モノクロ
『現像』
俺はそれを現像することを嫌う。
どうしようもないほど
写真の中に収めたいが、
私は先を見る、
それに翻弄される自分を見る。
それは俺を逃さない。
彼女の瞳の中に写る
自分が醜くて仕方がない俺は、
それを見ない、
映すだけである。
『美味』
私の乏しい表情筋は
口角を少し上げることも、
顎を上下させることも
目尻を下げることも、
その一切を許さないようにして
私から表現の自由を奪った。
こんなにも魅力的な甘味や塩味酸味や苦み、
それらが皿に乗っているのに、
君はこんなにも笑顔でものを食すのに、
今だけの愛がこもっているのに。
あぁ 私は私のことを心底不幸だと思っていたが、
そんな人間を相手にしている他人様のことを
考えたことがあっただろうか。
一つの見解として
彼女らの方が不幸なのではないだろうか。
もしもそれが現と化すなら、
その責任、
腫瘍は私のものだろう。
『私たちの詩』
売れない 売れない
恋愛ソングが、
厭らしく私を誘う。
そのメロディがあまりにも美しかったから、
彼女の歌声を思い出した。
二人カラオケ、
マイクは一本で。
色塗られていく文字を無視して、
お互いに色付け合う。
『モノクロ』
アルバムに写る
君の唇が、
何色なのか気になった。
この服はわかる。
君のお気に入り、
青いワンピース。
ならその口紅も
同じ青だろうか、
信号機なら
緑だろうけど。
君は道端の花を
踏めなかったっけ。
対をなすのは蜜柑色、
その癖なんだか
赤のような。
あ
そういえば
君は化粧嫌いだった。