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50歳下級悪魔、勇者パーティのお試しに封印されるも木の芽に巻き込まれるように育ってしまい5000年後、魔王討伐後に勇者のなんやかんやがあった神樹「ユグドラシル」という扱いになっていた。

「封印呪文!」


「ぎゃー!」


「ふむ、やはり伝え通り封印呪文は真珠のような形に封印されるようだ。この呪文とともに成長したらきっと魔王も封印できるに違いない!」

「そうだね、条件とかも調べて完璧に封印できるようにしなきゃね。」

「小手調べも出来たし、このダンジョンは攻略完了だな!」

「そうだな。とりあえず出発しよう。」


(クッソ〜! まだオレは50歳なのに、封印されちまった!

オレの魔力も弱いから封印をぶち破る事も出来ないし、どうにもならないな……

他の魔物は恐らく全滅……奇跡も無さそうだな。

あ〜あ、魔王様にもっと貢献したかったな〜)



1年後


(……なんか、持ち上がってる気がする。)


更に1年後


(ヤバい! これ、木に巻き込まれてる! クソ、無駄に形に残って封印されたから、抵抗出来ない!)


更に3年後


(あ〜もうこれ完全に埋まったわ。明らかに動いてる気配無いもん。どうしたもんかね……)


計5年が経過。それから3000年……


(! 魔王様の首輪が壊れた……という事は、もう終わりか。勇者はあの代で倒せたのか? 封印で壊れた気配もないし、やはり討伐が正しいのかな……あーあ。本当にどうしようかな〜)


「見て! あれがユグドラシルだよ!」

(は?)

「そうだな。あのウロの中にある真珠が、初代勇者様の植えた魔法の真珠で、そのうちお告げをくれるとの事だよ。」

(は? 初耳なんだけど。てかオレが!?)

「どんなおすがたなのかなあ?」

「きっと美しいとおもうよ。」

(ただの下級悪魔だけど!?)


(……というか、ここ。人里に近くない迷宮だったはずだけど。そんな人間発展してるの? コワ〜……)



4000年目。


「今日はユグドラシル様を称える祭りの日だ! みんな盛り上がれー!」

「ナカイさーん! ありがとーう! フラッシュ!」


(あれから幾年か経って、ついに木の下に人が住み始めた。迷宮だった壁は壊され、オレは手を出せなかった。さあてと。本当にやる事がない上変わり映えもしなくなりそうだな。どうしたものか……)



5000年。


「ユグドラシル様、見てください! 今日は豊作です! これも貴方様のお陰です!」

(オレ、何にもしてないけどな。)

「そういえばこちら、村に来てくれた交易者がくれた『魔法のクルミ』です。食べると魔力が宿るとか。いつかユグドラシル様も実るといいですね。」

(ただの木だから何も成らねえよ。


……魔法のクルミ? ! 魔力だ! 微力だが、僅かに魔力を感じる! クソッ……どうにかッ……)

「うおおおおおおおお!!!!」

「!? ユグドラシル様が……吼えた!?」

「!? 声が、聴こえるのか!?」

「は、はい! 聞こえます!」

(やった! 魔力が一部とりこめたんだ!

……しかし、5000年近くユグドラシルを演じてたから、今更「オレ」とか悪魔らしい言葉遣いは良くないよな……女神っぽく……?)

「ふう、失礼しました。どうやら、貴方の添えた魔法のクルミの効果で、オレ、私の魔力が少し満ちたようです。」

「なんと……なんたる光栄!」

「私が育って5000年。色々な人の営みを見てきました。今度はお返しする番です。しかし、そのためには魔力が足りません。どうか、魔力のありそうな物をお供えしてくれませんか?」

「は、はい! 是非!」

「まず初めに、村の方々に幸運がありますように……」

(微塵も願わねえけどな。)

「ありがたき幸せ……! この事は村中に知らせます! 必ずや、豊潤の為にユグドラシル様のために働かせて頂きます!」

(おーがんばれよ。まあオレの封印が解けるまでの間だがな。)


「ユグドラシル様! こちら旅のお方がくれた魔法のマントです!」

(おー。枝をわさわささせておくか。)

「お喜びになってる……! 倉庫をひっくり返せ! 若い者は旅に出ろ! ユグドラシル様の為に!」

(……なんか宗教じみてねえか? まあいいけどよ。)


「こちら魔力が増幅する宝石です!」

「あのクルミを育ててみました!」

「見てください! 村外れの川にこんな魚が! 魔力感じますか!?」

「ええ。そろそろ頃合いでしょう。もう少しです!」

ウォーッ!

(……そんなに欲しいの? 恵みとやらが。もしくはオレの姿が見たいとか? ……なわけねえか。)


「祭りも近いし、ユグドラシル様はそこに合わせてくれるかもしれない! 余剰に恵まれるのも悪くは無いし、ユグドラシル様の為にもなる! どんどん貢げ!!」

「ウォーッ!!!」

(祭り、祭りねえ。)


そして、来たる祭りの日。

「踊れーっ! 踊ることで魔力が生まれるかもしれん!」

(そんなわけあるかよ。)

「食事もありますからね〜」

(ふーん、人間の食事も美味そうじゃん。)


(くぁーあ、初期魔法とはいえ、封印の質は悪くなかったから、まだまだ先になるだろうけど、こうして崇められるのも悪くは無い


「な。」

パリン、と音が立つ。

「えっ?」

「……え?」

祭りが一気に静かになる。

外から見たら、ウロから出た脚と、尻尾。

それは、神話の頃から伝え聞く悪魔の物であった。

「な……あく……」

「いやそんなまさか、まさか……」


「え? マジ? もう出れたの? ウソ?」


「若い衆! 飛び出すな! 私が話す!」

「村長! しかし!」

「……ユグドラシル様、でしょうか。」

「まあ……違うな。オレはただ封印されて木に巻き込まれた下級悪魔だ。」

「やはりッ……!」

「待てと言っている! ……でも、私達にとっては、貴方はユグドラシル様を演じてくださった。それは事実です。」


(ああ。そっか。そういやそうだっけ。利用するつもりで……)


「貴方さえよければ、敵意を向け合わずに、ユグドラシル様としてまた演じてくれはしないでしょうか?」

「……ふーむ。」

チラリ、と食事に目を向ける。

「おい。これはどうやって食う。」

「は、こちらの食器で掴んでお食べ下さい。」

「村長!」

「……」

「ふーん。


美味いじゃん。」

「!」

「!?」

「オレさぁ。ずーっとお前らが祭りだ祭りだヘイカモンしてる時にさぁ。お前らの食ってるそれが気になってたんだよ。食えてよかった。」

「……では」

「いいよ。これまでも、これからも。オレはユグドラシル様だ。なんとかして恵みを覚えるからよ。また崇めてくれや。」

「……! 良かった……!」

「村長……!」

「村長の判断は正しかった……!」

(これで、いいんだよな? 魔王様。)


そして。


「ユグドラシル様ー!」

「おーぅどうしたガキ。」

「これね、似顔絵!」

「おう。似ても似つかないな」

「だって、もっと美人さんだと思ったんだもん!」

「ハハ、ありがとうな。」


「ユグドラシル様、こちら。女神の魔法が載った本だそうです。」

「へーぇ。読みやすいこって。これなら……よっと。これで10年は豊作だぜ。」

「まさか……! ありがとうございます……!」

「本、ありがとな。メモ帳にするぜ。」


「ユグドラシル様! 本日は私の家でパーティをするのですが、如何でしょうか?」

「おう、気が向いたら行く。」

「またまたそんなこと言って! お待ちしてますからね!」

「……これの調合が終わったら行くか。」


「おうババア。腰悪いんだって?」

「おやまあユグドラシル様じゃないですか。今お茶を……」

「いらねェ。これやるよ。」

「これは……飲み薬と、柔らかい板?」

「飲み薬は今飲んでも大丈夫。柔らかいやつは腰の痛ェ所に貼れ。そんじゃ、また痛かったら祈りに来てくれ。」

「ありがとうございますユグドラシル様……」

「どってことねぇよ。そんじゃついでに……」


「あ! ユグドラシル様!」

「遅れたな。ババア連れてきてたら遅くなった。」

「おやまあ、私も良かったんですか?」

「いいんだよ。飯食う人間は多ければ多いほど楽しい。」

「さあさあ! こちら新鮮な魚の煮物ですよ!」

「あぁ。うめぇな。」


食事に絆され、女神の魔法を覚え、薬の調合にも手を出した下級悪魔『ユグドラシル』は、末永く村の繁栄に手を貸し続けたとさ。



「ハハッ。おもしれぇ話だったな。」

どうも。普段はpixivで投稿しているリリス様病患者と申します。

オリジナル作品はこちらに投稿します。

pixivにはブルアカとまちカドまぞくのクロスオーバーSSを主に書いています。

こちらでもよろしくお願いします。

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