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公道最速少女  作者: oroto
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1話「俺の人権を考慮して……」

 で、俺達が通う高校、春真高校はごく普通の県立高校なのだが、少しだけ別の高校と違うとこがある。

 それはというと、開校当時、車、特に「走り《バトル》」が流行っており、それに乗じた高校が大手自動車メーカーへの就職、有名工業系大学への進学を考えている生徒を呼び押せるために敷地の中にコースがあるのだ。

 そして、姉貴が卒業する前まで、「自動車研究部」があったらしいが、時代の煽りを受け、廃部。

 それを元生徒会書記だった姉貴が「自動車研究部」の部室などを土台にして俺達が走りをするための部活を作れるように計らってくれたのだ(なんで生徒会書記がそこまでできるか不明だが)。

 ということで、俺達はちょっと面倒なこともあるが、ここに「新自動車研究部」、藤原は勝手に「メカニカル研究部」通称メカケンと名前を変えている。

 まぁ、俺はそんなことはどうでもいい。ちょいと面倒なのは部員だ。

 春真高校では原則として6人以上で部活なのだ、それ以下は同好会。

 で、今のところのメンバーは。俺、藤原、涼宮、工藤、斉藤。計5人。

 これでは同好会になってしまう。ということでもう1人、どっからか引っ張ってこなければいけないのだ。

 ちなみに、顧問に関しては姉貴が話を付けてくれた。ちょっと変わった技術の先生だそうだ。……大丈夫だろうか。


                                *


 そんなことはお構いなしに入学式兼始業式。これは割愛。


 さて、俺の難関はクラスだ。

 斉藤の所属している『組織』の計らいか、いつもの5人は同じクラスだった。

 で、それ以外の同じ中学出身はいない。

 あんまり同じ中学出身はいないからな。

 で、俺は高校では女子らしく振舞わらなければいけないのだ。

 何故なら周りのみんな曰く「見た目は清楚な黒長髪の美少女が男口調だったら色々と変。それに、こっちでもフォローできない」とのことだ。

 ということで、俺は高校では女口調でなければいけない。

 ……心の口調も変えたほうがいいかな。


 と、自己紹介。元々好きではないのだが、今回は精神的にはつらいものが重なっている。内容は「出身中学校、名前、あと趣味とか」うん、いいんだ、頭の中で考えていることを言えばっ!

 と順番が回ってきた。


「上森中学校しゅっひん……あ」

 いきなり噛んでしまった。くそっ、目立たないようにしたかったのにっ。

「ええと…上森中学校出身、横谷瞳です。趣味は……なんだっけ?」

 やべぇ、ついにボケが始まったのかな……。

「趣味は……車です。よろしくお願いしますっ!」

 チーンという音が俺の頭の中を駆け巡る。

 何故か少しの間間をおいて担任は次の話題に移った。

 なんだろ、なんか俺の時だけ皆さんの視線が多かった気がするのだが……


 HRホームルームも終わり、お手洗いに向かっていると何故かみんなに注目されている気がする……。気のせいか? そうだ、単に俺が自意識過剰なだけだっ!

 と思いつつ用を足して教室に戻ろうとすると掲示板にこんな文字が――――

『注目、あの横谷香織の妹。横谷瞳が入学』

 と見出しが書かれた新聞が貼っており、内容は

「前生徒会書記ながら、会長以上の働きをして権限を得て、さらにはその美貌により男女問わず人気を得ていた卒業生、横谷香織氏の妹、横谷瞳氏がめでたく入学する運びになった。

 香織氏同様。かなりの美貌と噂されている横谷瞳氏の写真を我々は手に入れることに成功した」

 と言った感じの記事に俺の写真がデカデカと掲載されている。そして周りからは。

『ねぇ、本物じゃない?』

『やべぇ、超可愛い』

『香織さんとは違った魅力っ!』

 と先輩同級生関係なく言っている。

 これのせいで俺はやけに注目されているのか?

 いや、それしかない。


 俺は一刻も学校から離れたくて早足で教室に戻った。


 と、教室に戻るといつもの4人が雁首をそろえて待っていた。

「タコ、あの新聞を見た?」

 と藤原。ちなみに、タコというのは俺のよくわからんあだ名で、確か「最初見たときに見えた瞳のドリフトの残像がタコの足みたいに見えたから」だそうだ。

 と、そんな場合ではない。

「ああ、なんであんなもんが……」

 どこで撮ったんだ? という疑問がやっと浮いてきたとき。

「おい、帰るなら早く帰ったほうがいいぞ」

 と斉藤。

「どうにも、新聞部に動きがあるらしい。まだ三年生が動けなくて来ていないが、新聞部が取材に来るらしい」

「なにっ!?」

 それは一大事、なんにしろ、俺は目立たないように過ごしたいからだ。

「わかった。即時下校だ」

「待って!」

 と藤原。なんだ、もたもたしてられんのだが。

「新自動車研究部は?」

「それは後だ」

「なんで!」

「もう少し落ち着いてからだ。それでないと落ち着いてできやしない」

「わかったよ……」

 と藤原は落ち込んでいるが、第一始業式は明日だから活動開始は明日以降だろうに。

「じゃあ、行くぞ!」

 と斉藤が指示した直後。

「待ってください!」

 と言われ、俺達はギョッとしてドアの方に振り返ると。

「新聞部です」

 といかにも取材に来ましたよ的な先輩方が数人いた。

「ど……どうする?」

 と俺は斉藤に訊く。こういう時に一番役に立つからな。

「横谷瞳さん。貴女に取材を申し込みたいのですが?」

 と部長らしき人物。

「む……無理です」

 と断る。当然だ。

「私、新聞部部長。 阪下(さかした)  春美(はるみ)といいます。取材を―――」

「い……嫌です!」

 と断るも。

「ここは引けません。なんとしてでも受けてもらいたのですが……嫌とおっしゃるのならば。こちらも少々強引な手を――」

「工藤っ!」

 と俺は工藤を呼び出す。俺の護衛では最強。

「わかったぜ」

 と意気揚々と前線に飛び出していく。

「やめてあげてください。横谷だって嫌がっています」

 とまずは説得から開始。だが。

「取材させていただくのなら、瞳さんの写真をいくらでも差し上げますよ」

 と新聞部部長、阪下先輩は言った。

「わかりました」

「「「ちょいまてこら」」」

 と4人でツッコむ。

「では、取材を」

 という阪下先輩の横で工藤が。

「さぁ、横谷、カモン」

 と手を動かしている。裏切り者め……!

「新聞部、やめなさい」

 と唐突に新聞部の集団の後ろから声がした。

 現れた人物は。

「姉貴……?」

「香織先輩……?」

 何故か卒業したのに先代の春真高校の制服。

 今更だが、春真高校の制服は俺達の代から変わったのだ。前まではセーラー服に学ラン。今は男女ともブレザー。とはいっても2、3年生は前の制服を着ている。俺達だけが新デザインの制服を着ている。

「あれほど私の妹に手を出すなと言ったのに…… 瞳が迷惑そうな顔をしているわ」

「前の生徒会書記にいわれましてもねぇ。大体、妹さんの畳一畳分程度まで引き伸ばしても大丈夫なくらい高画質な写真はいらないんですか?」

「必要ないわ」

 とさっぱりと言いきった姉貴、流石俺の姉だ。

「家で寝起きから入浴、寝顔まで撮り放題だからね。ムフフ」

「タコ、攻撃対象を間違えないでね」

 危うく、新聞部をスルーして姉貴に突撃するとこだった……ちくしょう、まともな人間はいないのかっ!?

「では、その写真をください。そうしたら直接的な取材は保留にします」

 と阪下先輩。姉貴、言うことはわかってるよな……?

「わかったわ」

 そうそう、その判断を待っ―――

「どの写真がいい?」

 とデジカメの操作を始める姉貴を見た俺は全力で反対側の窓に向かう。

「逃がすな。捕獲しろ!」

 と言っている阪下先輩を無視して窓から外に出る。

 そのまま校門へダッシュ! と行きたかったのだが……

「チッ……」

 舌打ちをしてしまったのは校門にいる。さっきまで阪下先輩と一緒にいた先輩方が校門にいるからだ。

「あのぉ」

 と後ろから声をかけられ、俺は冷や水を浴びた気分になった。

 俺は隠れていた植え込みから飛び跳ねるように逃げながら後ろを見ると若干おとなしそうな少女、――セーラー服だから先輩か――がいた。

「なんですか」

 焦っているんですが。

「えっと……」

 とっととしてくれないかなぁ……

「横谷瞳さんですよね?」

「はい、そうです」

 新聞部だったらどうするか、俺の脳内戦術カンピューターがもしもの戦術を練っていく。

「やっぱり、私は生徒会会長の 二宮(にのみや)  彩加(さやか)です」

 まさかの生徒会も新聞部に協力しているのか!?

「新聞部から逃げているのでしょ?」

 とさっきのおとなしげな雰囲気から変わって、活発そうな感じになった。なんだ、この人?

「横谷先輩にもお世話になったし。助けてあげます」

「本当ですかっ!?」

「こっちに来てください」

 と俺は信じてついて行った先には。


「なんですか、これ?」

 俺の前には若干サビている門。説明会などに来た時には気づかなかったぞ。

「今はあまり使われていない門です。ここを出てまっすぐ行けば普通に校門を出たとこの国道にでるから。少し獣道っぽいけど、逃げられると思うよ」

「ありがとうございます」

「どういたしまして、新聞部にはきつく言っておくから」

「重ね重ねありがとうございます」

 と頭を下げていたら。

「もういいから、早く行って。新聞部がきちゃうよ」

「では」

 と俺は不可知の門をくぐった。

 まさか、入学式早々にこんなことになるとは……


 で、『少し獣道っぽい』と言われたが。

「これが少しだと……?」

 道は、草むらにうっすらと人間の歩いた道があるだけだ。

 と、脚に違和感が……

「ひぃぃいいいいいいいいいいいいい!!」

 カマキリかよ! 俺虫苦手なんだから。

「あぁ! こんちくしょう!」

 といいながらカマキリを振り払ってさらに進む。


 と、虫とくっついてくる草などと格闘しながら歩くこと数分。国道らしい道が見えてきた。

 で、出てみえたのは

「駅前かよっ!」

 見事に通学に普段利用している駅があった。

 俺が出てきた場所は、通学に利用している駅の近くにある森、というか放置されっぱなしの空き地を突っ切ってきたみたいだ。普段は意識していないからよくわからんかった。


                              *


 俺は駅に止まっていた家の最寄り駅方面の電車に乗り込んで読みかけの文庫本を取り出す。

『ただいま特急の通過待ちです。しばらくお持ちください〜』

 というアナウンス。少ししたら。

「あれ、なんでここに?」

 と藤原達が来た。

「姉貴は?」

「なんか、新聞部の部長と口喧嘩を始めたから逃げてきた」

 と斉藤が呆れ気味に言う。

 涼宮が首をかしげないがら。

「でもタコ、どっから出てきたの? 校門は新聞部がいたでしょ?」

「ちなみに裏門にもいたな」

 と工藤。

「なんか、生徒会長に助けられてな。秘密の門から出してもらったんだ」

「そんなバカなことがあるの?」

 と藤原。信じてないな。

「あったもんはあったもん」

「わかったわわよ……」

 と納得された。うー、なんなんだよぉ……


                                   *


 翌日、俺はやっと平穏な日常に戻れると思っていたのだが……

 まだ学校の中の施設などを覚えるなどで、本格的な授業はまだなのだが、俺がふと掲示板を見ると……。

『スクープ写真。横谷瞳の日常スナップを入手』

 とでかでかと書かれた新聞。そしてその下には―――

「いやぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 俺の睡眠中の写真(毛布をギュッと抱きしめている写真とハチロクのぬいぐるみを抱いて寝ている写真)が印刷されていた。

「俺の人権がぁぁぁああああああああああああああああ!!」

 


 俺の高校生活、どうなんだろ……?

サブタイトルは適当なのでキャラのセリフ風かと思えばそうでないときもありますのでご了承してください。

さて、今回は少しギャグに振ってみましたがどうでしたか? まぁ弊害は車の話をあまりでないとこですが。

これからはギャグや車のマジ話を行ったり来たりするのでご了承を。

では次回。

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