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公道最速少女  作者: oroto
35/50

34話「BNR32対ランエボⅨ 決着」


 一気に均衡が崩れ、GT-Rがペースを上げる。


 ランエボも追撃する。


 ここで振り切れなければ負ける、杉村はそう思う。


 わずかながら、工藤のランエボは離れていく。


 まさか、と思いつつもペースを上げる。


                      *


 頂上にていつものメンバーで話しあう。

「工藤は意外と策士なんだよな。まぁ車から降りればただのバカだけど」

「前半は知らなかったとして、後半は同意」

 とシビックに腰掛けながら横川。いつもの言動からかあんまりいいイメージはないらしい。

「ま、走りなれた工藤が勝つんだろうけどな」

 と斎藤。斎藤としても外からきたのに負けて欲しくないという願望もあるのだろう。

「タコとしてはどうなのー? これって工藤は勝てるの?」

 と涼宮がいつもの若干伸びた口調の上に、ニコニコしながらいってくる。

「さっきも似たようなこといったけど、車の仕上がりは杉村のGT-Rのが上だし、ドラテクも並以上そうだしね。ま、工藤だって並以上だしコースに慣れてるとこが大きいかな」

「てことは5分5分?」

「いや、正直つまらないけど6:4ロクヨンで工藤かな」

「でも4の文は相手にもチャンスは?」

「あるね。峠ならではの不確定要素もあるし」


                    *



 二台のマシンが峠を下る。

 その後ろを走る工藤はわずかながら、離れていくGT-Rをにらみながら考える。

(思ったよりも速い、マシン自体もいいみたいだな)


 だがほとんどコースは下ってしまっている。

 そろそろターンの地点が出てくるはずだ。


 本来ならゴール地点目前のコーナーを旋回しながら前の特徴的なテールライトをみつめる工藤。


 杉村は多少焦っていた、確かに離れているのだが、決定的な差になっていない。

 ペースを上げているつもりでもミラーに写ってくる。



 そうこうしていると折り返し地点だ。

 パイロンがおいてあり、そこでターンするのだ。

 このようなとこでは接触を防ぐためにお互い了解しなくても、本来公道で走る車線の左側から侵入し、反対側に抜けるという暗黙のルールがある。


 もちろん二台も従う。


 杉村は丁寧に減速しグリップで回る。

 そして持ち前のパワーで一気に加速していく。


 その2秒、3秒と少し間を開けて侵入してきた工藤は豪快にスライドさせて回った。

 まるでWRCに代表されるラリーのような走り。ギャラリーからは歓声が湧く。


 そしてほとんどオツリを出さずに加速していく。


 これによりわずかに差が縮まる。


 それをミラーでわずかながらみていた杉村は寒気を覚える。

(なにか今までの走りとは違う……!)

 そう気づいたときにはどんどん近づいてきていた。


(今まで抑えていたのか、しかも俺につかず離れずのペースで)

 これはそう容易なことではない、並大抵のテクニック、そしてなにより重要なのはメンタル面だ。

 離れていく相手をみて離れまいとペースをあげるのではなく、近づけるのにあえて離れるようにするのだ。

 普段の工藤と違うというのは、こういうところなのだ。


 追い上げる工藤だが、やはりストレートでは分が悪い。

 杉村からすればストレートでしか勝てないというのは屈辱だが、そう考えたところで追いつかれる。

 だがランエボも瞳のハチロクなどに比べれば、ストレートは速い。

 


 そして、工藤の走りは今までと同じグリップ走行だが、動きが先ほどがまったく違う。

 コーナーへの進入時のブレーキングポイント、一番インにつくクリップの位置。


 どう考えても下りの時点ではわざと遅く走っていたようにしか思えない。

(いや違う、工藤くんはタイヤを消費しない程度で走っていたんだ。けどこっちは下りで思ったよりも消費してる……)


 今の工藤はタイヤをフルに使ったアタックをしている。


 そうこうしていると高速区間も終わり五連続ヘアピン。

 ここでは完全にコーナリングの差が出てしまう。


 決して杉村のコーナリングが遅いわけではない、彼でも並以上のテクニックはある。

 マシンの性能も合わせても工藤とイーブンだろう。

 なにが違うのかといえば、瞳も言っていたことだが、走りこみの差である。


 ランエボは完全にGT-Rを射程圏に置く。

 榛名山、上り最速の男の逆襲の始まり。


 五連続ヘアピンに侵入、ブレーキングで一気に差を詰めてくる。

 走りは大して変わらないが、下りのときと比べてスピードは段違いだ。

 ギアチェンジをし、アフターファイヤーを吐き出す。


(AYCのセッティングを書き換えて正解だ。思ったように曲がる)

 比較的『補助的な介入』だったランエボⅨのAYCのコンピューターを書き換え、『すべてをサポート』するような感じに仕上げたのだ。

 もともとそのようなパーツもあったので、簡単にできた。

 そしてコーナーの出口。

 GT-Rが近づく。


 そして二つ目。

 ブレーキングで詰める。

(突っ込みなら勝てるが、立ち上がりはあっちか……)

 と冷静に分析しながらアクセルを踏み込んでいく。


 だが、次ので追いつくと踏んだ。


 その読みはあたった。


 一気に射程圏内に近づく。

 状態としてはテール・トゥ・ノーズ。


 そのまま4つ目のコーナーへ。

 アウトからいっきに畳み掛ける。

(アウトからくる……?)

 と勘ぐる杉村だったが。

(いやインか……!)


 工藤は多少タイトな旋回をしインを刺そうとする。

 だがノーズを入れるスペースがない。

(このライン、まさか……)

 工藤のとっているラインは、わずかながらでもアクセルを長く踏めるラインなのだ。

 アクセルが長く踏めれば相手よりも加速区間が伸び、パワーが少なくても追いつける可能性ができるのだ。


 だが、工藤が稼げたのはほんの数メートル、だがそれでGT-Rに並ぶことを可能にした。


 いっきにアウトからかぶせていくランエボ。

 先程まではストレートでのマージンも含めて、抜かれずにいたGT-Rだが、これでは一溜まりもない。

(なんて旋回性能……いや、ドラテク……!)

 と工藤を賞賛する杉村。


 そして前に躍り出る工藤。


                            *


 頂上でそれを工藤が抜いたという情報を聞いた俺ら。

「やっぱ工藤だな、あそこでいくとは」

 と斎藤は絶賛するが、俺は逆にイライラしていた。

「いや、これは大失敗だよ」

 と俺がいうと周りの空気が凍りつく。

 だが、俺はそんなことをかまってられないほど焦り始めていた。

(あんなところで抜くなんて、あいつの頭はわたでも詰まっているのか……?)


                            *


 工藤は工藤で、当たり前だが瞳が考えていることには気づかず走っている。

 榛名の登りを疾走するランエボ。


 だが5連続ヘアピンのあとの直角コーナーを抜けながら。


(GT-Rが離れない……?)


 先程までのペースなら、今頃はギリギリバックミラーに映る程度だと踏んでいた工藤。

 だがテール・トゥ・ノーズとまではいかないが、ピッタリとついてくる。


(まさか、俺の走行ラインを参考して……!?)


 そう、杉村は走りなれた工藤のラインを参考にし、追いすがっているのだ。


 そして、最終コーナーから先はわずかながらストレート。

 逆転のチャンスはまだあるのだ。


(くそ、こんなことならもっと終盤で抜いておけばよかったな……) 

 と後悔する工藤。


                          *


 またしても頂上。

「てことで、あのアホはまた抜きかえさてる可能性を自分で作っちゃったわけ」

「タコってそこまで考えてたんだ」

 と藤原。

「お前はそこも考えてないのかよ……」

「バトル中そこまで頭回らないしー」

「まぁそうかもしれないけど……」

 そういう戦略も大事だと思うんだけどなぁ……。

「なにはともあれ、たぶんこの後は少しデッドヒートになると思うよ」

「瞳は、どこが勝負のポイントになると思ってるの?」

「多分、最後のヘアピンを抜けてからだな……」


                          *


(多分あいつがしかけてくるなら、最後のヘアピンの後からだ……その前からも油断できないけどな……)

 焦る工藤。

 後ろから迫るのは日本のスポーツカー史に残る一台、BNR32。


(こうなりゃ、限界の限界で逃げるしかねぇよな!!)


 工藤の魂に火がつく。

 榛名登り最速の意地という名の魂に。

 

 今までの走りからは想像もできない、スキール音を鳴らしながらの走りをする工藤。


 それでもすんでのところでついてくるGT-R。

(くそ、やっぱ甘く見すぎていたな……こりゃ負けるか……? いや余計なことは考えるな)

 やはりストレートの終わりではGT-Rが追いついてくる、だがブレーキングで離れる。

 ほぼ一世代前のBNR32をここまで走らせていることを考えれば、杉村のテクに、GT-Rの完成度はかなりのレベルにある。


(ここで離せなければ、ゴールまでもつれて行ってしまうな……)


 2連続ヘアピンへ侵入。

 

 工藤はギリギリのレイトブレーキで侵入をする。

 そしてわずかにスライドさせながらコーナーから脱出する。

 俗に言う四輪ドリフトだ。

 GT-Rは丁寧なグリップで抜けていく。

 ランエボがわずかに離す。


 2つ目のコーナー。

 ランエボはまたもスライドさせながら侵入。

 GT-Rはグリップ走行でクリッピングポイントを奥にとる。

 加速重視のコーナリングだ。


 直列6気筒の名機、RB26が吠える。

 レスポンス重視の400馬力がそのパワーを発揮する。


 いくらブーストアップでそこそこチューンしてある工藤のランエボとはいえ350馬力出ていればいいほうである。

 そしてGT-Rは直線番長なわけでもない、そうならばここまでついてこれるわけがない。


 ヘアピンで稼いだ差などすぐに詰められてしまう。

 そしてストレートエンド。

 先ほどのレイトブレーキングやスライドさせたコーナリングでコーナリング性能が鈍っているランエボでは離せない。

(タイヤはもうズルズルだ、あとは一か八か……ッ!)


 杉村も

(いける、ギリギリだけど最終コーナーで抜ける!)


 最後のヘアピンをスライドで抜けるランエボ。

 それに食いつくGT-R。

 そして加速勝負へ。


 アウトに膨らむランエボ。

 ギリギリのインを通るGT-R。

 横並びになる。

(こっちももタイヤが……膨らまないで……!)

 と祈る杉村。


 アクセルを踏みたいのをこらえつつ出口を待つ。

 そしてストレート。

 いっきに踏むが予定よりほんのわずか遅れたせいか、思ったよりも車速がのびない。


 一方先にアクセルを踏めた工藤は予定よりも車速が伸びる。


 二台はサイドバイサイドのまま最終コーナーへ。


 先ほどと逆向きのコーナーのため、杉村がアウトへ、工藤がインへ。


 最終コーナーへ侵入。


 工藤はまたまたスライドでアンダーを消す。

 杉村はアクセルワークでアンダーを消す。


(このままいけば、ちょうどストレートの方向とちょうどピッタリいく!)

 工藤がステアを戻しながらアクセルを踏み込む。

(頼む、曲ってくれ!!)

 ゆっくりをアクセルを踏み足す杉村。


 二台の4WDのマシンが横並びのままゴールラインに飛び込む。


                          *


 俺は僅差になることを見越して携帯で映像をとっていた。


 予想通り二台のマシンは僅差でゴールラインを通り過ぎた。

「どっちが先だったかわかった!?」

 と藤原。

「ちょっと待て待て、これからパソコンにつないで……」

 とノートパソコンを取り出す。

「そういえばタコっていつの間にスマートフォンにしたの?」

「いやー、この前この端末だけ安くてつい」

「変なところにお金使ってるのね……」

 と呆れる藤原。いいじゃないか、好きでやってるんだし。


 このようなときに限って読み込みが長く思える。

「まだなの!」

 とバタバタしながら抱きついてくるのは……涼宮だ。


 そのときドライバー二人がゴールの少し先で停車させた車から降りるのを視界の端で捉えた、どうやら疲れているらしく、こっちに歩いてよってくる。


 と、読み込みが完了し、映像データをパソコンに転送し早速スロー再生をする。


 先にゴールしているのは工藤のランエボだった。

 ランエボの前輪がゴールを超えたときに、GT-Rのフロントリップの部分がゴールラインの真上にきた感じだ。


「工藤、勝ったよ!!」

 と俺は工藤のノートパソコンの画面を見せる。


 こっちにふらふらっとくる工藤は笑って手を振って、そのあと杉村のほうを向いて、杉村と握手した。

 

ようやく投稿できました! おまたせしてすみません。


どっちが勝ったかは次回に伸ばすか考えたのですが、こんだけ待たせたので結果も収めましたww

なので今回は少し長めです()

これで工藤の話は終わり、次回は瞳とハチロクの話に戻ります。

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