表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公道最速少女  作者: oroto
24/50

23話「峠最速の走り」


 スタートラインに並ぶ二台のマシンを見て、車を知っている人なら異様な光景に見えるだろう。

 方や、80年代のライトウェイスポーツカーのトヨタ スプリンタートレノ AE86型。

 方や、日本初のスーパーカー、ホンダ NSX TYPE-R NA2型。


 この二台は、普通に考えれば別クラスの車、同じスタートラインに並んでいる時点でかなりのシュールさがある。

 だが、決してハチロクが悪い車ではない、基本的なとこが違うだけで、二台ともいいマシンだ。

 例えるなら、ボクシングや柔道で別の重量級同士が戦っているようなものだ。


 本来なら迫力でNSXが圧倒しているだろう。

 だが、このバトルは違う。

 NSXに負けないほど、ハチロク――と瞳から迫力のオーラが出ている。


 瞳のハチロクは超高回転型のエンジンを搭載しているが、黒いカーボンボンネットやホイール、車高などの外見以外はノーマルである。

 直登のNSXは、ノーマルより太いタイヤ、それに合わせて前後のフェンダーの拡大、小ぶりなGTウイング、その他のパーツを付けている。

 見た目だけの性能では、直登のNSXが勝つ。

 だが、相手は横谷瞳、高性能車殺しハイスペックキラーと呼ばれる少女。同じような高性能車を何台も倒してきている。

 直登にすれば、中途半端なチューンの車でバトルを挑むより、しっかりチューンをした車で全力で挑むのが礼儀だと思っている。

 瞳も、相手に不足はないと意気込む。


 二台のマシンの空ぶかしが始まる。


 それから一拍置いて、バトル開始のカウントダウンが始まる。

「3、2、1、GO!」


 二台がスタートする。


 やはり加速ではNSXが上。


 グン、と引き離すNSXを後ろからみつめる瞳。

 そして第一コーナー。

(やっぱコーナーも速い!)

 と若干ながら、瞳が焦る。

 ギリギリでついていけたものの、下手をすると引き離されるかもしれない。


(流石、兄貴といったところかな)

 ここからどうやって巻き返すか考える瞳。


                           *


 頂上では自動車研究部の面々が考え込んでいる。

「まぁ、いつも通りならギリギリでも勝って戻ってくるのが横谷クオリティーだが、今回は相手があの直登さんだ」

 と真面目モードの工藤。

「そうよね、タコも何回も『負けるかも』って言ってるくらいだし」

 と涼宮。

「そんなこと言っても勝ってくるのがタコじゃ~ん……」

 とパタパタ手を振りながら藤原が言う。

「サオ、今回くらいは負ける可能性も含めてみてあげよう」

 と横からなだめるように横川。

(てか、横川はいつも横谷が勝つと思ってバトルを見ているのか?)

 と心の中でツッコむ斉藤。


 と、その時、チャーラチャーララ、ラララ、と藤原の携帯が着信音を出す。

 発信者は瞳の姉兼直登の妹、香織だった。

「もしもし香織さん、いまどこですか?」

『今五連続ヘアピンよ、今回はここでなにか起きそうだからね』

「そうですか、またなにかあったらお願いしますね」

『もちろんよ! しっかり実況してみるわ!』

 そういって通話が切れた。


                          *


 第二コーナーに侵入する二台。

 わずかながら追いつく瞳。

(この調子だと……結構つらいな)

 もしかしたら直登はタイヤなどを労わって本気で走ってないのかもしれない。そう思うと後々の展開がきついかもしれない、と瞳は考えた。

 そして、最初のヘアピンに突入。


(ん?)

 コーナーで違和感を覚える瞳。

(今、NSXの動きが……気のせいかな)

 と考えをまとめる瞳。


 加速していくNSX、流石にストレートでは排気量が2倍以上あるマシンには追いつけない。


 だが、コーナーでは軽量なハチロクが一瞬ながら、ブレーキのタイミングを遅らせられる。

 それも、瞳のテクニックがあってこそだ。


 一方逃げる直登も作戦が無しに逃げているわけではない。

 彼なりの作戦を練っているのだ。


 それは彼なりに瞳を評価、分析した結果で実行している。


 そして、作戦は今も着実に進行している―――――


 バックミラーに映るハチロクを見て、ニヤリと笑う直登。

(さぁ、どこで仕掛けるか――――)


                           *


 頂上ではそんなことなどわからない自動車研究部+αが話し込んでいる。

「で、結局のところ、香織さんは五連続ヘアピンでなにかあると予想しているのか?」

 と斉藤。

「そうみたい。でも、香織さんでも予想は難しいと思うよ」

 と藤原。

「俺にも直登あいつがどこで仕掛けるかがまったくわからないから、どうなるかはまったくわからん」

 とさりげなく荒畑。

「なにげなく混じってますね」

 と横川。

「というか、いつからいたんですか?」

 と何の気なしに訊く涼宮。

「……バトルが始まる直前に来たんですよ」

「ああそうでしたね」

 と携帯をいじりながら言う藤原。

(高校生に軽くあしらわれた……)


                           *


 二台のマシンはヘアピンを抜け、90°コーナーを抜ける。

 そのとき、瞳は違和感の正体に気付く。

(インが空いてる……?)

 ほんのわずかだが、微妙にインが空いているのだ。

(攻め切れていない? それとも、タイヤを労わってる? どっち……)


 なにはともわれ、隙があるのは確か、瞳は次のヘアピンでも同じなら仕掛ける予定を立てる。

(手前の右をアウトから侵入、そして右でインから抜く……けど行けるかな……)


 そして、ストレートの加速。

 ここでは置いて行かれるが、次のヘアピンの侵入の前にある少し右に曲がるとこは瞳の得意なポイントの一つである。


 直登のNSXが右コーナー侵入前にブレーキ、これはセオリー通り。


 一方瞳はアクセルコントロールだけで同じコーナーに突っ込む。

(よし、今のところはいける!)

 そのまま左に曲がるヘアピンに侵入。


 二台ともスピン寸前でのフルブレーキ。


 直登のNSXはわずかにスライド。

(これ以上滑ると……そのままスピンだ……っ)

 NSXをはじめとするMR車はグリップ走行でのコーナリング性能は高いが、滑ってドリフト状態に入ってからのコントロールの幅が極端に狭い。

 それに比べ、瞳のハチロクを始めとするFR車はグリップ走行でのコントロール性能はMRに負けても、ドリフト状態でのコントロールの幅は広い。


 二台のマシンは、ヘアピンで横並びになる。


 どちらが先に立ち上がれるか。


(無理……っ)

 瞳が本人でもわからないうちに舌打ちをする。


 車で一番の重量物であるエンジンを運転席の真後ろに搭載しているMRは、トラクションがかかりやすくコーナーの立ち上がりなどは強い。

 MRのトラクション、それに加えてNAエンジンならではのリニアな加速を利用して瞳より先に立ち上がる直登。


(やっぱ……タイヤを労わっているのか)

 と結論づける瞳。


                               *


 頂上では荒畑が仲間からの連絡を受けている。

「ああ、わかった。ありがとな」

 通話を切り、自動車研究部に伝える。

「今、ハチロクが仕掛けたらしいが、直登が抑えたらしい」

「おしかったなぁー……」

 と横川。

「まぁ、まだ先は長い」

 と工藤。


                               *



 二台のマシンが車好きが聞けば興奮必須の快音を出しながら走り抜けていく。


 直列4気筒エンジンと、V6エンジン。

 本来は音がバラけて、あまりいい音はしないと言われているが、ハチロクに搭載されている4A-GEU。NSXに搭載されているC32B改 3.5リッター。

 この二台の音は、不思議なほどの快音を出して榛名山を下っていく。


 音だけ聞けば気持ち良いかもしれないが、走行しているのを見ると、二台の激しい接戦に気持ちよさがかき消され、興奮一色になるだろう。


(どこで仕掛ける……)


 正直瞳は、直登についていくのにやっとだった。

 マシンの差も大きいが、なにより腕の差もある。


 前の直登のNSXは、とんでもないほど気持ち良い加速をする。

 ドリフトでもしない限り、ほとんど空回りホイールスピンをしないのだ。

(かなりアクセルを踏み分けてる……)

 瞳は目の前にNSXの走りに恐ろしいものを感じる。

 ―――改めて、勝てる気がしない。

 そう思う瞳。


 だが、負けるわけにはいかない。


 ギュッ、とハンドルを握りなおす瞳。


 必ず弱点がある。

 そう思いハチロクを走らせる。


 そして、二連続ヘアピン。

 二台がフルブレーキで侵入。


(やっぱインが空いてる……!)

 

 瞳は次のヘアピンでいけるのではないかと思いながら、マシンを動かす。


 そして、次のヘアピン。


 二台のフルブレーキ、ブレーキディスクが熱で真っ赤に染まる。

 わずかにスライドするマシンを強引にインに寄せる瞳。


 そして、直登のNSXの内側、インは開いている。


(いけるか!? いけるの――――ッ!?)



今回はハチロクVSNSXですが、このバトルは次の話で完結する予定です。

どうなるかは決まっていますが、まだ細かい動きとかは決まってないというorz 早めに投稿できるように頑張ります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ