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公道最速少女  作者: oroto
27/50

26話「失踪の理由」

 瞳が失踪した。


 そう思った藤原は走って香織の部屋の前に行き。

「香織さん! 香織さん!」

 とドアを叩きながら言うと。

「まだ夜這の時間じゃないわよ……」

「そんな時間過ぎてます! 第一目的が違います!」

「ふふ……沙織ちゃんもついに――――」

「ふざけてないで話を聞いてください!」

「まったく……今日は8時まで寝てな○はシリーズを全話観ようと思っていたのに……」

「若干無茶だと思います!!」

「で……用事は?」

「タコが行方不明です」

「部屋でなにかしてるんじゃない? ……ふふふ」

「最後の『ふふふ』はなんですか!? じゃなくて、部屋にもどこにもいないんです!」

 と言った直後、ガタッ、とドアが開き。

「なんですって?」

「ホント……どこにもいないんですよ」

「ガレージにハチロクはある? いや、その前に」

 香織は携帯電話を取り出して電話をかける。


 5コール目で相手が出た。

『……もしもし?』

 相手は工藤、

 藤原は香織の耳元に耳を寄せる。 

 周りが静かなので相手の声もよく聞こえる。


「ねえ、工藤君。素直に話しなさい。瞳をどこに隠したの?」

『なんでそんな話になってるんスか!?』

 その会話を聞いた藤原も。

「工藤……タコが可愛いのはわかるから、早く場所を知らせて、今なら警察に言わないから――」

『なんのことだかさっぱりわからないんだが……』

「あんたがタコを誘拐したのは推測できるんだから!」

『だから知るか!』

「工藤君……瞳を襲うなんて……」

 と香織が悲しみを含んだ声で。

「襲うなら私も誘いなさい!!」

「とりあえず香織さんは話が滅茶苦茶になるので黙っていてください!」

 と言って携帯電話を強引に奪う藤原。

 藤原が携帯を耳に当てると。

『はぁ……はぁ……二人なら襲っていいんですか……?』


「あー! どいつもこいつも!!」


 数分後、事情を説明してから再度話を聞く。

『だから、昨日の夜は寝てたから横谷をさらうなんてできねぇよ』

「うーん、信じるしかないか……」

『てか、横谷が真っ先に居なくなって俺を疑うなんて……お前らは……』

「いやー、香織さんが真っ先に電話しちゃって」

『まったく……ところで、横谷探すの手伝おうか?』

「いやー、まだどうなったかわからなから、必要になったら電話するよ」

『わかった』

 と言って電話が切れた。


 携帯を香織に戻そうとして、香織がいないことに気づく藤原。


 あれ? などと言いながら首を回して探していると、香織が階段を上がってきた。

「ガレージに行ってきたの、ハチロクごとなかったわ……」

「じゃあ、あたし達に黙ってどこかに出かけたんですかね?」

「でしょうね」


                               *


 俺こと横谷瞳は愛車のハチロクで国道を走っていた。

 父親の友達のチューナーにハチロクのチューニングを頼むためだ。


 あの二人になんにも言わないで出てきたのは、単に面倒くさいだけだった。

 あいつらに言ったら「あたしも連れて行って!」って騒ぎだすだろうからな。


 それに、チューニングしてくれるおじさんの邪魔になっては困るし。


 車で走って数十分程度。おじさんが経営しているショップに到着。


「あ、瞳ちゃん」

 と出迎えてくれたのは父親がレースをする前、中学時代からの親友の高城直洋たかぎなおひろさん。

「どうも」

 と返事をしつつ車から降りる。

「じゃあ、いきなりですみません」

 と言ってキーを渡す。

「はい。じゃあ、前相談した通りにやっておくよ」

「ありがとうございます」

「帰りはどうすんだい?」

「近くにあるバス停から帰ります」

「なんなら駅まで送って行こうか?」

 と勧められたが。

「いえ、ハチロクのチューンの費用で負けてもらっているのに……」

「大丈夫だって」

 と言われて「ついてこい」とでも言うように歩きだしたので追いかける。

「これの公道でのテスト走行も兼ねてるから」

 と言っておじさんが立ち止まった近くにある車は。

「ポルシェ911?」

「正確にはポルシェ911RSだけどね」

 確か997のRSだから……というか。

「高かったんじゃないんですか……?」

 中古でも普通に一千万はオーバーしているマシンだしな。

「いや、ウチのじゃなくて、お客さんの車だよ」

「そうなんですか……」

 どっち道、俺は運転したくない。

「じゃあ、瞳ちゃん、運転して行く?」

「お断りします」

「はは、じゃあ行こうか」

 と言っておじさんが乗りこんだので、俺も助手席に乗る。


 ノーマルとは思えない音を出しながら加速していくポルシェ。


 そして国道へ。

 普通の公道での加速も違う。

 流石3.6リッターのエンジンだ。


 普通の公道を走っているだけでも、俺のハチロクとの差は歴然としている。

 ……ハチロクと比べるのもどうかと思うが。


 そうこうしている内に、駅前についた。


「じゃあ、2週間後に取りに来てね」

「はいありがとうございました」


 と言っておじさんと別れた。


 俺は携帯を取り出して電話をする。

 ……姉貴とか怒ってるだろうなぁ。

 2コールほどで相手が出て。

『瞳……瞳ぃぃぃぃぃいいいいいいいいい!! mfrddswfcgdんじぇwrんろwdんq―――――』

 と後半がわけのわからない言葉を言ってから切れてしまった。


 俺が首をかしげているとまた携帯が鳴った。

 相手は藤原。

「もしもし?」

『タコ! 香織さんが暴走し始めて――――や、やめてください! やめ、やめてぇぇええええええええええええええええ!!』

 また切れてしまった。


 どうやら俺がいなくてエ○ァ初号機のように暴走してしまったようだ。


 それから家に帰ること数十分後。

「おかえりー……」

 とボロボロになった藤原の姿。

 衣服の乱れかたから想像するに、激しいことをしたみたいだ。


「ささ、二階へどうぞ」

 と言われて恐る恐る二階に行く。


 そして、真っ先に目についたのは姉貴の部屋だ。

 表現するなら、漆黒のオーラをまとっている。


「あのー、お姉ちゃん。帰ってきたよぉー……」

 と言ったら、ドアがキィ……と言う音を立てて開く。

 そしてガシッ、と万力の力で俺を掴んだと思ったら、部屋に引きずり込まれたのだ。


 その後、どこぞの上条さんよろしくお説教されたのは言うまでもない。


                              *


「まったく、私は出掛けるなら出かけるって言えば、なんにも言わないのに」

 と未だにプンプン言っている姉貴。

 ここで反論しても意味がなさそうなので言いたいことはあるが我慢する。


「しっかし、タコがハチロクのチューンなんてね」

 と藤原。

「そろそろ足回りとかが古くなってきたからオーバーホールじゃなくて新しいのに換えたほうがいいかなって」

「ちなみにどのくらい時間はかかるの?」

「えーっと、ボディ本体も見直すから2週間程度かな」

「……相当走れないじゃん」

「いや……そこはスルーして……」

 逆に言えばそこまで時間を掛けないとこれ以上の速さに持っていけない。

「まー、たまには自分の車と距離を置くのもいいことよー」

 とさっきまでの暴走はなんなのかと訊きたいほど落ち着いている姉貴。


                              *


 その日の夜、いつも通り榛名山に集合した俺達。

「だからS2000に乗ってきてるんだね」

 と涼宮。

「にしても懐かしいなぁ」

 と斉藤。

 今俺が乗っているS2000は中学校のときにチューンしたものだ。

 今でも一週間に一回はエンジンを掛けていたのでしっかりと動く。


「……」

 みんなで騒いでいる中で一人むっつりしているのが居た。

「工藤、どうしたの?」

 うつむきながら工藤が。

「だってさぁ……」

「だってさぁ?」


「なんで俺のことを誘拐犯扱いするんだよ!!」


「……いや、いつも言動とかを見てるとね」

 と俺が答えると。

「ということは、横谷と既成事実を作ってしまえば『もう、誘拐なんてしなくてもいつも一緒だもんね!』みたいな感じに――――ガハッ」

 途中、工具で殴っておいた(良い子の皆さんは真似しないでね)。


「そんなことばっか言ってるから疑われるんだ」

 と言って工藤の屍を見る。

「はは……これが俺のアイデンティティなのにな」

 とかすれた笑い声で言う工藤。

 ロクでもないアイデンティティだな。


 それから二時間ほど走り、帰宅することになった。


                           *


 ちょうどその頃、榛名山の中腹ほどのところにある――ちょうど三車線になっている道のところ――に新たなライバルのマシンが止まっていることに、瞳達は知らなかった。



投稿遅れてしまいすみませんでした。


とりあえず次回からバトルの序章のような感じで、次のライバルが出てきます。

今度のマシンは直6エンジンを載せたあの車です。


そして、瞳がバトルするとは限りませんよw

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