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公道最速少女  作者: oroto
31/50

30話「ハチロク復帰」


 上りに突入した工藤はそこで旋回性、加速性を確認する。


(加速は悪くねえ。問題は……)

 ブレーキを踏みこみターンイン。

 文句なしの姿勢、だが。


(やっぱダメだな)

 これでも気に入らない模様。


(やっぱもっとステアにリニアに反応しねえとダメだ)


 ヘアピンを立ち上がり、急な榛名山の上りを駆け上がっていくランエボ。


 前にも述べたとおり、上りでは下りよりアンダーステアが強調される。今はそれが顕著に出ているのだ。


 だが、アンダーといっても、スーパーAYCとACDのおかげで旋回性能は抜群だ、だが。

(旋回中はいい……けど、最初の遅れが気になる……)


 工藤はもう少しステアを切ったらすぐに反応する感じが欲しいのだ。

 今のでは反応が遅い。


                               *


 頂上で待っていると工藤が戻ってきた。

「ダメだぁ! ステアの反応が悪い!」

 と言う工藤に俺は。


「少しセッティングをイジるか。とりあえず降りて」

 ドアを開けて降りてきた工藤。

「で、なにをイジんだ?」

「とりあえずはトー角でいけるよ」


 トー角とは、車を真上に見たとき、タイヤが外側に向けるか、内側に向けるかのセッティングで、変え方によっては走りも変わる。

 進行方向に大して内側を向いているのがトーイン、その逆がトーアウト。


「基本的にはフロントをトーイン、リアをトーアウトにすればオーバー気味でステアの反応もよくなるから、それにセッティングしよ」

 といってランエボをジャッキアップさせる。


 少しの間、斉藤と工藤に作業させ、セッティングを変える。


 また少し経ち、工藤が出ていく。

「今度はマシになることを祈るよ」


 4WDのトラクションを利用したロケットのような加速で出て行った工藤のランエボ。


                               *


 早速第一コーナーでセッティングの効果を実感する。


(やっぱ横谷……あいつは天才だな)

 とつくづく思う工藤。


 少し話を聞いてセッティングし直しただけでこの違いだ。

 さっきとはまるで別の車、とまではいかないがイメージしてる動きには近づいている。


 若干直進安定性が無くなったが、それは許容範囲。


 わずかにスライドさせながら旋回するランエボ。


 ただこれは調子に乗っているだけである。

 本気のバトルなどでは滅多に使わない。


 だが、この走りをするということはよほど気に入っているのだ。

(いいねー。この旋回性能がたまらない!)


 GT-RのFRのような旋回性はないが、安定性能と旋回性能の塩梅がちょうどいいのだ。


 そうこうしているうちに下りきり、ターンして上りへ。


 上りでの動きも文句ない。


 下りほどの旋回性能ではないが、これで十分だ。

 パワーも十分というほどある。


                               *


 頂上に戻ってきた工藤は。


「最高のマシンになったぞ!」

 と言いだした。

「ねえ」

 と俺は暴走寸前の工藤を抑える。

「なんだ? お前の言うとおりにしたら最高になったぜ?」

「工藤は昔から元の状態からよくなるとすぐ最高最高騒ぐ癖があるんだから……少しは頭冷やそうか?」

「元の目のハイライトを消した顔も怖いけど、笑いながら言われるのもかなり怖いんですが……」

「はいはい、わかったから。隣の乗せて」

「はい?」

 こいつは耳が悪いのだろうか。

助手席となりに乗せてって言ってるんだけど」


 工藤は数秒フリーズした後。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「なにすんだああああああああああああああああああああああああああ!!」

 突然お姫様だっこで俺をランエボのほうまで連れて行こうとした。


 それを見ていた藤原達は。

「タコが誘拐されたー!」

「早くしないと危ないことされるんじゃない!?」

「きっとここでは言えないことを…!」

「工藤扱い悪すぎ笑えない」


 ということで工藤の助手席。


「じゃあ、しっかり踏んでよ」

「お前に踏まれた……ぶぉっ!」

 顔面にグーを入れつつ。

「とっとと走れ」

「はひ(はい)……」


 俺のハチロクでは体験できない加速をしていくランエボ。


 減速してターンイン。

 限界領域での走りは……?


 わずかにフロントが逃げている気がするが、工藤は初期反応の良さに気を取られて気が付いていない。


 下りではわずかな感じだけど、上りだとどれだけの影響があるのか……。


 工藤はこのように一つのことに気を取られて裏での問題は気付かないことが多い。

 ただ、このフロントが逃げるのはトーを調整した弊害ではないだろう、おそらく別の問題。


 フロントが固くて荷重が十分に乗ってないなが考えられる。


 そうこうしてると下りのゴール地点でターン。

 ―――上りだ。


 やはり、フロントが逃げている。

 流石に工藤も気づいているようだ。


「工藤、気づいてるでしょ?」

「まあな……完全にフロントが逃げようとしてる。こりゃアンダーもでるわな」

「上に戻ったらフロントのダンパーを調整するよ」

「わかった」


                                    *


 そのようにしてセッティングを詰められていく。


 セッティングを詰めた日の次の日。

 つまり工藤との同乗走行の次の日。


 ついに俺のハチロクが復活する。


 朝おじさんのショップまで取りにいく。


「じゃあ、これでオーバーホールとかは全部完了だから。セッティングとかはできる?」

「大丈夫です。ありがとうございました!」

 と頭を下げ、ハチロクに乗り込む。


 キーを捻ると響き渡る4A-GEUの音。


 この音だ……F20C改2.2リッターもいいけどやっぱり俺はこっちだ。


「じゃあ、慣らしは500キロ以上は9000回転以上は回さないようにしてね。それと500キロ走ったら持ってきてね」

「わかりました」


 俺はハチロクを発進させる。


 勇ましい音とともに加速。

 だが、慣らしの最中なので9000回転以上は回せない。


 それでも十分なパワーだ。


 これまでのハチロクとは違う。

 少しの差だけど、下からもパワーが出るようになってる。



 その日、遠回りして家に帰って休憩。

「遂に榛名のハチロク復活かー」

 と半ば他人事のようにいう藤原。

「でも慣らしがあるからすぐ走れるってわけじゃないけどねー」

 と言っておく。

「どのくらい走るの?」

「ざっと500キロくらいかな」

「500キロ……って結構あるよね」

「東京から京都くらいかな」

「長ぁ!」

「そんなもんだろー」


 とかいいつつも、俺も500キロもどうしようかと思っている。

 高速を使うにも金はかかるし、やはりここは榛名山をガソリンが無くなるまで走るのが一番だろう。


                            *


 そして夜、榛名山だ。

「久しぶりに見たなー」

 と斉藤。

「なんとなくだけど、音変わった?」

 とをリアのほうから横川。

「エキゾースト関係も見直したからね。それなりに変わってるかも」

「早く全開にしたみていねー」

 と涼宮。

「その気持ちはわかるけど、まだ慣らしの真っ最中なんだよ」

「そんなに慣らしって重要なの? FDチューンしたときもやれって言われたからやったけど」

 と藤原がFDのボンネットに腰かけながら訊いてくる。

「結構大事だね。故障しにくくなるし、うまくすればスムーズなエンジンにもなるし。実はこの車だって本当は何千キロとかやらないといけないのを、ダイナモで初期当たりを付けてくれたから500キロくらいで済むし」

「何千……どんだけの距離なのー……」

「もしかしたら日本一周とかかも」

 なんとも言えない顔をする面々。


 それはともかくとして、とりあえずは慣らし運転だ。

 ノンストップで上り下りを往復する。


                            *


 それから数分後、何回か往復して、上っている最中。

 反対車線から二台ほど絡んで走ってくる。


 

 FDとランエボⅨだ。

 おそらく工藤と藤原がつるんで走っているのだろう。

 

 ちょうど俺がヘアピンを立ち上がって上り坂を上ろうしたところで、逆に降りてきたようだ。

 俺はインにより二台へ道をあける。


 下りをまるで別次元の車のように下っていく二台。


 前が藤原のFD、後ろが工藤のランエボⅨのようだ。

 あれが下りだったらな俺でも追い付けるのに……。


 でも、なんで工藤の藤原はレースしてるんだろ……。



    

テスト期間なのに投稿できちゃいましたw


とりあえず次回は工藤VS藤原の経緯に、内容。


できたらvsR32の最初のとこまで書きたいと思います。

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