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公道最速少女  作者: oroto
18/50

17話「FZを仕上げる」


 その日は、学校が短縮で早く帰れてガレージに戻っている。

「あー、早く夜にならないかなぁ……」

 と藤原。


 そして、唐突だが夜。


「よし、ドライバーは涼宮だ」

「うん。で、なにに注意すればいいの?」

「特にないけど、動き方とかをよく見てきて、それでセットアップしていくから。

「わかった」

 といって出て行った。


 さて、疲れてグッタリしてる工藤でも覚醒させるか。

「工藤、起きて~」

「……横谷、流石にお前の願いでも……」

「じゃあ、涼宮が戻ってきたらちゃんと起きて作業してよ」

「は~い……」

 心配だな……

「ちゃんとやってくれたら、いいコトしてあげる」

 といって胸に手を当てる。……古すぎたな……いくらこいつでも引っかからないか。

「オーケー、いつでもいいぜ!」

 と工藤が元気ハツラツになっている。……単純すぎるな。


 数十分後、涼宮が戻ってきた。

「どうだった?」

「いい感じだよ」

 と笑顔で降りてくる涼宮。

「でも、もうちょっと安定性が欲しい感じが……」

「よし、工藤」

「オーケー、オーケー」

 と元気ハツラツな工藤。


 それからまたしばらくたって。

「よし……横谷。できたぞ」

 と疲労困憊の工藤。

「『いいコト』って!?」

 と迫ってくる。……工藤のくせに覚えていたか。

「ほら」

 とスポーツドリンクを投げると。

「……こんだけ?」

「こんだけだよ。どうして?」

「いや、てっきり夜の関係に」

「……じゃあ、頑張ってね」

「見捨てるなぁああああああああああああああああ!!」


 なんか叫んでいるがスルーする。

「じゃあ、涼宮。また走ってきて」

 といってドアを閉める。

 涼宮は頷いてから峠道へ飛び出していった。


「さて……」

 俺もハチロクの中で休憩――

「横谷」

 と工藤が背中に抱きついてきた……気持ち悪い以前に暑い……

 俺が周りを見渡すと藤原がアワワといった感じで立っていた。

「工藤くん?」

「なんだい?」


 俺は全身の力をこめて。

「暑いし気持ち悪いんだよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「ぎゃぁぁああああああああああああああああ!!」


 数分後。


「タコの怒りに触れた者は、このようになるんでしょう……」

 と藤原が占い師のように言っている。


 藤原が見つめる先には屍になった工藤がいる――と表現してよいのかわからん。

「まぁ、工藤の自業自得だな……」

 と斉藤。

「なんかタコがシ○ナに見える……」

 と横川。それは前々から言われる。

「はぁはぁ……トドメを刺す……」

 と俺が近づくも。

「もうやめてっ! 工藤のライフは0よ!」

 と藤原。

「ふふ、こいつの生命力は台所にいる黒くて触角の生えた虫並みさ」

 と俺が工藤のトドメを刺す。


「……灰になってる」

 と横川。

「まぁ、工藤だからそのうち復活するよ……」

 と藤原。


                    *


 それから十数分後、涼宮が戻ってきた。


「ふぅ……ブレーキがフェード現象を起こし始めちゃったぁ」

 と言ってから、|工藤(灰)を見て。

「激しいことがあったみたいね……」

 と言った。


 ちなみに、フェード現象というのは、ブレーキ――――今の車はタイヤと一緒にホイールの中でブレーキディスクというパーツを回して、それをブレーキパッドで押さえて減速させている。自転車のブレーキを思い浮かべれば分かりやすいと思う――――のブレーキパッドなどが過激な走行で|消耗(熱ダレ)を起こしてブレーキが利きにくくなる現象だ。

 まぁ、ようはブレーキのパーツが消耗してブレーキが利きにくくなる現象だ。

「あ~、純正品ノーマルだからね」

 と俺は涼宮に言いつつFZの足回りを見る。

 ブレーキ周りから煙が上がっている。相当消耗してるな……


「これだと……どっかからか強化チューニングパーツを探したほうがいいね。バトル中に『フェード現象で負けました』なんて情けないし」


 ということで走りこみを早く切り上げて、ブレーキパッドを探す。


 それから二日後。


「これがパッド本体。こっちがブレーキオイル、そして――」

 と我が家のガレージ内の作業台にパーツを乗せていく。

「これでブレーキを含めた足回りの性能は上がるよ」

 発売と同時にメーカー直系のチューニングパーツメーカーが発売してくれてたおかげですぐに入手できた。

「さて、工藤」

「……またすか?」

「またっすよ」

「……だってなぁ、瞳たんに騙されたしなぁ……」

 うわぁ俺のことを瞳たんって……ぶん殴りたいけど我慢……ッ。

「あぁ、そういえば今日、朝ごはんで食べたウィンナーが残ってるんだった」

 若干棒読みだが、問題は無いはず。

「誰かにあーんしたいなぁ」

「さて、とっととパーツ交換するかぁ!」

 と工藤が覚醒。……こいつの将来が不安になってきた。


 三時間後。朝から初めてもう昼間、まだブレーキオイルしか交換し終わってない。

「横谷、ウィンナーを食べたいんだが」

「いやー、あと一つなんだよ」

「くれ!」

 俺はとある人物に目配せをしながらフォークを刺したウィンナーを工藤の口に持っていく。

 だが、工藤は予想しなかったであろう。

 なにかが横切った後、フォークの先端にあったウィンナーは消えていた。

「藤原ぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 と、今までで一番長く叫んだ工藤。

 叫びながら呼んだ名前から分かるとおり、横取りしたのは藤原だ。

「何故だぁぁああああああああ!! なんで最後のウィンナーwith横谷のあーんを横取りするんだぁぁぁあああああああ!!」

 口をモグモグさせてウィンナーを食べていた藤原が飲み込んでから。

「いや、美味しそうだったからね、つい」

「『つい』で俺の希望は消えたのかぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 今回の工藤はよく叫びます。


「また工藤が灰になったる……」

 と涼宮。

「今回は燃え尽きたみたいだな」

 と斉藤。

「見てるとすっごい憐れに見えるよ……」

 と横川。

「まぁ、動けないんじゃ仕方ないよ。お昼ごはん作ったから食べよ」

 と俺が工藤以外のみんなを促したら。

「ってことは横谷が作ったのか!?」

「まぁ、そうだよ」

「よっしゃ、いくぞぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「工藤……」

 と、悲しそうなものを見る藤原。

 その理由は、半分は姉貴が作ったからだ。ウソは言ってないよ。だって姉貴だって『横谷』だもん。


 ちなみに、工藤が好きなのを姉貴に作らせたので、ほとんど姉貴が作ったのを食べた工藤だった。

「あー、美味しかったぁ」

「だねぇ」

 お前が食ったのはほとんど姉貴が作ったのだけど。


 ということで午後の部。

「よし、後はブレーキパッドか……工藤、頼んだよ」

「了解!!」


 買収しやすい奴だ。


 それから一時間後。


「これでブレーキは完璧だ! ハハハッ」

 工藤が若干ランナーズハイになってきているが、一応やることは終わったのでとりあえず。

「お疲れ」

 と工藤の肩に手を置く。

「ふふっ、横谷に慰められて、もう俺は……」

 ガクッ、と工藤のなにかが抜けたようだ。


「……工藤は、犠牲になったのよ」

 と藤原。

「うん、大事にするわ……」

 と涼宮。


 今の工藤は一見すると、屍に見える。


                     *


 それからみんな(どこかに旅立った工藤は抜いて)他愛のない話をしていた。ようは駄弁っていただけだけどね。


 そして晩ごはんを食べてテスト走行に行く。

 あと3日しか有余はない。


「じゃあ、これで問題はないと思うから、行ってきて」

 と言ったら涼宮は頷いてマシンを発進させる。


 第一コーナーにマシンが吸い込まれるように侵入していった。


 それを見た後、俺は軽く休憩を取るためにハチロクの中で座っていた。


 少ししたら藤原がハチロクの運転席側のウィンドウを叩いたので、開く。

「どうした?」

「いや、タコがお疲れ気味だったから」

「で?」

「はい」

 と藤原は俺にリンゴジュースを渡してきた。

「タコは工藤の次に働いてるんだから、休んでよ」

「大丈夫だよ。そこまで動いてないから」

「タコはか弱い女の子なんだから」

「……待て、俺のどこがか弱く見えるんだ?」

 と訊いたら、藤原は笑顔で硬直して。

「ええと……多分どっかぁ――――――――――――――!」

 といいながら自分のFDに戻ってしまった。


 ……俺のどこがか弱く見えるんだよ……まったく。


 それから二、三十分後、涼宮が戻ってきた。

「どう? なんか気に入らないところはある?」

「特にないよ。扱いやすいし」

「じゃあ、これからいくつかのセッティングを試してみるよ」


 と、俺は涼宮を降ろしてからFZをジャッキアップする。

「て、ちょっと待ってよ!」

 と藤原に止められる。

「なんでタコが作業するの!?」

「そりゃ、工藤がノックダウンしてるし」

「でも……」


 多分、藤原は俺がデモカーのS2000をイジってるときに性転換したから、そこを気にしているのだろう。

 だが。


「俺はな、あんなにクタクタになってる工藤に頼むほど鬼畜じゃないよ。まぁ、手遅れ間はあるけどね」

「じゃあ、斉藤!」

「俺がやれと?」

 と斉藤。

「そうよ、女の子に任せて楽しようとしてはダメ」

「了解しました」


 と若干呆れたように肩をすくめてから、俺に近づいてきて。

「なにをすればいい?」

「リアのダンパーのセッティングを変える。それを手伝って」

「わかった」


 それか十数分後、セッティングを変えたFZで涼宮が出て行った。


 それからいくつかのセッティングを試して、一番よかったのを本番に使うのだ。


 そして、涼宮が。

「今のがよかったよ」

 と、若干疲れている俺達に言ってきた。

「わかった、今のセッティングで気に入らないところは?」

 足回りのセッティングでもかなりの組み合わせがある。今回はサスペンションのパーツ、ダンパーの減衰力の調整をしている。

 これによって、車は安定性重視か、旋回性重視か決まってくる。

 それを、涼宮と話し合って変えていく。

 


 少ない時間でも、いいマシンを仕上げたい。

 それだけが、今の俺の願い。


 そして、バトル当日。


「ホントに、みんなありがと」

 と涼宮がバトル後のようなことを言ってきた。

「いいんだよ。シオがバトルで勝てば」

 と横川。

「そうそう、あたし達が本気で仕上げたマシンだから負けないよ」

 と藤原。

「きっと、みんなが仕上げたマシンだから安心して踏めるんだよ」

 と涼宮が言った直後。

「V6の音だ」

 と工藤。

「来たみたいだね」

 と俺が言う。


 FZとZ32の対決が始まる――


はい、次回からやっとバトルです。もう一週間以上待たせたのにgdgd小説ですみません。

8月中にも次の章(FZ編の次)に入りたいです……

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