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公道最速少女  作者: oroto
21/50

20話「首都高最速のNSX」

 唐突だが、今は期末試験を受けている。

 Z32対FZが終わった後、一週間もしないでテスト週間に突入、そしてテストなのだ。

 ちなみに今日は最終日なので、みんなの欲望がいろんなところに向いているだろう。


 まったく勉強しなかったぁー、というわけでもないので、危機的状態でもないのだが、だからといっても、不安は不安だ。


 なにしろ、今回のテストで夏休みの運命が決まるとも言えるのだ。

 これはみんな経験することだろうな。


 と、全ての問題を解き終わって、余った時間で考えていた俺なのだが……


 それでも、テストが終わって少ししたら対戦することが、頭から離れなかった。

 なにしろ、相手が実の兄なのだ。

 

 あれから、斉藤が調べてくれたところ、兄貴は首都高で『C1,横羽、新環状線最速』と言われているらしい。

 なぜ、「首都高最速」ではないかというと、湾岸ではパワー少なくて勝てないそうだ。

 噂によると、800馬力クラスのGT-Rがいるとか。


 しかし、C1で速いということは、コーナーでも速い、ということは峠でも速い可能性が高いのだ。

 厄介な相手すぎる……


 それからテストは1時間もしないで終わり、下校。


「やっと終わった~~」

 と身体を伸ばしながら藤原。

「といっても、テスト返却があるから、ある意味終わっては無いよ」

 と落ち着いた様子で涼宮。

「あー、どうせ俺のテストなんか終わっちまいましたよ。はい、だから横谷、夜待ってるから」

 と世界の終わりの前のような顔で言っているのは工藤。

「夜にはいかないからねー」

 と、流しておく。

「なにしろ、試験自体は終わったんだからいいじゃん」

 と嬉しそうに横川。

「これで、今日からまた走れるな」

 と斉藤。

「そうそう、直登さんとのバトルもあるし」

 と楽しいことが起こると言わんばかりに、藤原。

 まぁ、傍から見れば楽しそうかもしれんが……

「ん? タコ、元気ないね?」

 と横川。

「まぁね。だって、今回のバトルは自信がないもん……」


                                *


 瞳達が走っている峠以外にも、走りや御用達の場所がある。

 ――首都高速。


 ここも峠と同じように、サーキット化されており、毎日にぎわいを見せている。


 首都高は、大量のコーナーがある|環状線(C1)と、日本で屈指の最高速ステージ湾岸線、コーナーとストレートが混ざりあう環状線と湾岸線をつないだ新環状線。狭い道幅に、荒れたアスファルト、そして高速域でのコーナリング、横羽線。


 主に首都高と呼ばれるのはここである。


 その中、C1,新環状、湾岸、横羽で速いと言われているマシンがいる。


 それが、昔の友人と訊いた荒畑勝二は、最近直して走らせている80スープラで横羽線に出ていた。

 以前、友人の妹に榛名山で負けて以来、アルファードでスポーツカーに勝とうなどという、無謀な挑戦は諦めて、またスープラで湾岸、峠を走っていた。


(あいつが、また榛名山のハチロクに挑むなんて……勝てるのかよ)

 と思いつつ、榛名山のハチロクこと、瞳の走りを思い出す。

(あれは、もはや天使や悪魔とも表現できる走りだ……)

 特に宗教を信じてはいないが、そういう風に表現したほうがわかりやすいと思っている。

 神ではないのは、やはり一番上というには、規模が小さいからだ。


(まぁ、直登あいつに会ったら、何故今更再戦なのか、問い詰めるまでだ)

 と思いつつ、前にいるマシンを抜く。

(今の、そこそこ上手かったな)

 だが、バトルしようと思うほどは上手くはない。

(しかし、今日は出てきてないのか?)

 と思いながら、コーナーを立ち上がってストレートを加速しているとき。

(来たか!)

 一瞬でわかった。

 後ろからくる重圧。


 首都高でトップ5の実力に入ると言われている荒畑でも、その重圧は恐ろしかった。


 ミラーに移る低い車体。

 ルーフの後ろにあるちょんまげのようなエアダクト。

 バブル期に作られたマシンで、第二世代GT-R、80スープラ、FD,ランエボ、インプなどと同じように人気が高く、日本初のスーパーカーと言われるマシン。

(直登のNSX……!)

 

 相手も、前を走っているスープラが荒畑だと気付いた気付いたらしい。パッシングをしてきた。

 ―――バトルの合図だ。


 直登が追いついたところでバトルが開始された。


 後輪駆動とは思えない加速をしていく二台。

 横羽線では、200km/hに突入することもある。


 しかし、路面は荒れている。

 ミスをすれば、側壁にヒットしてしまう。


 だが、そんなことを意に返さない二人。

 それに応えるように、地面にびったりと貼りつくマシン達。

 それを実現するのは、ワイドかつ、レーシングカーを連想させる派手なエアロダイナミクス。


 途中にいる、ゆっくり流しているマシンを追い越し、時には利用しながら横羽線を駆け抜ける。

(パワーはこっちが上か!)

 なにしろ、荒畑のスープラは700馬力程度ある。

(なのについてくるというのは……!)

 恐ろしいことに、コーナリング差を詰めている。


 一方、直登は。

(荒畑、上手くなってるな……)

 コーナーが連続するところで、直登が仕掛ける。


 ブレーキングでノーズをねじ込み、インを取る。


(行かせるか……っ!)

 荒畑もアウト側で踏ん張るも、直登の圧倒的なコーナリングスピードで抜かれてしまう。


 抜かれて、瞬間的に思考が止まる荒畑。

(イン側で、あんなに速く回れるのか!?)

 思考能力が復活して出てきた思考。

 再加速するNSXのリアを睨む。


 そしたら、NSXのウインカーが光る。

 どうやら、パーキングアエリアを改良して作られたピットスペースに入るらしい。


 それを追って荒畑の80スープラが入る。


                      *


 直登がマシンから降りるとちょうど荒畑のスープラが入ってきたところだった。

 それを目で追う直登。


 一台のスペースを空けて止まっているスープラとNSX、見た目だけでない、マシン自体の速さのオーラに周りで見ていた者は息をのむ。


 マシンから降りてきた荒畑は。

「久しぶりだな」

 と口を開く。

 対して直登は。

「確かにな、榛名で会って以来か」

「お前、妹にバトルを挑んだんだってな」

「まぁな、今の俺とNSXならいける」

「んなわけあるか、どう考えてもお前と妹の腕は互角だろ」

「だろうな」

「だろうなって……」

 と呆れる荒畑に、直登は。

「『腕は』だろ」

 と、軽く言う。

「まさか……」

 と、荒畑は呆れつつも、驚く。

 それは、今までの直登と違うスタイルの走り方をすると言っているようなものだ。

「勘違いするなよ、俺はお前と走ってるころより変わった」

 と、こちらも呆れながら言う。

「確かに、お前と走ってるころは『マシンの性能より、自分の腕で勝つ』だったが、今では新しい車もあるから、そうはいかない、だから『腕がダメでも、マシンでも勝てるようにする』というスタイルになったんだ」

 何て野郎だ、と荒畑は心の中でつぶやく。

「だから、自慢のNSXを引っ張りだしてきたのか」

「そうだ」

 またさらりという。

「まったく、そのNSXはお前の全てともいえるんだぞ」

 と、直登の後ろに停めてある、白いNSXを見た。

 フェンダーもワイド化されて、太いタイヤを履いている。高速域で空力を生むためのエアロパーツ、ちょんまげのようなエアダクト、それらが官能的な美しさを持つNSXの車体をさらに引き立てている。

「どう考えても、ハチロクじゃ太刀打ちできないな……」

 と荒畑は瞳のことを心配する。

「どう考えても、ショップのデモカーレベルのNSXとバトルして勝っても、当たり前と思われるんじゃないか」

 と、適当に言ってみたら、直登が真面目に答えた。

「瞳は高性能車殺しハイスペックキラーと言われている。だから、高性能な車で勝てば『あの高性能車殺しハイスペックキラーに勝ったって、名声をもらえる」

「どうせお前は、名声なんかに興味はないだろ」

「そうだ、全ては自己満足のためだな」

 と言って、満足したのか。

「じゃあ、俺は帰るか……」

 と立ち去ろうとした直登に。


「そうはいかないぜ、横谷」

「なにが望みだ……?」

「バトルだ、ここが平和島だから……上ってって、浜崎ジャンクションからC1入り、江戸橋で9号に入って、そこから湾岸に出るのは?」

「いいだろ、C1でちぎってやる」


                               *


 二台がパーキングエリアから出て行く、バトルは浜崎ジャンクションからC1に入って、立ち上がったところからスタートする。

 先行は先程と変えて、直登。後攻は荒畑。


 二台が浜崎ジャンクションに侵入する。


 きついコーナーを曲がっていく二台、そして、C1入り。


 二台のマシンが加速していく。

 推定馬力、350馬力のNSX、推定馬力、700馬力のスープラ。

 倍の差があるが、NSXもコーナリングではスープラを圧倒する速さをもっている。

 そして、これから走るのはコーナーが多いC1、パワーが多い方が有利、そう簡単にはいかない。

 むしろ、パワーがあると持て余してしまい、ロスしてしまう。そのようなこともあるのだ。


 今、二台が走っているのはC1の中でも速度が出る外回り。

 もうひとつ、コーナーが多く、スピードも乗らない内回りもあるが、今回のバトルでは使わない。

 

 やはり、荒畑のスープラが離れていく。

 だが、荒畑は焦っていなかった。

(C1で不利なのはわかってるんだ。こっちが少しでも有利な9号まで持ちこたえればいいんだ)

 確かに、それが一番の作戦である。

 だが、この作戦の弱点は。

(だが、ついていけるのか……? このペースに……ッ!)

 荒畑がそこまで思うほど、直登のコーナリングが速いのだ

 

 二台のマシンは、元々高速道路とは信じられないほど曲がりくねったコースを攻めていく。



 この二台が本気で交わるのは、まだ先―――――

マンネリ化を防ぐため、首都高の話をいれてみました、そしたらどんどん書けるww やはり、瞳達の日常は、若干ネタ切れだったみたいですね。

もしかしたらマンネリ化、ネタ切れの時のためにスピンオフみたいな感じで、首都高verでも書こうかなと思っています。


なにか意見があったら感想からでもいいからお申し付けください。

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