRも変わらないが、やることは異なるのだ。
以下にリアに荷重をかけるかのFRといかにフロントから荷重を逃がさないように加速させるか。
一気に4速から2速へ。
アクセルを巧みに操りマシンをインに寄せる。
ハンドルを戻しながら加速。
スーパーチャージャーのリニアな過給が小柄なフィットを加速させる。
その上から下ってくる瞳のハチロク。
細かなアクセルワークで確実にリアにトラクションを与える。
逆に踏むときは思いっきり踏み、スライドを発生させる。
だが下手に回転数が落ち込んでいるとできかったりもする。
しかし、このハチロクを知り尽くしている瞳にとってはそれは障害にすらならない。
実力もマシンも拮抗する二人。
瞳も、今までのバトルとは違う高ぶりを感じずにはいられなかった。
(どんなにフィットをチューニングしたって、勝ってやる……!)
*
そして土曜日。
どこから噂を聞きつけているのがか、ギャラリーが集まっている。
「意外と集まるもんだねー」
とギャラリーを見渡しながら宮藤。
「こんなもんだよ」
とハチロクのボンネットに腰掛けつついう。
5連続ヘアピンのところには香織がいた。
FFのインテグラ使いと、瞳のことを熟知していること、それら知識から推定し、ここにしたのである。
直登は中盤の高速コーナー後のヘアピン。
(ここだな……あいつらがなにかをするとしたら)
頂上ではスタートについて話しあう。
「スタートは並んでするけど、左右どっちに車を置くかはそっちが決めていいよ」
「地元のハンデってところね。……じゃあ右側」
右側となると……仮に横並びでいったらアウト側になるところだな。まぁ予想通りだ。
「じゃあ始めようか」
「うん」
*
2台のマシンが並ぶ。
工藤がカウントをする。
「5,4,3,2,1……GO!!」
地を蹴るようにスタートする2台のマシン。
お互いの意地がぶつかる。
昨日投稿したつもりが、投稿確認画面で確認をし忘れていたようですorz
次回からは気を付けたいと思います。
さて、今回は前回から時間が開いてしまったので、バトル直前で切らせて頂きました。
なるべくバトルパートはサクサクっと書きたいのですが、そうもいかないのが事実(白目




